師走炸裂な29日であるが、相変わらずデスクワークである。思い返せば12月初旬。日本から帰国して以来、延々と続いている。そしてまだ続くのである。1月上旬には、すべてを終わらせて、別のプロジェクトに移りたいものである。
さて、今日の夕方は息抜きを兼ねて、近所にある毎度おなじみASIAN ARTS EMPORIUMへ。今日は、ダディマ(アルヴィンドの父方祖母)へのパシュミナを買うのだ。実は彼女、12月25日が90歳の誕生日だったのだ。
お年寄りにこそ、軽くて暖かいパシュミナは重宝だろうと、「日常使い」にしてほしく、しかし奮発して上質の物を購入しようと決めたのだ。
「え〜、ダディマに高級パシュミナ〜?」
と、一瞬、けちくさいハニーであったが、日頃なにもしていなのだし、それにデリーは寒いし、安っぽいカーディガンなんかを買うよりは、軽くて暖かいものがいいに違いないのよ、と説明したところ、同意を得た。
そんなわけで、夕暮れ時、店に赴く。わたしの名前を「フルネーム」で覚えてくれている兄さんに挨拶をし、パシュミナコーナーへ。彼はカシミール地方出身で、バンガロールに来る前はデリーで働いていたらしい。
彼はわたしがよく店を利用するのに加え、友だちなどを連れてくるので、たまにカシミール料理のケイタリングなどを我が家に届けさせてくれる。わたしが店に行くと、すぐにサフランやカルダモンの入ったカシミリティーも出してくれる。なかなかに居心地がいい店である。
さて、ダディマのパシュミナは、シルヴァーグレイのような色合いの、上品な一枚を選んだ。
今日はパシュミナだけ。
と思っていたけれど、ついついジュエリーコーナーに吸い寄せられてしまう。その一画は最近改装されたばかりで「高級な雰囲気」が醸し出されているが、数十ドルのシルヴァージュエリーもたくさんあって、気軽に買える物も少なくないのだ。
あれこれと石を眺めつつ、石の種類などを兄さんに教わる。それからこれらシルヴァー&セミプレシャスストーン(半貴石)のインド国内流通について、かねてから気になっていたことを尋ねる。
意外と気前よく教えてくれる兄さん。
インドにはともかく、宝飾品が多く、石が多く、関心は尽きない。あれこれと話を聞きながら、安いけれど良さそうな物を2つほど見つけたので、買った。というのが、先日、日本へ帰国した折、母や妹や友だちから「安くてすてきジュエリー」をうらやましがられ、「買っておいて」と頼まれていたのだ。
なので今後は、手頃なものを見つけたら、そのときどきで買っておいて、プレゼントなどにしてもいいと思っているのである。そんなわけで、オニキス、それからスモーキートパーズ(グレイ系の上品な色合い)のペンダントヘッドを一つずつ。
あれこれ選びながら、今度は兄さんが、「日本人カスタマーへどのような対応をしたらいいのか」を尋ねて来る。なので、日本人が好みそうなジュエリー(小振りで繊細な物)や、日本人が重視するポイントなどを伝授する。
また、サフランなども、パッケージに配慮して、積極的に展示販売するべきだと伝えた。日本はサフラン、高いからね〜。
わたしは毎朝、サフランとターメリック、トゥルシ(聖バジル)の葉入りのお茶を作って飲んでいるけれど、日本でサフランを毎日飲むなんて、贅沢過ぎるもの。でも、インドだったらお気軽よ。
そんなわけで、1時間ほども長居をしたか。
「見るだけ」
と言いながら、今日もあれこれと見せてもらった。ヴィクトリア調の意匠が利いたジュエリーが興味深かった。ルビーやエメラルドが中央に配され、周りにはダイヤの原石(粒)がちりばめられた、アンティークスタイルのジュエリーである。
ダイヤはあくまでも極小で研磨されていないためダイヤには見えないのだが、光が当たるときらきらと輝き、それはそれは美しい。
深海のごときブルーサファイヤも、気品あふれる石。……インドにいると、関心の枠が広がるばかりで収束せず、やはり人生が足りない。インド移住後、もう、1年が過ぎてしまっているのだから。
上の巨大オウム寺院は、バンガロールの町中で激写したもの。通るたびに気になっていたのだが、なかなかシャッターチャンスを得られず、これは走り去る車窓から撮影したのだが、しっかりと全容がつかめて上出来である。惜しむらくは背景が青空ではないこと。
実際、このオウムが神様なのかなんなのか、よくわからんのだが、バンガロールにはこの小鳥がよく飛んでいるのだ。
今朝も我が家の近くの木に止まっていたので、撮影した。なにぶんカメラが「普通」なので、こういう被写体をうまく捉えられないのが惜しい。思い切り望遠機能を使ってみたが、これ以上は無理であった。が、雰囲気は掴んでいただけよう。
緑一杯だったこの町。どんどん新しいビルが建設され、近代化が進む。こんな鳥たちも、やがては住処をなくして、どこかへ消えてしまうのだろうか。
「この国の、この町の急激な成長って、なんだか怖いくらいだね」
先日、わたしがアルヴィンドに告げたら、彼は即答した。
「そうかな。僕は、優秀な人間も多いこの可能性のある国が、ばかな政策のせいで今まで成長できなかったことの方が、よほど怖いと思うよ」
おっしゃる通りや!
と膝を打ったのだった。
でも実際、土木作業に従事する労働者の出で立ちを見ていると、心配で仕方ない。先日は、工事現場で数人の労働者が事故死したと出ていたが、見えないところでも日々、死傷事故は起きているに違いないと思うのだ。
日本ですら、表に出ない、土木現場におけるかような事故は、じつはとても多いのだ。
せめてディベロッパーなり業者なり、貧しき労働者に作業靴や作業着、ヘルメットを供給してやってほしいと思う。
なんだか話があっちこっちに飛んでいるが、そんなわけで、まもなく2006年も終わろうとしている。いろいろと「締めくくり」な作業をしたいところだが、今年は流れるように年が変わりそうだ。
※……今、サダム・フセインが処刑されたとのニュースが入って来た。書きたいことは募るが、なにか、大きな問題が起こらないことを、祈るばかりだ。