来週は、夫がムンバイ&デリー出張で、再来週はわたしがムンバイ&デリー出張。今回は二人の予定が重ならず、わたしがムンバイにいる間、夫は香港へ出張だ。
わたしはといえば、1週間余の出張の後、数日後には日本へと発つ。東京、福岡を経てバンガロールへ戻ってくるのは12月2日。つまりは11月が、めまぐるしく過ぎてゆく。
一昨日、しばらくは、GET TOGETHERの機会もないだろうと思い立ち、今日、パーティーを開くことにしたのだった。
毎度書いているけれど、家政夫モハンがいるため、準備や片付けが楽である。テーブルセッティングなどの準備やメニュー構成は考えるけれど、それは大した仕事ではない。
今日は、かつて母が日本から持って来てくれていた「オアシス」を利用して、花を生けてみた。ラッセルマーケットの、小振りで、開花が不揃いな白いバラも、こうして生けるとなかなかにすてき。今後はオアシスを用いてフラワーアレンジメントを工夫してみようかと思う。
何の準備もしない、というのもなんなので、焼き菓子でも作りたいところだが、なにしろオーヴンが不調のまま。従っては、今日もまた、クレープを焼くことにした。クレープの種を作り、寝かせている間にカスタードクリームを作って、それからクレープを焼く。
2つのフライパンを使って、次々に焼く。全く同じ火加減なのに、一枚一枚、焼き上がるタイミングや焼け具合が微妙に異なるのはなぜだろう。
などと思いながら、黙々と焼き続けるのは、豆の殻を剥くのと同様、無口な楽しさがある。
6時を過ぎた頃から、徐々に皆が集まり始める。
ところで、左上の写真は、見た目こそは地味ではあるが、簡単でおいしい「ヨーグルトクリーム2種」である。
ボウルの上にざるを置き、その上にコーヒーフィルターなどを敷いた上にヨーグルトを入れ、数時間冷蔵庫に入れて水気を切る。すると、クリームチーズのような滑らかなヨーグルトクリームができあがる。
一つには、ニューヨークで買って来たサラベスのマーマレード&アプリコットジャムを混ぜ合わせる。もうそれだけで、おいしいデザートのような味わい。もう一つは、レーズンやパイナップル、くるみを小さく切ったものとジャガリ(無精製の砂糖)といった、インド的素材を混ぜ合わせたもの。
これらを、NILGIRI'S(ブリゲイドロードにある小型スーパーマーケット)で買って来たラスク(結構おいしい)に付けて食べるのだ。ヨーグルトクリーム入れる具は、あれこれアレンジが可能で、なかなかに便利で簡単な「おつまみ」である。デザートともいえる。
写真の右上に移っているのは、Iさんが持って来てくれたポテトサラダ。なんと「明太子」が混ざっているのだ! 美味!
