デリーへの移転は、延期になりそうな気配である。わたしとしては、とっとと拠点を定めて活動開始をしたいのだが、物事、そう思い通りにはいかないのである。従っては、そろそろ、できるところから「活動」を始めようと思っている。
「活動」ではなく「仕事」と呼びたいところだが、現状では仕事と呼べるほどの利益を伴わないので、取りあえず、「活動」である。これまでも、地道な活動は継続して来たが、これからは、少々力を入れ、近い将来"Muse India"として「仕事を再開」できるよう、基盤作りを始めようと思う。
まずはインド人インタヴューを今週から始めることにした。どこかの出版社から依頼された、というわけではなく、これは『muse new york』 『muse washington DC』同様のコンセプトである。つまりは自己完結故、記事はホームページに掲載して行く予定。
ミューズ・クッキングクラスも「活動」の一環である。だから「お遊び」ではなく、真剣である。今日はスジャータと企画を練り、インド家庭料理をはじめるにあたっての「ガイド」を制作、初回クラスのレシピも完成し、計10枚のハンドアウト(資料)を仕上げた。
とりあえずは日本語の資料だが、いずれ英語版も作ろうと思う。なかなかに、いい勉強になる。しかも楽しい。
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ところでアルヴィンドは、今日から水曜まで、2泊3日のムンバイ出張である。今回はさすがに同伴しなかった。たまにはゆっくりしたいのである。従っては、妻は一人で静かに……と言いたいところだが、ラグヴァンがカナダ出張中の義姉スジャータが、日曜から泊まりに来ている。
一緒に食事をし、クッキングクラスについて打ち合わせ、わたしはボリウッドダンスに出かけ、彼女は読書などをして、奇妙ながらも楽しい数日を過ごしている。
そういえば、今朝、デリーの義父、ロメイシュからスジャータに電話があった。今日は、スジャータとラグヴァンの結婚記念日らしい。スジャータはすっかり忘れていたらしい。
で、12日はウマとロメイシュの結婚記念日でしょ? 例のレストラン"Qi"で、すべての記念日を祝ったら、もう絶対、「ケーキただ食い一家」と間違えられるよな。と、また同じようなことを思いつつ。
ダンスクラスの帰りに、今日は近所のキッチン用品店で、インド的ステンレスの器などを買った。家政夫モハン改めモハンシェフは、必要最低限の調理器具にて料理を作っているのだが、クッキングクラスを開くとなると、やや多めに揃えておいた方がいいだろうと思った次第。
インドはステンレス製の食器類が非常に安い。タッパーウエアーとかジプロックなどよりも、はるかに安い。食品の保存にもよい弁当箱的ステンレスも多種ある。かなりおすすめだ。
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それにしても、わたしたちはいつ、どこに引っ越すのだろう。まだ開封していない段ボールは、いったい、どうすりゃいいんだろう。
夫の会社は、デリーかムンバイに新規オフィスを立ち上げたいとの意向らしいが、今のところ、夫の目線はムンバイに向いている。無論、我々はムンバイに引っ越すつもりはなく、バンガロールからは航路1時間半と近い故、ここから出張すればいいという状況である。
スジャータやラグヴァンが、わたしたちにデリーに行かないでほしいと思っているのはわかるが、義父のロメイシュすら、デリーに来るより、バンガロールの方がいいんじゃないかと、ことあるごとに言う。
「デリーは暑いし、寒いしで、住みにくい」
などとも、しきりに言う。わたしとしては、インドの首都に移るのだ! とすっかりその気になっているというのに。暑さ、寒さなど我慢したる! と思っているのに。
子供たちが仲良くやっているのが、うれしいようだ。わたしたちも、スジャータやラグヴァンと会えなくなるのは寂しい。何しろ彼らはアルヴィンドのことをよくわかっているし、そういう人と日常会話を分かち合えるというのは、楽しく、また心強いことである。彼らから学ぶこともとても多いし。
そもそも、あれだけバンガロールは田舎だ言葉が通じない最悪だ排気ガスだ渋滞だ第四世界だと騒いでいたアルヴィンドですら、このごろでは、
「ここにしばらく住むのも、悪くないよね〜。気候はいいし、ヨガ道場も楽しいしね!」
と、極めて前向きである。なんだか人生の優先順位がよくわからん日々である。
結婚して5年。自分の思うように動けなくなって5年。わたしもだいぶ、この状況に慣れてきた。大人になった。今、ここでできることを、やるしかないのだ。と、自らに言い聞かせている。そんなわけで、宙ぶらりんながらも、始動である。