最近のインドは、祭り続きで、しょっちゅう、賑わっている。派手な音楽が流れていたり、車が花飾りをつけていたり、なにがなんやら、よくわからない。
今はダサラという祭りの最中で、多分、来週の月曜日がその祭りの「山場」であるらしい。
ちなみにダサラ(dasara)とか、デュシェラ(dussehra)とか、ダシェラ(dassehra)とか、表記や発音も地方によってまちまちで、これまた混乱させられる。
ちなみにバンガロールのあるこのカルナータカ州では「ダサラ」と呼ばれている。バンガロールから車で数時間の古都マイソールでは、豪華に着飾ったたくさんの象が登場するダサラの一大イヴェントが行われる。
ここ数日の新聞には、サリーやらジュエリーやら家電やらのセール広告がしばしば出ている。祭りシーズンはショッピング&ご贈答の季節でもあるようだ。
義姉スジャータが、ヨガ師匠夫人は毎年、祭りのための人形を飾っているので、見て行ってはどうかと提案してくれたのだ。
上の雛壇のような台に飾られた、賑々しい人形群がそれである。人形を飾るのは、特に南インドの習慣であるらしい。彼女があちこちで買い集めた神々の人形を、こうしてダサラの日に飾り付けるのだとか。
まだまだ、箱の中にはいっぱいの人形コレクションがあるらしい。
ヒンドゥー教には、あれこれと神様が大勢いる上、インドは地方ごとに文化や習慣がことなるので、よりいっそう、なにがなんやら、よくわからないのである。でも、そんないい加減なことではインド人妻として情けないと思ったので、夫に尋ねてみたのだが、夫もよくわかってないのである。
「あなた、インド人なのに、インドのこと、本当に知らないのね」
そう言うが早いか、夫、反撃に出る。
「僕はね、だいたい子供の頃からインドが嫌いなんだよ。貧乏だし汚いし。インドが外国とクリケットの試合をするときだって、他の国の方を応援していたくらいなんだ。TVは白黒だし、チャンネルも国営のつまんないのが2つくらいしかなかったし。
車はアンバサダーとフィアットしか走ってなかったし、電話の回線を引くのにだって1年以上もかかってたんだよ。まるで共産主義国だよ。まあ、最近は、ちょっとはましになったけどさ。
だから18歳のときにインドを出られたときには、本当にうれしかったんだよ。えっ? ミホが子供のときの日本も白黒だったって? そりゃ時代が違うでしょ? 僕が子供のとき、ミホはすでに大学生じゃないか!
だいたいさ。インド人て、変なんだよ。おかしいよ。バカな政治家や資産家が富を独占するし。あ〜あ。なのにまたインドに戻って来て、いったい僕の人生はなんなんだ。」
本日はご機嫌斜めのようなので、こんな愛国心ゼロどころかマイナスの夫には頼らず、自分で調べるしかなかろうと思う。
でも、休日ということもあり、調べる情熱が浅く、手っ取り早く日本のインド政府観光局のサイトを読んでみる。そのまま引用させていただきたいところだったが、失礼ながら、なかなかにわかりにくい文章だったので、少々こちらで手を加えさせていただいた。
---------------------------------------------------
ダシェラ(ヴィジャイ・ダシュミ)は、毎年9月もしくは10月行われる祝祭で、インドで最も大きな祭りのひとつ。約十日間にわたり、街は歓喜と賑わいに包まれる。
ダシェラとは、ラム神が二つの頭を持つラマヤナに勝利したことを祝する祭り。ラマヤナとは、ランカの魔王でラム神の妻シータを誘拐した。ラマヤナがラム神に追撃されたことは、「善」が「悪」に打ち勝つ象徴とされている。
十日間の祝祭の間、インド北部では踊りや劇(ラマ神の話、ラムリラ)を通して、ラム神の話が演じられる。最終日(10日目)、ラヴァナ、ラヴァナの弟クンブカラン、息子のメグナタの人形は爆竹で満たされ、日の入りのときに燃やされる。人形が燃やされるのを見に、多くの見物客が訪れる。
ダシェラはまた、マイソールの大きな行事。宮殿は美しくライトアップされ、飾りをつけた象が街の通りをカラフルに行進する。ベンガル地方では、ダシェラはシヴァ神の妻である女神ドゥルガの祭りとされている。
---------------------------------------------------
さて、ヨガ師匠宅の人形見学を終えて外に出る。家々の軒先には、花や椰子の葉、スイカのように赤い染料が塗られた瓜のような実が割られて飾られている。
家だけでなく車にも、飾り付けを施している人がいる。
いつもよりいっそう、人通りが多く、みな、どこか浮き足立った様子である。街角にはラクダもたたずみ、なにやらおめでたい様子である。
ヨガの帰りにスジャータとラグヴァンが我が家に立ち寄り、一緒に朝食をとる。彼ら、ギーたっぷりのパランタとスクランブルエッグをたっぷり食べている。しかし、太らないのはなぜ?
そんなことはさておき、わたしはゆうべ、奥歯のクラウンが外れてしまっていたので、本日早速、歯科医のアポイントメントをいれておいた。ご近所なので、車を使わず、歩いていくことにした。
案の定、町中は、祭りの雰囲気が満ちている。オフィスビルの中ではプジャー(儀礼)が行われているところもあり、みな仕事どころではない様子だ。
相変わらずの排気ガスのなかを、しかし物珍しさも手伝って、少々遠回りをして帰る。
ガネイシャ像の飾られたテントには、スピーカーが設置されていて、大音響のメロディーがピャ〜ラピャ〜ラと流れ出している。
うるさくてかなわないが、世間は楽しそうである。
いつもはだらしなく寝そべるイヌだらけの通りだが、驚いたことに凛々しいイヌがいる。
祭りである。
わたしたちはしかし、どこに出かけるでもなく、午後はのんびりと家で過ごし、「チャンネルが潤沢にある」TVで映画を見る。
夜は久しぶりに、マダム、キッチンに立つ。インゲンのサラダに炊き込みご飯、味噌汁にポムフレット(マナガツオ)の塩焼き。
100%自分の味を食べるのは久しぶりのことで、なんだか鳥肌が立つほどほっとする。
やっぱり、モハンの料理には飽き飽きなのよね〜。飽き飽きだと叫んでいた矢先に、クッキングクラスを始めたりなんかして、わたしもおかしいわよね〜。
早いもので、2週間後はニューヨーク。バラエティ豊かな食のシーンを満喫できるというものである。今から楽しみである。