あらゆる事象において「多様性の国」インド。農作物の「種の多様性」もまた、日常だ。地理地形、風土の多様性は、育つ農作物の多様性に結びつく。一方で、自然災害の影響を受けやすい農作物は、脆く不安定な側面をも持つ。
インドは1960年代、米国式の「緑の革命」によって、干ばつによる食糧難を免れることができた。しかし、それは「一時的な成功」でしかなかった。品種改良された種、大量の水と化学肥料を長年続けた結果、土地は痩せて、痛んだ。土地だけではない。人間もまた病み始めた。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0906/feature01/_03.shtml
この話に触れると尽きぬので割愛するが、ともあれ、昨今では種の多様性や土地の力を取り戻すオーガニック農法が見直されるなど、インドの農業にもさまざまな動きがみられている。
のっけから話がそれたが、インドは大雑把にわけると北が小麦粉の、南は米の食文化だと言われる。もちろん、双方で両方が食されるが、割合としてはそうだ。米には無数の種類があり、粉物も小麦に限らず、豆類その他、多彩な穀物が利用される。
滋味に満ちた素材は、インド料理はもちろん、インド以外の国の食材を育む。
インドのパンはパサパサしておいしくない……とかつては言われていた。しかし昨今では、バンガロールの各所にアルチザン・ブレッドを提供するベーカリーが誕生している。買い物に出かけられない昨今、どこか配達をしてくれるところはないかと検索したところ、目に止まった店がここ。
サイトを開けば、魅惑的なパンが並んでいる。天然酵母のサワードウ。オーガニック素材を厳選して用いているとのこと。インドのパンにしてはかなり高級感あふれるお値段だが、これは試してみるしかない。3種類のサワードウと、みっちり詰まったジャーマンブレッドを注文した。
受け取って、開封して、切りながら、味見。切りながら、味見。切りながら、味見。切りながら、味見……。
どれもこれも、おいしいじゃないか!!
店舗はドムルール(インディラナガールの南)にあるようだ。ちなみにインディラナガールには良質のアルチザン・ブレッドを出すコンペティター(競合)が数店舗ある。他にも勝るとも劣らぬ店があろうが、ともあれ、ここ、参考までに紹介しておく。
◎KRUMB KRAFT
https://krumbkraft.in/
https://www.facebook.com/krumbkraft/
翻って、米。我が家の日本食材は、年に一度ずつ、10月の日本一時帰国、そして5月のニューヨークにて購入してきた。ニューヨークでは、米国在住時代から食べてきた「カリフォルニア産コシヒカリ田牧米ゴールド」。これは、とてもおいしいお米なのだ。これを大量に買っておき、秋が来て尽きるころ、日本で日本米を買うという流れである。
ところが、今年はニューヨークに行けず、秋に買った日本米は尽きかけていた。そこで、北インドのウッタール・プラデーシュ州、ガンジス川とヤムナ川が交わるあたりに位置するアラハバードで作られている日本米を調達することにした。
この地にある「AOAC/ アラハバード有機農業組合」。これは、日本拠点の「マキノスクール継続教育学部」が立ち上げたもので、現地の有機農家支援を目的に創設されている。詳細は同組合のサイトをご覧いただきたい。
ここで作られている日本米「あきたこまち」と、おすすめの「乾燥ごぼう」を注文した。
数日後、配達されてきた、薄汚れた一斗缶2つ。
配達のお兄さんに「それ、うちの荷物じゃないと思う」と言い放ったら、中にお米が入っていた。ずいぶん、頑丈に梱包されており、おかげでお米はきれいな状態で届けられた。
早速、お米を炊いた。北東インドのマニプールで作られた愛用の石鍋で炊く。わたしの好きなツヤと粘りがあるコシヒカリと違い、あきたこまちはあっさりとしているが、しかし、十分においしい。炊き方を工夫すれば、もう少し艶やかに炊けるかもしれない。
このロックダウンは、今まで使わなかった、あるいは知らなかったさまざまなサーヴィスを試す機会にもなっている。日々、あれこれと紹介したいものがあふれていて、尽きない。