🌏1985年。初めて海を越えたあの夏から幾星霜。海外旅行誌を制作する仕事に携わり、旅の魅力に引き込まれ、公私に亘って海外を目指した20代。30代でニューヨークに移ってからも、旅する日々は続いた。
気がつけば、インドに移り、歳を重ね、もうあのころの「渇望するような」旅への好奇心は薄れてきたけれど。それでも、未知なる土地への関心は、今なお尽きない。
旅の下調べは、ある程度必要だが、事前に多くの写真を眺めて予測をつけることは、敢えて避けている。今となっては全世界的に、情報は溢れ、世界各地津々浦々の写真や映像が手軽に入手できる。しかし、その利便性がわたしたちの感動に「水を差す」こともある。想像力に、制限がかかる。
わたしが日本で編集者をしていた時代、わたしが知る限りにおいて、欧米のガイドブックは写真がほとんどなく、文字情報が中心だった。写真を多用する日本のガイドブックに比べると見た目は地味ではあったが、読み物としての価値があった。
「昔の」ロンリー・プラネットやミシュラン・ガイドブックなどは、日本語訳が出版されていたこともあったが、今は多分、廃刊になっているはずだ。中でも「昔の」ミシュラン・ガイドブックは本当にすばらしかった。今でもその内容は色褪せない。写真の日本語版は、1990年代に発行されていた日本版の一部。大切な書籍ら。
……と、旅の話になるとまた、書きたいことは尽きぬ。
月曜深夜の出発を控え、必要な荷物などをピックアップすべく、昨日の午後、市街北部のヤラハンカにある新居へ来た。今年の夏は、暑く乾いているバンガロール。水不足も深刻で、市民は節水を心がけている(はず)。旅の前に一度でいいから、雨が降ってほしい……と願っていたところ……。
新居に到着してほどなくしたら、急に雨雲が迫ってきて、束の間ながらも大雨が降ってきた! 乾いた土が濡れる匂い、雨の匂い、ざわめく木々の葉……最高! 雨に打たれて踊るインド映画のなりたちは、この雨への渇望と感謝が源だ。
雲は浅く狭く、十数分ほどで雨は止んでしまったけれど。After the Rain。空気は澄んで緑は輝き、今朝の空気も清々しい。ちなみにバンガロールは、雨雲の分布が非常にユニーク。隣町は大雨なのに、こちらはカラカラに乾いている……ということもよくあるのだ。
たとえばザアザア降りの空港に降り立って、数キロも走らないうちに、雨の余韻もない光景が広がるなど。昨日もまた、市内のほとんどは雨が降らず、北部など一部限られた場所だけだったらしい。全バンガロールに降り注いでほしいものだ。
🌏思えば、パンデミック明けの海外旅は日本ばかり。インド国内旅と日本旅で完結していたということに気がついた。2019年を最後に、4年以上も、異国旅を経験していなかったことに思い当たり、なんとも言えぬ心持ち。まだまだ未知の世界は多く。再訪したい既知の世界も多く。あふれる情報に蓋をして、目を閉じて、自分の行きたい場所はどこなのか、見たいものは何なのか、改めて問うてみよう。
子供のころ、絵画全集や百科事典を開いて、異国への旅情を育んだように。
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