Wabi-Sabi for Artists, Designers, Poets & Philosophers (Leonard Koren)
福岡の実家に近い香椎のイオンにある未来屋書店で、たくさんの本を購入したことは[JAPAN 11] にて記した。
華やかな表紙の書籍が並ぶ中、地味に目立っていたこの冊子のような本。わびさびを読み解く……とは、興味深い。本の奥付けを見る。レナード・コーレン。作家、編集者、パブリッシャー。ニューヨーク生まれ、サンフランシスコ在住……とある。知らない作家だが、パラパラとめくるに面白そうだ。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、アーネスト・フェノロサ、ヴェンセスラウ・デ・モラエス、ポール・クローデル、ブルーノ・タウト、バーナード・リーチ、ドナルド・キーン、アレックス・カー……。日本の伝統文化に親しみ、日本の美に傾倒し、日本人に日本を教えてくれる外国人は、少なくない。この本からも、面白い学びがありそうだと感じて購入した。
これらの本は、わたしのインド帰還と共に、郵便小包で到着した。しっかり梱包していたつもりが、本が箱の中で擦れあって、小さなこの書籍だけが、表紙にダメージを受けていた。申し訳なく思いつつ傷跡を撫でたあと、読み始めた。数ページ読んで、その構成、視点、筆致に引き込まれる。日本語訳もすばらしい。
なんなんだ、この本は……と、気になり、改めてしっかりと、奥付を読む。
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本書では、「わびさび」を美的趣味としてではなく、体系を持つ美の哲学として、モダニズムなどの西洋の美意識と比較しながら、明晰な言語化を試みている。1994年の初版の刊行(英語版)から20 年以上読み継がれ、「Wabi-Sabi」の流行を生み、ひとつの美的概念として一般化させたのが本書である。近年では、企業哲学としての「シンプリシティー」を学ぶ原典としても愛読されている。
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なるほど、侘び寂びブームの火付け役だったのか。さらに奥付の下部を見て、目を見張った。
「巻末エッセイ寄稿 森岡督行(森岡書店)」とある。
森岡さん!? 昨年の一時帰国時に2度、そして今回の銀座でもお会いした森岡さんが、こんなところでも!
益々、好奇心を高めながら、読み進める。薄くて、シンプルな本に詰められた世界の、なんとも的確でわかりやすく、腑に落ちること!! 最初は残念に思った表紙の傷が、読後にはむしろ、愛おしい経験の刻みに思える。はるか6700kmの旅を経て、ここまで来た証でもあるのだ。
今年の後半は、新居の和室作りと、旧居の改築を始めねばと思っていたところに、このわびさびを解く本は、たちまち趣向の変更を示唆するものでもあった。わたしの中で、ぼんやりとしていた侘び寂びの概念が、少し明らかになって、腑に落ちた。モダニズムとわびさびの比較の一覧がまた、斬新に面白い。
読み終えて、懐かしい言葉がふと、脳裏に浮かび上がった。
「やはり野に置け、蓮華草。」
自然も人も、あるがままに。根源的な、精神世界。スピリチュアル。
……ああ、なんて面白いんだ、極東の島国である我が祖国、日本という国は! 今更ながら、発見の連続だ。
日本文化を紹介し、伝える場でも、大いに役立つ表現や言葉がちりばめられている。わたしが無理して言葉を紡ぐよりも、彼らの表現を紹介する方が的確な場合も大いにある。……というわけで、早速、原本を注文した。
茶道、華道、書道、工芸、文芸、建築、着物……。日本の伝統に携わる方々には特に、この本は、お勧めです!
買ったまま、まだ読んでいない岡倉天心(岡倉覚三)の『茶の本』も、早々に紐解きたい。そして森岡さんとは、いつかゆっくりお話をさせていただきたい。
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最後の写真は、先日お立ち寄りした森岡書店にて。森岡さんと、画家の金田実生さん。以下は、森岡書店に関しての記録。
🇯🇵【東京情景⑤】もはやニューヨーク情景🗽 マンハッタンに生きたアーティスト、ソール・ライターの世界に浸るひととき(2023/10/24)
https://museindia.typepad.jp/2023/2023/10/saree.html
[🇯🇵DAY 19−2 TOKYO] 一冊の本を慈しむ森岡書店で20年ぶりの再会! 婚約指輪とエメラルドと天然真珠のご縁。(2023/04/24)
https://museindia.typepad.jp/2023/2023/04/jpn19-2.html
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