イスラム教徒が8割を占めるインドネシアにあって、バリ島だけは独特の宗教世界。かつてイスラム勢力に追われたヒンドゥー教徒たちが、この島に逃れてきた。ゆえに、バリ島はヒンドゥー教徒が9割を占めるという。
バリ島の村々には、少なくとも必ず3つの寺院があり、三神一体(トリムールティ)の神々が祀られているという。宇宙の創造と維持、破壊を司るブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ。そして、ガネーシャやサラスワティなど、他のヒンドゥーの神々も。
ジャワ島を経由して、バリにインドのヒンドゥー教がもたらされたのは4~5世紀ごろ。バリ独特の様式にて信仰は継承され、ゆえに「バリ・ヒンドゥー」と呼ばれる。
朝、リゾートを出て近所の村を散策する。寺院に立ち寄り、神々を眺む。手を合わせる。心が澄む。
バリでは、どの家にも必ずお寺(祈りの場所/家寺)があるのだと、昨日、微(ほのか)さんに教わった。日本でいうところの仏壇、インドでいうところのプジャールーム、だろう。道を歩けば、各家々の庭にある大小の家寺が目に飛び込んでくる。
女性たちが、朝な夕なに、花やお香を供えている。その姿が、なんともいえず、美しい。
32年前、ウブドを訪れたとき、当時はまだ海辺のリゾートがあまり開発されていなかった。それはバリの文化が海ではなく山に向かっているからだ……という話を聞いて、なるほどと思ったことを思い出す。
バリ島北東部に位置する活火山「アグン山」は、火の神が住む場所として古くから信仰の対象とされてきた。アグン山の麓には、バリ・ヒンドゥーの総本山であるブサキ寺院がある。バリ・ヒンドゥーの人びとは、山側を聖なる方位とみなし、ゆえに家寺はアグン山の方角に建てられるのだという。
日常に祈りと感謝が満ちているウブドの情景に心を打たれたわたしたち。新居の庭の一隅に、小さな祈りの場を作ろうということになった。
当初はイングリッシュガーデン風にしてハーブなどを育てようと思っていたのが、いや禅寺風の日本庭園にしようと転じ、今度はバリの家寺案……。ふらつきっぱなしのコンセプトが、いったいどう着地することやら。
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