アンロック8日目。ロックダウン76日目。ロックダウンに入ってからというもの、朝から晩まで、2人と4匹の暮らし。夫はといえば、「もう、これから先も、オフィスに行く必要がない気がする」という。彼の仕事の内容を思えば、どこにいてもできることだから、そのこと自体に異論はない。
しかしね。とほほ……。
このごろはもう、「一人旅をしたい」という衝動が、心臓の下、いやもう、腹の底あたりからぐ〜っと湧き上がってきて、その気持ちを宥めるのに、何度もの深呼吸が必要だ。
普段は大して食べていないのに、食べられない、と思うと食べたくなる。たとえばそれは、海外在住者がしばしば「卵かけごはん」を食べたがる、多分その感情に似ているだろう。
いつでも食べられるから、いつでも会えるから、いつでも行けるから……という前提があれば、やりすごせる。
しかし、いつでも行けなくなった。という事実は、心に重石を載せるが如く。旅をしたい、というよりも、旅をせねば、という強さを伴って。
ロックダウン下、2階の書斎は完全に夫のものとなり、わたしは1階のダイニングルームに籠城している。食事は玄関ホールの丸テーブルを使うから、このダイニングルームがわたしの部屋だ。庭にすぐ出られ、猫らと遊ぶ気分転換にもよく、実は気に入っている。
気に入ってはいるが、何もかもが「宙ぶらりん」の感覚が続いている。これからもしばらくは続くのだろう。
昨日、久しぶりにミューズ・クリエイションのメンバーへメールを送った。2012年に創設して以来、週に1〜2回は送っていた通信の711号目。
気がつけば、最後に送信して2カ月も過ぎていた。4月中旬、多くの在留邦人が臨時便の特別機で帰国して以来、気持ちが茫洋としていて、発信をする衝動が沸かなかったのが正直なところだ。
ロックダウンの間、直前に帰任されたメンバーの2家族、そして現在バンガロール在住の2家族、計4家族に、新しい命が誕生した。このような世界に在って、それは未来や希望を抱かせてくれる、いい知らせだった。
一方で、一時帰国のつもりで帰国したメンバーの、本帰国が決定し、もう戻らない人も少なくない。この先の、ミューズ・クリエイションの在り方を見据えねばと、改めて思う。
ところで数日前、外出した夫が、赤ワインと、花束を買ってきてくれた。いろいろと、思うところあったのだろう。なにしろ、なにしろ、なにしろ、出会って24年も経つのに。大概いい歳した夫婦なのに。未だにバトルが絶えない。しかも超低次元。
ちなみにバトルの原因の90%は夫にある(断言)。あまり書くと、Google翻訳で「変な風に」訳される可能性があるから、この辺にしておくが、花束は夫の反省の気持ちと判断して、受け取ることにした(上から)。
日常的に、過酷な「異文化間コミュニケーション」の壁にぶつかりまくっているわたしだからゆえ、「家庭外」の事象においては、そこそこ客観的に達観した姿勢を保てているのは事実だ。
いやしかし、「スルー」できずに毎度火花を散らしてしまう自分の「学ばなさ」は、いったいどうしたものか。成熟した関係を保てぬ夫婦。情けない。そこは深く自問したいところだ。
夫は、自分が買ってきたものに関する評価が異様に高い。階下に降りてくるたび「ああ、美しい花だ」「ワオ! ユリが開き始めた。なんてきれいなんだろう」「ねえ、この花はすばらしいよね」と、いちいちいちいち、だいぶうるさい。
そんな夫が、久しぶりにロールケーキを食べたいというので、久しぶりに焼いた。わたしもそろそろ食べたいと思っていたところだった。毎週金曜日、STUDIO MUSEのある日には、なにかしらおやつの準備をしてきたこの8年。ロックダウン下、しばらく作っていなかったので、焼いた。
最後の抹茶をふり入れて、クリームは風味豊かに、ほんのりビターな大人の味。夜食べ、朝食べ、そして午後も食べるだろう。12人前のロールケーキは、多分、瞬く間に消費される。
ところで先日記した「尻トレ」は、1カ月近く続いている。あれは、いい。しかし、痩せるどころか増量。尻トレで筋肉がついたせいだと思いたい。
毎朝、ストレッチ(柔軟)、ぶら下がり健康器、尻トレ、ボリウッドダンス2、3曲という流れでエクササイズをしているが、まだまだエネルギー消費が足りていないのか。筋肉が重いんだと信じたい。さもなくば、やる気をなくすというものだ。
などと言ってる先から、ロールケーキを食べる。いくつになっても、似たような葛藤を続けている日常。とりあえずは、健康第一でいこう。