一昨日、親知らずに詰められていたクラウンが取れてしまった。数年前、米国時代に治療してもらっていた歯だ。小さな虫歯に詰められていたものだから、大きな治療は必要ないとは思ったものの、インド初、歯科医にいくわけで、なるたけいいところを見つけたいと思う。
何しろ、昨年末、アルヴィンドが「ラグヴァンの知り合いの知り合い」から勧められた歯科医で、詳細は割愛するが「ひどい目」にあった経緯がある。ちなみに義姉スジャータは、数カ月に一度、デリーを訪れているので、その際、子供時代から行きつけの歯科医に通っているのだそうだ。
アルヴィンドはひどい目にあった後、やはりデリー出張のついでに、その歯科医で治療をしてもらった。
これだけ外国人居住者も増え、欧米水準、もしくはそれ以上の医療機関が整い始めている昨今、バンガロールにだって、いい歯科医はいるに違いない。アルヴィンドは運が悪かっただけだろう。
OWC(Overseas Women's Club)が発行しているディレクトリで、歯科医の一覧を見つけ、それぞれのコメントを読みつつ、最寄りの診療所を探す。……と、我が家から徒歩5分ほどのカニンガムロード沿いにある、非常に評判のよさげなところを見つけた。早速予約を入れ、本日5時、訪れた。
受付には、ハキハキとした口調のお兄さん(助手1:写真左)が座っていて、十分ほど早めに到着したわたしを診療室へ案内してくれる。ちなみに、「靴を脱いで」と言われる。衛生面を考慮して、土足禁止らしい。が、素足に靴なしはつらい。「マイスリッパ持参」もしくは「ソックス着用」が望ましかろう。
さて、3つある診療室のうちの一つに通された。明るく清潔で、近代的な設備が整っている。いい感じだ。「助手1」は、非常に雄弁で、ちょっと芝居がかっているくらい。先日の皮膚科医と同様、アメリカナイズされている診療所は、そのキャラクターまでアメリカナイズされてしまうのか。
わたしのインド製バングル(ブレスレット)を褒め、ハンドバッグを褒め、「で、あなたは、世界のどの場所から来たのですか?」と問いかけながら、治療の準備を整える。
ドクターが他の患者の治療をしている間、彼が我が口内を「下調べ」し、レントゲンを撮り、準備万端に整える。それでも10分ほど、ドクターを待たねばならなかったが、その間、世間話である。
彼はバンガロール生まれのバンガロール育ちらしい。もう、聞かれ尽くした質問であろうと思いつつも、「バンガロールは、変わってしまったでしょ?」と問うと、深くうなづく彼。
「僕は、もう、バンガロールの渋滞のことや、排気ガスのことなんかを、話したくはないんです。わかるでしょ? ただ、今とどれほど違っていたかを言うならば……。僕は子供の頃、シャンティナガール(バンガロール中心地)に住んでいて、毎日、45分ほどかけて学校に通っていたんですけどね。セント・ジョセフです。その道中、一度も、直射日光を浴びなくてすんだんです。どうしてだと思います? それは、緑が生い茂っていて、道路をトンネルのように包み込んでいたからなんですよ」
今でさえ、バンガロールは緑が豊かだと思っていたが、その比ではないほどの、その緑の多さだったと言う。
1991年を境に、それまで海外といえば旧ソ連としか関わりのなかったインドが、世界に門戸を開いた。同時に、「リタイアした人たちの、憧れの地」であった避暑地バンガロールに、じわじわと、やがて怒濤のごとく外国資本が流れ込んで来た。
「僕はね、まだまだこの状況は序の口だと思うんです。ひどい政治家によって仕切られて来たにも関わらず、バンガロールはこれほどの急成長を遂げられたわけですから。インフラ、その他、問題点は衆知の通り山積してますけれど、これからもっと変わりますよ」
それからしばらく、インド市場の可能性と懸念とを、語り始める。それは常日頃、アルヴィンドと話していることとシンクロしていて、非常に興味深かった。
話題は日本料理店、日本食に及び、シーウィード(海藻)の種類について問われ、ワカメと海苔と昆布の違いについてを説明し、更には昨今のインド女性のファッションに付いても語り合われ、20分ほど過ぎていたかもしれぬ。
さて、肝心の治療である。
にこやかに、やはり少々演技じみた話し方をするドクター・レイ(写真中央)がやって来た。加えてもう一人のお兄さん(助手2:写真右)、さらに女性のアシスタントが登場し、なんやかんやで4人掛かりだ。インド、どこでも余剰人員だ。
さて、虫歯の親知らずを、抜くべきか、温存すべきかを相談した。
ドクターが口内をチェックする間、助手1は助手2に指示をして、器具の準備。その間、助手1はバキュームを設置して、わたしの傍らに立つ。
ドクター曰く、親知らずは、触らずに、そのままにしておいたほうがいいとのこと。幸い虫歯は軽いから、今日、軽く削ってクラウンを詰めます。それで問題ないでしょう、とのこと。
「今日の治療は、断じて痛くありませんから、ご安心ください」
そう言って、ドクターはガガガ〜ッと削り始めた。治療は連係プレーで速やかに、さっさと詰め物も完了し、治療時間はおしゃべり時間よりも短くてすんだ。
助手1曰く、
「ドクター・レイは、オーストラリアで技術を得て、すばらしい腕前です。治療用の器具やプロダクツは、すべて先進国から最先端のものを取り寄せています。今日あなたに詰めたクラウンはドイツ製です。歯へのなじみがよく、違和感がなく、非常にいい製品です」
と、セールストークもすばらしい。
「もしも、夜中に歯が痛くなったりしたら、躊躇せず、ドクターの携帯電話に連絡してください。ドクターは、24時間態勢で、急患に対応しているんです!」
そりゃまた、大変だ。
清潔感があり、対応もよく、ドクターの治療も確かで(といっても、クラウンを詰めてもらっただけだが)、かなり好印象。上の写真は、ホームページに紹介しますから、と言って撮影させてもらったもの。
ちなみに治療費は、1500ルピ−(約US$33)。レントゲンを2枚撮り、親知らずに新しく詰め物を入れてもらった(麻酔なし)。日本に比べると国民健康保険(だっけ?)がきかない分、高いのかもしれないが、米国に比べると安い。だいたい米国が高すぎるのではあるけれど。
歯科医を探しているバンガロール在住の方、おすすめですよ。(改め:おすすめしません!)
2009年8月現在、過去、この歯科医で施された神経治療に大きな問題があったことがわかり、インプラント治療を余儀なくされました。この記録を記したときに治療された歯については今でも問題はないが、いずれにしても、おすすめしません。
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CARE: A Complete Dental Clinic
Dr. A.K. Ray (Wg Cdr-Retd.)
BDS MDS FPFA MIAID MICOI (USA)
Specialist in Crown & Bridge, Cosmetic and Implant Dentestry
206, Prestige Centre point, Cunningham Road.(ピザハットがあるビル)
phone: 2220-0770
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