耳鼻科訪問を終えたのち、本日はマルハン家実家を訪問である。
すでに夫は打ち合わせを終え、一足先に到着していた。ロメイシュ、ウマ、ダディマ、みなリヴィングルームに集い、ワインを飲みながら、にこやかに団欒のご様子。
ほどなくして、おしゃれな雰囲気のご夫人、アニタが現れた。バンガロア在住という彼女は、マルハン家の古くからの知り合いとかで、今回所用でデリーを訪れ、マルハン家に宿泊しているという。
「わたしはバンガロア生まれのバンガロア育ちだから、何でも聞いてね。わたしには時間が十分あるから、ショッピングでもなんでも、お付き合いするわよ」とのこと。
ロメイシュとウマによれば、彼女の住まいは非常にゴージャスで、クラシックなインテリアでまとめられているという。
「きっと、ミホの好みとぴったりだと思うわよ」とウマ。これは近々、おじゃませねば!
アニタには我が夫と同じ年齢の息子がいるという。インテリアデザイナーだとう彼は、奇しくも先日、長年住み慣れたニューヨークを離れ、インドにビジネスチャンスを求め帰国したのだという。
「まだ息子は独身なのよ」というアニタに「奥さんにするなら、日本人女性がいいですよ!」と笑いながら夫。よく言うよ。このお調子者!
ここで出てくるのがいつもの小話。
「僕が子供の頃、祖父がよく言っていたんです。最高の人生は、アメリカの家に住み、日本人の女性を妻にし、フランスの料理を食べること。最悪の人生は、アメリカの料理を食べ、日本の家に住み、フランス人の妻をめとること……」
しゃべり終わらないうちから、ひとりで大受けして、ワハワハ笑っている。
「で、インド人女性は、どうなのよ」
と、ウマに突っ込まれているのにも気づかずに。
ところでアニタたちの住まいは、先日訪れた日本料理店、「播磨」のすぐ近所で、オーナーの日本人女性、ジュンコさんとアニタはお知り合いなのだとか。今度、みなで日本料理を食べに行きましょうということになる。アニタからは、おすすめのスーパーマーケットや菓子の店の話題など、あれこれと聞かせてもらい、とてもありがたい。
やがて、ディナーの準備も整い、ヘルシーな家庭料理を味わいながら(わたしはやっぱり、ブカラのへヴィーな料理より、このインド家庭料理が好き)、歓談の夕べ。
インドに来て1カ月余り。夫は、
「ぼくはもう、5年くらいもここに住んでる気がするよ。1カ月で5年分の寿命が縮んだ感じ!」
と、相変わらずインド不満を炸裂させてはいるけれど、日々、この濃密な人との関わりのなかで、自分の立場を見極め始めている様子で、徐々に落ち着きを見せ始めている。
一日一日が、さりげなさを装いながら、しかし確かな意味を込めて在る。