バンガロールに戻り、ネットで復習するにつけ、エジプト考古学博物館を貸し切りで見学させてもらえたことが、どれほどに有難いことかを改めて実感している。それに加えて翌朝もまた、極めて稀な幸運を享受できたのだった。
今回、グループでの旅行は、アスワン発ルクソール着のクルーズ旅3日間とカイロ2日間、つまり実質5日間のツアーだったにも関わらず、途轍もない密度。元来、詰め込む旅は避けているが、今回ばかりは話が別だった。このツアーに参加しなければ、実現することはなかっただろうエジプト旅。ツアー前後に滞在を3日追加したことも正解だったと、旅を終えて改めて思う。
4月29日の夕刻、ナイル川河畔に立つホテルにチェックインしたわたしたちは、既述の通り、ホテルの前に位置するエジプト考古学博物館を訪れた。夕暮れの日差しが差し込む、静寂に包まれた博物館。数千年の時を超えて、ツタンカーメンの黄金のマスクを無数の所蔵物の息吹が伝わるようだった。
この夜は、ホテルでひと段落した後、カイロ郊外にある眺めのいいレストランでパーティが開かれた。インドでのソーシャルそのままに、グラス片手にスナックを食べつつ、会話に興じる。そんな中、ダイニングの一隅で、エジプトのテキスタイルに関するプレゼンテーションが行われる。興味深いものの、わたしはといえば、連日の睡眠不足で半睡状態。
11時を回ってまだ、ディナーが運ばれてこない。ヴァラエティ豊かな前菜ですでに満腹だったわたしは、どうしてもホテルに戻らねば明日に差し支えると判断し、主催者に相談してツアーバスの1台を回してもらうことにした。周囲に声をかけると、やはり疲労困憊なメンバーが20名ほどいたので、共にホテルへ。シャワーを浴びて、ベッドに倒れ込んだ。
4月30日、午前5時に起床。カイロ旅のハイライトであるギザのピラミッドやスフィンクスを訪れる予定のこの日。またしても特別な観光が用意されていた。
ピラミッドを訪れる前に、開館時間前の「大エジプト博物館(GEM / The Grand Egyptian Museum)」を、早朝の1時間、見学させてもらえたのだ! 連日の過密スケジュールにつき、80数名中、参加者は半分にも満たなかったが、わたしにとっては恩恵を受けずにはいられなかった。
そもそもは、大エジプト博物館の構想は2003年に発表され、2015年にオープン予定であったが、2024年5月の今なお、グランド・オープニングには至っていない。ここもバルセロナのサグラダ・ファミリア状態だ。インド世界ともたいへん共通していて、親近感を覚える。現在はまだソフト・オープニングとあって、一部の展示しか見ることはできないが、それでも、東京ドーム約10個分というダイナミックなスケールを体験したい。
ホテルからバスで現地に向かう途中、ガイド氏が、今回の特別ツアーがいかに稀有なことかを力説すると共に、日本の協力あってのミュージアムだということを口にした。すると、参加メンバーが異口同音に「みほ! ありがとう!!🇯🇵」と盛大に感謝してくれる。
総工費約630億円のうち日本が348億3,800万円を限度とする額の円借款を供与しているという。どういう背景があるのかは未確認だが、ともあれ、すさまじいスケールで日本が支援している。また、国際協力機構(JICA)が技術協力しており、重要遺物の保存修復、博物館の運営計画支援など、多岐にわたるプロジェクトで協力を行っているという。完成の暁には、エジプト考古学博物館の収蔵品のうち約10万点を引き継ぐようだ。
ミュージアムの詳細に言及したいところだが……。とりあえず写真をアップロードするにとどめる。最後の2枚の写真。ピラミッドの周辺に関わった人々の名前が刻印されている。無数の日本人の名前が刻まれていた。ここが完成した時には、また訪れることになる気がしている。
Grand Egyptian Museum
https://grandegyptianmuseum.org/
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