[LONGWOOD GARDENS, BRANDYWINE, U.S.A./ MAY 2005]
[WASHINGTON, DC, U.S.A./ SPRING 2005]
朝、目を覚ましたとき、今日は外出をせず、仕事をせず、気ままに過ごそうと思った。
朝から雑誌をめくったり、数日前、日本の友が再び送ってくれた本を読んだりする。本の贈り物は、ことのほかうれしい。しかも、自分が選ばない本を選んで送ってもらえるのは、とても楽しい。
大切に読もうと思いながら、すでに数冊、読んでしまった。
これを読んだらやめられない。と思いながら、今朝は宮部みゆきの『あかんべえ』(上)を読み始める。
ランチの後は、窓辺の椅子に座って、日の高いうちからワインなど飲みながら、ページをめくる至福のひととき。
なのに、またしてもAIRTEL(電話会社)のトラブル発生! 夫の携帯電話だ。支払いをすませているのに、昨年後半以来またしても(これで3回目ほど)、先方の手続きミスで電話が不通に。
数日前から不払いを催促するメッセージが何度も入るので、その都度「すでに払っている」との旨、何度も電話を入れ、担当者から「確認します。問題ありません」との報告を受けているのに、これだ。
最初っから「問題ありません」などという彼らの口癖を信じちゃいなかったが、こう何度も繰り返されると、堪忍袋の緒はぶちぶち切れて当然だ。
マルハン夫妻は激怒の極みである。夫はまたしても、担当者に電話をしている。あんたじゃ話にならん、最早到底信じることもできん、マネージャーの電話番号をよこせと言っているが、どうしても教えてもらえない。マイハニー、ついには訴えるとまで言う。
実際、訴えて然るべきほどの、これまでのいきさつなのだ。これまで、何度、同様のトラブルがあり、同様の電話をかけたことか。
夫が電話を切ろうとしているところ、わたしも一言いわねばおさまらず、受話器を奪い取り、滔々と苦情を言う。向こうにすれば、うるさいババアとしか思わんだろうが、そのいい加減なサーヴィスに危機感を持ってもらわんことには、どうにも腹の虫がおさまらないのだ。
先だって、夫が出張中にも回線を止められ、わたしがカスタマーセンターに電話をして、あれこれと面倒な手続きをやっていたのだ。出張中に携帯電話が使えなのでは、話にならない。
ぐらぐらと業を煮やした夫は、カスタマーセンターへ、これまでのトラブルの詳細を綴ったメールを送ると同時に、名刺交換をしたことがあるというAIRTEL (Bharti Airtel Ltd.) 副社長の名刺を取り出し、彼にそのメールを転送した。
こうでもしないことには、インドのサーヴィスは改善されぬ! いや、こうしたところで焼け石に水か?
かような次第で、平穏な午後に、一時、嵐が吹き荒れたものの、再びわたしは読書に、夫はTVにてクリケット鑑賞(またかい!)に戻る。
『あかんべえ』の下巻も読み終える。亡者を描いた、非常に興味深い本だった。わたしたちは、死んだらどこにいくんだろうなあ。と子供の頃と同じようなことを、また思う。
今でこそ、考えないように考えないようにする訓練ができているが、子供の頃のわたしは、過剰に死を恐れていた時期があった。それは何年かおきに、波のように襲って来て辛かった。かなり神経質な子供でもあった。……軽やかに生きるのも、術。
ふと、新居の庭のことが思われ、ガーデナーのことや、庭の雰囲気のことについて思いを馳せるうち、2005年に旅した英国コッツウォルズのことを思い出した。自分のホームページを遡る。ああ、なんてきれいなところだろう。
さらに、ペンシルヴェニア州のロングウッドガーデンの記録も見る。ああ、ここも、本当に美しかった。
そして、自分たちが暮らしていたワシントンDC。カテドラルハイツの、ビショップスガーデンズの写真などを見る。本当に、わたしたちはなんて美しいところに住んでいたのだろう。と、思う。過ぎ去った過去だから、美しく見えるのかしらん。いや、理屈ぬきで、きれいよね。
なのに、早くあの町から脱出したかった。退屈で、飽き飽きしていた。あんなにきれいだったのに。そして、いまはこんなに汚いところに来てしまった。いや、きれいなところもあるけれどね。
一筋縄ではいかぬ人生。
何を求めているのだか。好きで来たのだから、ちょっとくらいは、辛抱せねばね、AIRTELの件など。
さて。ここはインドだ。インドらしい花々と、インドらしい木々とで、イングリッシュガーデンの猿真似などせず、独自世界を作り出したいものである。植物園LAL BAGH界隈には、数多くのナーサリーがある。
近々訪れ、よきガーデナーを見つけ、庭作りの相談をしようと思う。