“Let me not look for allies in life's battlefield but to my own strength.”
ロックダウン44日目。軟禁生活46日目。
ロックダウンと言いながらも、規制緩和された状況にあるインド。微細に亘るルールの是非に、インド人の友人らのSNSやWhatsAppは、喧々諤々。多様性の極みインドにて、「国民の総意を尊重する判断」など、下せるわけもなく。
このごろはより一層、目にする情報の取捨選択が望まれる。
何度も何度も記すけれど。
日本の約9倍の国土に、日本の約10倍の人間が暮らすインド。
EU全域よりもやや狭い国土に、EUの2.5倍以上もの人間が暮らすインド。
壮絶に濃いこの巨大国家の行く末は、どの国のそれよりも、見通し難く。このひとときの困難はまた、やがて何事もなかったかのように、歴史の一頁に埋もれてしまうことだろう。
ところで今日は、インドの偉大なる詩人であり思想家であり、また作曲家でもあるラビンドラナート・タゴールの誕生日だ。
1861年5月7日、彼はベンガル州のカルカッタ(現コルカタ)に生まれた。1909年、ベンガル語で記した詩集『ギタンジャリ』を、自ら英訳して出版、1913年にはアジア人として初めて、ノーベル文学賞を受賞している。岡倉天心と親交があり、日本にも何度か訪れているが、日本の軍国主義(植民地支配)に対しての批判も残している。インドの独立運動に際しては、ガンディーらを支持した。
インド国歌の『ジャナ・ガナ・マナJana Gana Mana(インドの朝)』は、タゴールによって作詞作曲された。1947年のインド・パキスタン分離独立以前は「ひとつのベンガル」だった現在のインド、西ベンガル州とバングラデッシュ(独立当初は東パキスタン)。バングラデシュの国歌『アマル・ショナル・バングラAmar Sonar Bangla(我が黄金のベンガルよ) 』もまた、タゴールの作詞作曲だ。
今年の1月と2月。義父ロメイシュの死に伴い、デリーに滞在した。その際、タゴールの塑像を見つけた。2枚目の写真がそれだ。夫曰く、母方の祖父が書斎に飾り、大切にしていたものらしい。夫の母方の尊敬すべき祖父のエピソードについては、すでに過去記した通りだ。祖父はまた、タゴールのどういう言葉を、心に寄る辺にしていただろう。
塑像の隅にある文字を追えば、西ベンガル州のGhurniという地名。調べてみれば、粘土細工人形の産地だとのこと。
さて、そのタゴールの詩の中でも、特に好きな一編を、ここに転載する。
「果物採集」石川拓治訳
危険から守り給えと祈るのではなく、
危険と勇敢に立ち向かえますように。
痛みが鎮まることを乞うのではなく、
痛みに打ち克つ心を乞えますように。
人生という戦場で味方をさがすのではなく、
自分自身の力を見いだせますように。
不安と恐れの下で救済を切望するのではなく、
自由を勝ち取るために耐える心を願えますように。
成功のなかにのみ あなたの恵みを感じるような、卑怯者ではなく、
失意のときにこそ、あなたの御手に握られていることに気づけますように。
●インドの名作曲家、A.R.ラフマーンの編曲による「JANA GANA MANA」も、ぜひご覧ください。
"FRUIT-GATHERING"
Let me not pray to be sheltered from dangers
but to be fearless in facing them.
Let me not beg for the stilling of my pain
but for the heart to conquer it.
Let me not look for allies in life's battlefield
but to my own strength.
Let me not crave in anxious fear to be saved
but hope for the patience to win my freedom.
Grant me that I may not be a coward,
feeling your mercy in my success alone;
but let me find the grasp of your hand in my failure.
(Excerpted from Rabindranath Tagore, "FRUIT-GATHERING")