さて、上の集合写真の「バンガロール・キャンディーズ」の一人が掲げている雑誌は、アルク社の「マガジンアルク」である。海外の食事情の特集が組まれていて、「インド編」は坂田マルハン美穂が担当したのだ。「マルハン家の食卓」では、我が家の朝昼晩の食事を紹介している。
郵便事情のせいか、わたしの手元にはまだ届いていないのだが、アルクの通信教育を受けている友人宅にはすでに届いており、記事を見つけて持って来てくれた次第。
インドで始めた仕事の中で、「紙媒体」として紹介されたのはこれが記念すべき第一回目。
初心にかえったような心持ちにさせられ、なんだかうれしい。
スジャータとラグヴァンも、文字は読めないものの、写真を見て喜んでくれる。調理中のモハンの写真が小さく載っているのだが、それをスジャータがモハンに見せたら、故郷の家族に送りたいとのこと。記事のカラーコピーでもとって渡そうと思う。
相変わらず、みんなモハン食を喜んで食べてくれる。わたしはといえば、最早メニューの詳細を書く気にもなれないほど、モハン食に「飽き飽き」で、真剣に対策を講ぜねばならぬ、といった気分だ。
とはいえ、出張やら旅行やらが相次いで「合いの手」も入る故、ここ数カ月はまだなんとかなるだろう。
ところで、右の写真の手前にあるのは、K子さんが持って来てくれた「赤飯」と「のりたま」である。今夜のわたしは、このおいしい赤飯ばかりを食べていた気がする。
でもって、後方に写っているのは「箸が転げてもおかしい年頃」な、バンガロール・キャンディーズである。直立していられないほど、おかしい様子である。呆気にとられて二人を見守る男子の表情もまた、味わい深い。
すでに料理で満腹ではあったが、Y子さん持参のフルーツサラダやマダム特製のクレープをお出しする。
相変わらず、クレープの「付け合わせ」は生クリームにカスタードクリーム、チョコレートソースにバナナである。シナモンシュガーパウダーも用意していたのだが、出し忘れた。
ちなみに、インドの生クリーム(我が家はNILGIRI'S製を使用)は酸味があるのだが、今日のそれは珍しく酸味がなかった。従ってはクレープとの相性もよい。安定しない品質、味わいに応じて、臨機応変な調理が迫られるのも、インドならではといえるだろう。
チョコレートソースは、夫お気に入り、日本の「ガーナチョコレート」を溶かした。それにココアパウダー、牛乳、そして酸味がなかったため生クリームも加えた。滑らかに仕上がってなかなかである。
ちなみに「ガーナ」を溶かしてしまったことは、夫には秘密である。来月、日本で仕入れなければと思う。
それにしても、今日は格別に楽しい夜だった。みなよくしゃべり、よく笑い、よく食べ、よく飲んだ。
わたしもいつもに増して酔っぱらった。ドリフターズ(!)とひょうきん族(!!)の話題が上ったときは、何を興奮したのか、盛り上がるあまり、コーヒーをスカートにこぼしさえした。
ちなみに白ワインをシャツこぼす男子1名、赤ワインをシャツにこぼす男子1名もあり、みな、概ね「いい気分」だったようである。
我が夫はといえば、「ニューヨークから第三世界に戻って来てちょっぴりブルーだった」らしいが、第三世界で働く男たちと会話を共にし、楽しかったと同時に、勇気づけられたようである。
何しろ、日々、一人での仕事であるから、こうして同じ土地で働く人々と会話を交わすことは、大切なことでもある。
皆が帰ったあと、しゃべりすぎて喉が痛いのを自覚しながらシャワーを浴び、ベッドに入る。今日は楽しかったね、と言いながら、眠りにつくとき、夫が言った。
「今日、Nさん(日本人駐在員)に、インドのインフラストラクチャーのひどさなんかを話してたらね、彼に、僕は愛国心が強いんだねって言われたんだよ。それだけインドに腹が立つのは、インドに対する愛国心があるからに違いないだろうって。
もしもどうでもいいと思っていれば、そこまで腹が立つことはないだろうって。インド人として、インドに対して、もっと誇りを持つべきだって言われたよ」
いいこと言ってくれるじゃん、Nさん!!
わたしが百万回言ったところで「右の耳から左の耳」な夫ではあるが、他人から言われると、素直に心に響くのね。愛国心があるかどうかはさておいても、インドに対して誇りを持ってほしいとは、常々わたしも思うのだ。
誇りを持ちにくいとは思うけれど。
でもって、わたしが日本に対して誇りを持っているのかどうかはまた別の問題として。
怒濤のように流れゆく日々にあって、出会いと別れを繰り返しながら、束の間の友好を慈しみながら、わたしたちは少しずつ、成長してゆくのだろう。
どんなに歳を重ねても、人の言葉に耳を傾け、ときめく心でありたいと思う。
次の集いは、きっとクリスマスパーティー。この次は、皆で料理を持ち寄っての「ポットラックパーティー」にしようとの案が出た。
それまでにオーヴンをなんとかして、ターキーならぬ鶏肉の丸焼きでも作ろう。焼き菓子も作ろう。楽しみだ。