2012年に、社会貢献活動の場である「ミューズ・クリエイション」を創設し、その名前を多用するようになり、そもそもわたしがビジネスとしてニューヨークで開始した「ミューズ・パブリッシング」や、インドにおける我がビジネス部門の「ミューズ・リンクス」の影が薄くなってしまった。「ミューズ」と冠するものすべてが慈善活動と勘違いされるケースもあるなど、わたしの仕事については知らない方の方が多い気がする。
遥か自分史を遡れば、社会人になった直後は旅行誌のライター、編集者だったが、ニューヨークで出版社を起業してからは、視察や取材のコーディネーション、広告や出版、印刷全般の仕事をしてきた。また、インド移住後は、レポーター、リサーチャー、セミナー講師なども含め「ミューズ・リンクス」と冠してフリーランス的にやってきた。そのほか慈善活動やプライヴェートにおいてもイヴェント運営や仕出し(笑)、各種現場監督にも携わってきた。
仕事の営業やその成果は、ホームページやソーシャルメディアに記載することはほとんどないこともあり、「慈善活動の人」と思われがちだが、そうではない。この9月より、ミューズ・クリエイションを本格的に再稼働するにあたり、ビジネスはビジネスとして、明確にしておきたいとの思いが強くなった。
2023年9月より別名義「OKaeri Ventures」としてビジネス部門を設置した。これは、夫のArvind Malhanとの共同事業だ。
ヴェンチャーキャピタリスト/プライヴェートエクイティ投資家であるArvindのキャリアとグローバルなネットワーク、そしてわたしが2005年以来、インドで培ってきた経験を活用しつつ、日印ビジネス交流を促進する機会を徐々に実現したいと考えている。夫はすでに、日本企業とのビジネスを始動しているし、わたしもウォームアップとして9月以降、日本旅の前後に「インド・ライフスタイルセミナー」を日本人、またインド人を相手にすでに4回、実施した。
インドを目指す日本人に、「具体的なビジネス以前」に知っておいてほしいことは、山ほどある。歴史、文化、宗教、コミュニティ、ライフスタイル、その究極の多様性。そして1991年の市場開放以降、激変を続けている生活環境や価値観、暮らしぶり。その一方で、数千年も変わらず延々と繰り返される精神世界など。その基礎の理解があってこそ、この国の有り様が腑に落ちることが多々ある。日本の価値観や常識が理解されないことも珍しくない。
自分の目に見えている現象を、どう受け止め、理解するか。その姿勢によって、世界は変わるからこその。
それはそうと! OKaeri……? おかえり? オカエリ・ヴェンチャーズ? なんですか、それ?
クスッと笑われそうな名前であることは百も承知。むしろ、そこで笑顔になってもらってこそ、この名前の意味がある。
なお、我が「ミューズ」の歴史は、1997年のニューヨーク在住時代に遡る。わたしが起業に際して社名を考えつつ、Arvindとアッパーウエストサイドの自宅の界隈を歩いていたある夜のこと。互いにいろいろな名前を出し合っていた時、アルヴィンドが 「Muse はどう?」と口にしたその瞬間、「それがいい!」と、直感した。
Museum, Music……美穂のM、MalhanのMも入っている。
ギリシャ神話において、芸術や文学、音楽、天文学などを司る9人の女神の総称である「ミューズ」。それはまた、ヒンドゥー教の女神の「サラスヴァティ(サラスワティ)」、その流れを受けた日本の「弁財天」にも通じる。
翻って、「おかえり」。
8月のある夜。夫と新居のコミュニティをのんびりと散歩しながら、25年前と同じように、社名を考えていた。あれこれと、心に浮かぶ単語を発しながら、しかし、どれもピンとこない。わたしは「サラスワティ・ヴェンチャーズ」にしようと言っていたのだが、夫は女神の名前を冠するのは抵抗があるという。無論、鉄鋼会社と製糖会社を経営する実業家だった夫の祖父、製糖会社の名前は「サラスワティ・シンディケイト」だったのだが。
さて、夫がご近所さんと立ち話をしている間、わたしは一足先に家へ戻り、夕飯の支度をしていた。夫が「タダイマ〜」と言いながら帰ってきたので「おかえり〜」と言ったとき、夫が「オカエリって、どう?」と言った。
いい。
非常にいい!
おかえり、と言われると、心がやすまる。うれしい。「おかえり」には笑顔が伴う。
さらには、「おかえり」に当てはまる漢字、「還」「帰」「返」にはそれぞれに、豊かな意味合いがある。というわけで、即決した。今のところ、ドメイン名を取得したのみで、諸々の手続きを始めているところだが、インド的に「動きながら整える」の姿勢につき。
OKaeri Ventures。「お帰り/お還り」。
還元、原点回帰、不易流行、温故知新、還暦(笑)、初心に返るなど、複合的な意味を持つ。
なお、OKaeri VenturesにおいてのArvindは、日本企業のインド市場投資関連のプロジェクトが中心。坂田のプロジェクトはまた、別途詳細を整理する予定だが、基本的には、日本人には知る人の少ない、しかしインド社会においては一般的な「フィランソロピー」「ソーシャル・アントレプレナーシップ」……すなわち「社会貢献に連なるビジネス」を意識しつつ、自分が社会人として構築した35年間の経験を活かすべく、活動をする。
還暦を2年後に控え、自分のこれからの方向性が、少しずつ明確になり始めている。
写真は、日曜の午後、4P’sのみなさんに「インドの食生活と健康管理 スペシャル濃密編」を実施した時の写真。明らかに「上質の空気」が伝わる写真は、マーケティングを担当されているデジタルクリエイターの女性が撮影してくれたもの。後半の写真は、過去のセミナーの様子など。最後のロゴは、必要があって、瞬間的かつ暫定的に作ったが、見慣れるとなかなかにいい感じ😁
https://www.instagram.com/pizza4ps.india/
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