●ムンバイのテロから1週間。テロの多いインドにあって、しかしあのテロは極めて衝撃的であったようだ。とはいえ、翌日には「平常通り」の町の様子に戻りつつあった。ムンバイの人々のタフさ、力強さが感じられるニュースをいくつも目にした。翻弄されない強さがあるのは、誇るべきことだ。Salaam Bombay! しかし、「平和」という言葉が空々しく、絵空事のようにしか思えぬ昨今。
●サミットのあと、ブッシュとブレアが「親密にランチ」していたはずが、テーブルのマイクのスイッチを切り忘れていて、ゴシップの内容が筒抜けだったと言うニュース。"Yo Bush!" "Yo Blair"と、掛けあう声も親しげに。「このセーター、本当にありがとう。君が選んでくれたのかい?」とブッシュが言えば、「もちろんさ!」とブレア。
国連議長を中傷気味に話す会話も記録され……。プレッツエルを喉に詰まらせたり、セグウェイの試乗で転んだり、小泉首相をメンフィスに連れて行ったり……近所のおじさんだったら「おかしなおっちゃん」ですませられたものを。なぜ、彼が大統領なのだろう。コメディアンだったらよかったのに。
●このごろ、週に2度は、夕食を作る。NY時代は、セントラルパークをウォーキングしたり、町を歩いているときに、仕事のアイデアや広告のコピーを考えることが多かった。DC時代は、料理をしているときだった。歩くことも、料理をすることも減っていた昨今、料理をして初めて、脳の違う場所が動いていることを再認識した。やっぱり、キッチンは「わたしの城」でもあるべきだ。
●外出しようと車に乗り込んだら、お尻がヒンヤリ。慌てて立ち上がれば、シャツもパンツも思い切り濡れている! ドライヴァーに何ごとかを問えば、「あ、さっき車を洗ったとき、窓を閉めるのを忘れてました」とのこと。悪びれもせず、謝りもせず。マダム、怒りつつ、着替えに行く。改めて、ドライヴァーに文句を言えど、「窓を閉めるのを忘れてた」の一点張り。試練だな。と思う。あーもう。
●土曜の夜。「明日は来なくていいから。月曜は、朝6時半に来てよ」
日曜の夜。ドライヴァーから電話。
「朝、6時半っていうのは、今日のことでしたっけ、それとも明日のことでしたっけ?」
ってことを、いまごろ確認するべきだっけ?
●土曜の夜、友人夫婦とまたしても"Qi"へ行った。料理はおいしかったが、デザート(チーズケーキっぽいもの)はまずかった。サイズも小さかった。日本かと思った。お誕生日やアニヴァーサリーのためのケーキは、わざわざ別途、準備するらしい。メニューにはないらしい。メニューに入れるべきだと勧めておいた。
●ボリウッドダンス。身体がくねくね柔軟な人。テキパキきちんと踊る人。リズム感はちゃめちゃな人。自分のことはさておき、人の動きを見るのは興味深い。バレエの心得があるらしき女性の踊りは、動きが華麗すぎてボリウッドダンスに似合わない。やや「ひきずるような歩き方」をする、かったるい感じの少女が、適度に力が抜けていて、抜群にうまい。
●ヨガ教室の周囲に、新しい家がどんどん立っている。働くのは、薄汚れたシャツにパンツ姿、裸足の男たち。薄汚れたサリー姿、裸足の女たち。砂利を運び、砂をふるい、セメントをこね、ブロックを積み上げ、そんな造り方でいいのか、そう思うたび、いつもタージマハルを思い出し、この国の人は、あれを作ったんだから大丈夫か、などと、無理に自分を納得させる。
●一時帰国していたお隣の日本人駐在員Sさんが、タイ経由で戻られた。昨日、出勤前に、モハンに土産を託してくれていた。冷凍たこ焼きと小瓶二つ。この小瓶は……なんだろう。アンプル剤? 読めるのは、WINNER'S BRAND Vanilla Flavourの一文。ヴァニラ風味の強壮剤? まさかね。おう、ひょっとしてヴァニラエッセンス? 先だってのブログを読んでくださっていたようだ。ありがとう。
●金曜の朝、室内灯が一つ壊れた。修理はアパートメントのハンディマンの仕事。何度も電話で催促した挙げ句、夕方ようやくやってきた。しかし部品が足りない。「月曜日、部品を用意してきます」「午前中、必ずやってよ」「ノープロブレム」。月曜日。モハンが催促の電話を入れているが来ない。火曜日。庭でハンディマンを見つけたマダム、「うちの電灯のこと、忘れたの?!」と問えば、「あ、昨日、部品を持ってくるのを忘れたんです。今から行きますよ。ノープロブレム」。……ノープロブレム、という言葉が、嫌いだ。
●「ミホは小さいことにいちいち反応しすぎるよ。ここはインドなんだから、ちょっとは辛抱しなきゃ」とアルヴィンド。おおぉぉぉう。自分、インドになじんでるじゃん。インドの肩、持ってるじゃん。あなたに言われたくないわ〜、と思いながらも、感慨ひとしお。