自分の生まれた年が、遠い過去めいて久しく、ついには半世紀前となってしまった。
生まれて50年。かつてなく、大きな節目を感じている。思うところいろいろあるが、半世紀、無事に生き延びられたということにまず、感謝だ。
人間とは、驚くような逆境を乗り越えて、危機一髪の危険を回避して、生き延びられる強い生き物である。
と同時に、人間とは、思いがけない小さなトラブルが原因で、あっけなく落命してしまう果敢ない生き物でもある。
そういうことを、この50年の間にも、身近に経験して来た上で痛感する。ともかくは、きちんと生きていられてよかった。これからも、きちんと、生きていきたい。
今年の前半は、「更年期障害?」的な症状も含め、狂犬病注射を打つ羽目に陥ったり、デング熱に罹患したりと、かつてなく病院のお世話になる日々が続いた。故に、日々スローダウンしながら暮らそうと心がけていたのだが……。
後半に入り、太極拳を始めたお陰もあるのか、体調も復活し、となるとうっかり、活動を活発化させてしまう。先週は特に、あれこれと濃密だったこともあり、日曜は疲れが出た。
これからは意図的に、「空白」を大切にせねばならないと、つくづく思う。
スケジュール表を埋めない。空白のスペースを守る。
さもなくば、心身のゆとりを保てない。
経験を生かし、頭を使い、無駄に動くのではなく、いい意味で要領よく、的確に。
あくせくしない。慌てない。
冷静に、着実に、確実に、そして効果的に。
昨日の誕生日は、午後、市内のリッツカールトンにあるESPAへと赴いた。英国発のこのスパ、ワシントンD.C.在住時、マンダリン・オリエンタルの中にあるそこへ、しばしば通っていたものである。
マッサージやフェイシャルの技術もよく、プロダクツも刺激の少ない自然派で、香りもよい。スパの施設そのものも、非常に洗練されていて心地よく、ラグジュリアスな気分に浸れたものだ。
インドに来てからというもの、最初のころはアンサナ・スパなどを利用していたが、徐々に「アーユルヴェーダの効果の高さ」を優先するようになり、ラグジュリアスからはほど遠い、オイルまみれの世界ばかりであった。
顔に関してもまた、フェイシャルと呼ぶにはあまりにも乱暴な、ボディマッサージの前に、薬草臭いオイルで顔をグイグイと5分ほどマッサージされるだけ。それで、そこそこ、調子がよかっただけに、ここ数年、フェイシャルにいくこともなかった。
「誕生日、どうしたい?」
と夫に尋ねられ、
「久しぶりに、ちゃんとしたスパに行きたいな。リッツカールトンのESPAを試してみたい」
と言ったところ、ラグジュリアスなスパ・スイートを予約しておいてくれた。このホテルには、トリートメントルームのほかに、ジャクージー、ベッド、リラクシングルームなどを備えた「プライヴェート・スパ・スイート」があるのだ。
広々とした空間に、たいそう気分が盛り上がる。ジャクージーは、雰囲気、楽しげだが、個人的には気分が落ち着かないので、たいてい、スイッチを切る。日本人としては、ゆっくり湯船に浸かりたい。
贅沢をいえば、たいていどの国のジャクージーも、「温度低め」が多い。日本の温泉的に熱めのお湯につかりたいなら、あらかじめ、熱いお湯を入れておいてもらえるよう、リクエストしたほうがいいだろう。
寝ずに気持ちよさを確認したい……と、いつも思うのだが、気がつけば、いつも熟睡。
トリートメントのあとは、スチームバスに入り、シャワーを浴びたあと、しばしベッドでリラックス。
午後3時にチェックインして、気がつけば7時半。夫に電話をして、8時ごろ合流。彼がホテルにアレンジを頼んでいてくれたらしく……。
スパのスタッフが、ケーキとドリンク、そして花束を届けてくれた。
うれしい。
とてもうれしい。
ありがとう、ハニー。
そう。この、スイートながらもややこしい夫をサポートするためにも、妻は常に万全のコンディションを保っていなければならないのだ。
ディナーは同ホテルのチャイニーズへ。ここも初めて訪れたが、点心、アラカルト、いずれも美味で、満足であった。また来たいと思う。
思えば10年前の40歳の誕生日は、インド移住直前、カリフォルニアのベイエリアに住んでいるときだった。急遽、夫がインド出張することになり、わたしもついてきた。
ムンバイのタージマハル・パレスホテルのWASABIで誕生日を祝ってもらった。
あれから10年。
インドでの10年の、なんと濃密だったことか。
思い返せば我々夫婦にとって、あのころは最も困難多く、軋轢が尽きない日々だった。わたしも随分、無理を言ったものだと思う。だいたい、インドに行くのを躊躇する夫を、行こう、今行くべきだとやたらに鼓舞したのはわたしなのだ。
今思えば、壮絶なエネルギーで夫をインドに連れて来た気がする。今思うに、無理。いったい、なんだったんだろうな〜、あの情熱は。いくら米国生活に飽きていたからって……。
嫌がる夫を説き伏せて、インドに暮らし始めた以上、ぐずぐず言ってはいられなかった移住当初。でも、もういいよね。半年のお試し期間は終わったのだ。あとは、夫の自己責任なのだ。
これからも、噛み合っているんだか噛み合っていないんだかよくわからない夫婦であるが、力を合わせて、共に歩こうと思う。
■10年前の誕生日@WASABI, タージマハル・パレスホテル (←Click!)
★このホテルの、スパ・プライヴェート・スイート、お勧めです。たとえば誕生日や記念日など、遠出して疲労困憊するよりも、ここで夫婦揃ってリラックスして、ディナーを楽しむ……というのも、ひとつのアイデアかと思います。
■THE RITZ-CARLTON, BANGALORE, SPA (←Click!)