東京時代は、「パンプス」を履いていたこともあった。でも、そもそもストッキングが嫌いな上、先が細くかかとが細く高い靴で歩くのは、苦手であったから、「靴下にローファー」というのが好みであった。
ニューヨークに移ってからは、かかとが高くてもしっかりとした、歩きやすい靴を買うことが多かった。歩くのが速い上に歩く距離も多く、さらには腰痛という慢性病を抱えていることもあり、履き心地、歩き心地が最優先だったのである。
特にマンハッタンは、舗道に地下鉄からの風が吹き上げてくるマリリンモンローな金網が張られていたりして、ヒールでは歩きにくい。"Sex and the City"のキャリーが超ハイヒールでマンハッタンの舗道を駆けているシーンなどを見るにつけ、「有り得ん!」と思ったものだ。
もちろん、繊細なデザインの靴を履いてみたくて、試着したこともあったにはあったけれど、店内で数歩歩くだけで、「だめだ」と諦めるのが関の山だった。痛いのね。キャリー含め、世間の女性はよくがんばっていると、ほんと感心する。
従っては、Rockport, Aerosole, Easy Spirit, Walking Co., ecco, といった、色気のない快適靴を販売しているブランドの靴を買うことが多かった。無論、ここ数年は、快適靴でも小洒落たデザインが登場し、「悪くないわ」というものも少なくなく、喜ばしい限りである。
なのでわたしの足は、外反母趾などには無縁。爪も滑らかで、非常に健康的ではある。
さて、インドに移住してからというもの、靴事情が変わって来た。週に一度のラッセルマーケットなど、屋外に出かけるときには、きちんと靴を履いて行くが、たいていはサンダル履きになったのである。サンダル、というかつっかけね。インドでは「チャッパル」というのだが。
なにしろ、靴下履くと、暑いしね。
インドの靴屋といえば、チャッパルパラダイス。キラキラ光る石が埋め込まれたもの、刺繍がほどこされたものと、派手なものが多い。なかなか「これだ!」というものには巡り会わないのだが、つい先日、友人に勧められたブランドの靴は気に入った。Plum Treeというのがそれだ。
ブランドといっても、シューズデザイナーの女性が個人で運営しているものらしく、すべて手作りで量産されていない。わたしの知る限りでは、リーラパレスのショッピングセンターとうちの近所のRain Treeでしか見たことがない。
サイズもあれこれあるわけではなく、一点ものばかり。だから、気に入ったデザインというよりは、ちょうどいいサイズのサンダルを見つけるのが優先である。
上の写真の右側2足がそのブランド。手前のサンダルなど「どうするんだ、その少女的なデザインは!」と自らにつっこみをいれつつも、あまりのかわいさに素通りできず、しかもサイズはわたしにぴったりで、ついつい買ってしまった。
Plum Treeのサンダルは、かわいいだけでなく、たいてい履きやすいのがポイント。履きにくいのもあるけどね。
ちなみに左のゴールドのサンダルは、カウアイ島で買ったもの。これは非常にお気に入り。なにしろ、これもまたとっても歩きやすいのだ。Sandal Treeというブランドで(やたらTreeね)、これはマウイ島だかカウアイ島だかが本社の、やはりローカルブランドであった。
黒や茶色、赤といった、シンプルな靴ばかりが並んでいたところに、華やかなサンダルが加わると、なんだかうれしいものである。我が家は室内でも「外履き」なので、普段からカラフルな足下でいられるのもうれしい。
たいていは、母がくれた鼻緒のキュートな下駄を履いているのだが、このごろはチャッパルだ。
小さいところから徐々に、インド暮らしにおける自分のスタイルというものが、育まれて来ている気がする。大げさか。