昨日は、久しぶりにRitz Carltonへ。昨年オープンした高級日本料理店IZUにて、先日拙宅でお茶会を催したRisaさんが、2日間に亘ってお点前を披露されるということで赴いた次第。こぢんまりとした店内は、しかしコージーな雰囲気で落ち着く。この2日間は、茶道の催しに合わせての特別コース料理が準備されていた。出される料理は、プレゼンテーションも濃(こま)やかに美しく、味付けも工夫されている。
テーブルでサーモンを炙ってくれるのだが、「火炎放射器か!」と突っ込みたくなる豪快な火力。炙っているというよりは、燃やしている。なかなかにスリリングである。ともあれ、デザートまでしっかりと堪能した。その後、Risaさんによる優雅で凛としたお点前を拝見。ゲストも自分でお薄を点てていただいた。香り豊かに、爽やかに、おいしい。
食後、シェフのNoelと少し話をした。4人の写真の右端、黒いユニフォームを着た男性だ。フィリピン出身だというNoelは、シェフ歴20余年。UAE(アラブ首長国連邦)で久しく日本料理のシェフをつとめていたという。ここで出される料理は、日本料理と日系ペルー料理のフュージョンを意識したもの。2018年ごろから、インドのオリエンタル料理店でも見られはじめたNIKKEI(日系)ペルー料理。その言葉通り、ペルーの日系移民が生み出した料理が源泉だ。そういえば、COVID-19前には、ハワイのポキ丼 (POKE) などを出す店もあった。
インドには、もちろん「日本的な日本料理店」もあるが、欧米はじめ世界各地でアレンジが加えられた「グローバル・ジャパニーズフード」(今、適当に命名した)を出す店の方が多い。それらは、オリエンタル料理店の1カテゴリーとして包摂され、中国料理や韓国料理など、他のアジア諸国の料理と共に楽しまれる。
また、高級ホテルの日本料理店も、欧米の日本料理店のトレンドを取り入れるケースが多い。ターゲットは「グローバル・ジャパニーズフード」に親しんだインド人はじめ、海外からの旅行者だ。
その潮流の端緒は、今からちょうど20年前、ムンバイのタージマハル・パレス・ホテルにオープンしたWASABIだろう。わたしたちは、インド移住の直前、2005年8月にムンバイを訪れたのだが、そのときにこのホテルに滞在し、わたしの誕生日ディナーをWASABIで楽しんだ。この店は、当時、米国で人気のあった「料理の鉄人」の森本正治シェフがプロデュースしていたこともあり、インド富裕層やビジネス層、海外からの宿泊客からの関心を集めていた。
我々夫婦は、フィラデルフィアにある森本氏の店と、このWASABIとで、2度、森本シェフご自身にお会いした。たまたまWASABIのオープンがわたしの誕生日と重なっていたこともあり、森本氏が渡印されていたのだ。
ちなみに米国における「創作和食」の先駆者といえば、1993年創業のNOBUを経営する松久信幸シェフ。松久氏がロバート・デ・ニーロらと共同経営で始めたこの店は一斉を風靡し、わたしが1996年にニューヨークへ移住したときには、すでに大人気。予約をとるのもたいへんだった。森本氏はそのNOBUでの活躍が注目されて、「料理の鉄人」の「和の鉄人」に抜擢されている。夫もお気に入りの番組で、よく見ていたものだ。
デリーにあるMEGUも、ニューヨーク起源の高級店。NOBUと同様、独創的にアレンジされた日本料理が楽しい。日本人の知らない日本料理が世界各地に存在し、それらを好む人たちが世界各地にいる。海外の日本料理店で定番化されている半世紀以上前に誕生したカリフォルニアロールなどは古典中の古典。海苔になじみのない米国人が食べやすいよう、海苔を内側巻いたのが、この寿司ロール誕生の背景だ。うなぎを巻いたドラゴンロールやアヴォカド・サーモンロールなども、そこから派生したもの。
昨日も出された「銀鱈の西京焼き」などは、その典型だろう。米国在住時は、夫と日本料理店へ行くたびに、必ず注文していた。だめだ、書き始めるとまた止まらない。思えば2002年に出版した我がエッセイ集『街の灯(まちのひ)』(ポプラ社刊)にも、「寿司とニューヨーカー」というエッセイを記している。あれから22年。歳月は流れるなあ……。
以下、19年前にムンバイのWASABIを訪れた時の記録など、残しておく。
🍣インド彷徨 MUMBAI /日本料理店WASABI@The Taj Mahal Palace Hotel (2005/08/31)
http://www.museny.com/2005/india/04.htm
🍣[MUMBAI] WASABIで過ごす誕生日の夜。鉄人森本氏にも再会。(2008/08/31)
https://museindia.typepad.jp/2008/2008/08/mumbai-wasabi-5.html
🇮🇳🇯🇵弥生3月。盛夏の南天竺(みなみてんじく)で、日本の春を祝う。インド人の友らを招き、茶懐石、茶道の経験を分かち合うひととき。
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