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その土地の歴史や文化、ライフスタイルを考慮した上で、「希望されて」サポートするのは、当然ありだろう。しかし、先進国の「自分たちの技術が上」と頭から信じ切り、価値観を押し付ける傲慢さは、悲劇を生む。
古来から「種の多様性」の宝庫であり、「オーガニックが当たり前」だったインドの農業。しかし干ばつや洪水などの天災により、農民らが苦境に喘ぐ時代があった。
1960年代、米国(モンサント社)からもたらされた「遺伝子組み換え&化学肥料まみれ」の近代農法。一時的には「夢のように」収穫が増え、それは「グリーン革命」と賞賛された。
しかし、その「不自然」のつけは、まもなく農民らを苦しめる形で返ってくる。豊作が度を越して、急落する卸値。痩せ細る土地。農民たちの健康被害……。特に木綿農家の悲劇はすさまじく、農薬を煽って自殺する農民が相次いだ。いや相次いできた。
少なくともわたしが移住した2005年にはすでに「無農薬」や「オーガニック回帰」「種の多様性重視」の農法を支援すべく、各種団体や企業が活動を続けていた。
無論、グリーン革命の当初から、化学農法を懸念する環境活動家やサイエンティストなど、多くの人々が異論の声を、地道に、懸命に、上げ続けていた。
その声は、2000年代に入り、経済が急速に成長、先進国の加工食品などが一気に流入するのと「並行するように」高まり、自然志向の潮流は目に見えはじめた。農薬の危険性を知る(特にインドでは、文字を読めない農民が農薬の使用法を誤るケースが多発してきた)賢明な消費者は、たとえ割高でも、選択肢が少なくても、オーガニック市場を支えてきた。
インドにおいて、オーガニック食品の市場は2012年頃には年率20%〜23%での推移を見せていた。ここ数年は25%程度のようだ。ロックダウンに伴うデリヴァリー網の成長は、その傾向に拍車をかけるだろう。
無論、それらオーガニックの農作物は、流通や消費者意識の関係上、都市部に偏って販売されがちであるが、過去10年余りのオーガニック市場の伸びは著しく潜在力も高いと思われる。ロジスティックス(物流)やコールドチェーン(低温物流)のインフラが整えば、より多くの消費者に安全な農作物が届くことになるだろう。
我が家では、インドに移住して以来、食品添加物の多い食材を使わず、日常的にオーガニックの農作物を食している。バンガロールにおいては、今や選択肢は豊富すぎるほどに豊富だ。そのせいもあり、日本や米国に暮らしていた若いころよりもむしろ、今は何かしら、元気だ。
BigBasket(2011年創業、わたしは2014年に初利用)は、当初から、直接、農家と契約をし、オーガニック野菜を取り扱っている。またのちに「FRESHO」という自社ブランドを構築、やはり農家から直接買い付けた、オーガニックを含む穀物やスパイスなどの調味料、生鮮野菜を販売している。
「先進国が新興国に指導してやる立場」という大前提を見直して、対象国の歴史や文化、習慣、需要などを調査し、勉強し、望まれていることを見極めた上でサポートせねば。
農業に限らず、遍く分野、業種において……。ということを、このニュースを見て、切に思った。話がやたら長くなった。