夕べ、義父ロメイシュとその妻ウマがデリーから到着した。デリーはそのシーズンが終わっているはずなのに、しかし霧が理由で、すべての便が遅れに遅れ、午後6時にバンガロア到着の予定が夜の11時。しかし二人は疲れも見せず、元気にやってきた。
さて、今日土曜日は、主にはロメイシュがバンガロアに赴任していた時代の古い友人らを集めてのパーティー。加えて、わたしの友人、エミさんと夫のショーンも招待した。
今回のゲストは20名弱。とあらば、もう準備など「お茶の子さいさい」である。なにしろ、家政夫モハンがいるからね。わたしはもう、何の料理を準備するでもなく、ただメニューの内容だけをモハンと相談して、あとは彼に託すばかり。
ちまちまとした前菜などを作る情熱も今回はなく、パーティーの直前に食器の準備をし、「このバケットでガーリックバタートーストを作ってね」くらいを指示し、あとはスナックを小皿に盛り分ける程度の作業はした。
「7時あたりから」と言っておいても、7時に人が訪れるわけがない、ここはインド。主にはインド人のゲストだから、8時半あたりがピークであろう。そうわかってはいても、「一応は7時までには、身繕いをしておかなきゃね」と、ウマとわたしは6時半には着替えをするため部屋に籠る。
7時を過ぎて、まずは家族4人で乾杯。インド家族と関わるようになって思ったのは、こういう「団欒風景」が非常に多いこと。みながソファーに座り、なんとはなしに、語り合う。そんな機会が非常に多い。
結婚したばかりのころは、「鬱陶しいかも」などと思っていたけれど、わたしにとってもすでに、すっかり慣れ親しんだ習慣と化している。
やがて8時を過ぎたころに、義姉スジャータとラグヴァン、その弟のマドヴァンとアナパマ、デリーから遊びに来ているアナパマの弟が登場。しばらくは、家族ばかりの集いである。
米国にいたころは、夫にせよ、わたしにせよ、身近に家族がいない状態が普通だった。折にふれ、家族が渡米することはあったけれど、基本的には「二人行動」だった。
密着した義理家族との付き合いを、面倒だとか煩わしいだとか、負の感情に捉える事も少なくなかった。しかしここにきて、こういう家族との関わりが、とても温かくありがたいことに思える。
それは多分、インド家族が、適度な距離を保ってわたしたちに接してくれているからだろう。話をする頻度にせよ、プライヴァシーに関わる話題にせよ、ロメイシュやスジャータは、彼らなりに気遣ってくれているのがわかる。
マドヴァンたちもまた、実に「いい人」たち。そこそこにユーモアがあり、打ち解けやすく、話していて気兼ねがないのがいい。わたしたちは、やはり、いずれにしても、恵まれた環境にあるのだということを思う。
やがて、エミとショーンを筆頭に、ようやくゲストが現れ始めた。右の写真は、ロメイシュとウマ、それからロメイシュの友人ゲイリングとその娘たち。右の女性が、先日書いた、カニンガムロードのHatwork Boulvardにジュエリーショップを持つ長女マリアム。
CMモデルでもある彼女は、かなり高い頻度で世間に現れている。TVコマーシャルや雑誌の広告、街角の広告など、すでにあちこちで目にしている。インド在住の方なら、彼女の笑顔に見覚えがあるかもしれない。
キックボクシングをしていて足をねんざしたらしく、今日は今ひとつのコンディションだったようだが、夫と一緒に来てくれた。左端が次女のザイナブ。我が家の近所でビューティーサロンを経営しているのが彼女である。
彼女のスキルは抜群なのだが、以前も書いた通り、サロン自体が寛げないのが難である。
やがて、やはりロメイシュの古い友人でティーやコーヒーのソムリエをしているラナ、その妻ディピカがやってきた。彼らとは、数年前にバンガロアクラブで会ったきりだった。ディピカは久しく生け花をやっていて、小原流の師範の資格をもっているのだとか。
ラナのお茶の話には非常に関心があるのだが、わたしはゆっくりと話を聞けずじまい。しかし、食後に出したコーヒーがおいしいとのことから銘柄を聞かれ(南インドのコーヒー)、そこから話題がコーヒーに。ショーンはコスタリカの血が半分入っているとかで、ご実家はコーヒー農園を営んでいるとのこと。ラナとショーンはしばらく、コーヒーについて語り合っていたようである。
左の写真はショーンとアルヴィンド。ショーンはクルタ(インドのシャツ)がお似合いだ。それにしても、二人は双子な体型だ。
一方のマダム。パーティー前の写真撮影に余念がない。なにしろ今日もサリー姿だ。これは先日、ドライヴァーのクマールに連れて行ってもらった、例の「卸値価格」なサリー店にて購入したばかりのもの。
夏らしい爽やかな色で、写真ではわからないけれど、ところどころにガラス玉的スパンコールが鏤められている。それをして夫は「安っぽい」と言い、シルクの生地でさえ、「それって本物?」と疑う始末で不評ではあるが、わたしは気に入っている。
そんなこんなで、自分の撮影は忘れない癖に、今日もまた、モハンの料理を撮影するのを忘れた! 気づいたときにはすでにデザートが出ていて、料理は残り少ない状況で……。宴の最中はどうしてもおしゃべりに夢中になって忘れてしまうのね。ちなみに本日のメニューは
・チキンカレー
・マトンカレー
・サグパニール(ホウレンソウと手作りチーズのカレー)
・ラジマ(金時風、大きな豆の煮込み)
・コーン入りサラダ(前回好評だったので)
・ニンジンの煮込み
・ピースご飯
といったところ。我々にとってはすでになじみのメニューばかりだが、どれも軽めの味付けでおいしい。数名のマダムら、入れ替わり立ち代わり、「俺の城」に立ち入って、モハンにレシピを聞き出している。
「何も、特別なレシピじゃなかったけれど……おいしいのよね」
とレシピを尋ねたマダムの弁。
今までなら、「ミホ、お料理、おいしいわ〜」などと言われてうれしいパーティーだったのだが、今日はみな、「俺の城」に直行して、モハンに労いの言葉をかけていく。ちょっぴり物足りないけれど、ま、いいってことよ。
途中で帰宅したゲストもあり、最後はまた、みなで椅子に座り、リラックスしておしゃべり。打ち解けた感じの、とてもいい宴だった。宴が終わっても、片付けをしないでいいという状況にまだ身体がなじんでおらず、ついつい食器などを下げたりするのだが、モハンに制され我に返る。
なんだか本当に、いいご身分である。