ではない。自家製パニール(チーズ)だ。2リットルの牛乳を沸騰させ、ライム(インドでいうところのレモン)約4個分の絞り汁を入れてかき混ぜ、漉して作る簡単なチーズである。
今日は、昨日とは裏腹に、仕事の進捗状況が非常に悪く、更には夜、香港から訪れている夫の旧友(インド人)が出張でバンガロールへ来ているとのことで、夕飯に招いたりしたもんだから夕飯の準備をせねばならず、夕方からは食料の買い出しに出かけ、なにかしらてんやわんやな午後。
これまで身内以外に自作のインド家庭料理を出したことがないにも関わらず、メニューはチキンカレーにパラックパニール(ホウレンソウとチーズのカレー)、キュウリ入りのライタ(ヨーグルト)にポテトサラダという、ほぼインドな食卓に挑戦することとした。
なぜだかは、自分でもわからない。
チャパティはまだまだ未熟につき、ライスでお茶を濁すこととする。
料理に関して、それなりに手際のよさを自負してはいるが、インド家庭料理は下準備が面倒だ。トマトをすり下ろしたりタマネギをみじん切りにしたり、ホウレンソウをブレンダーにかけたりと、こまごまこまごま、時間がかかる。
そもそも準備の時間が少ないときに、チーズを一から作ったり、鶏肉をさばいたり、面倒なものを作ろうとした自分が間違っていたのかもしれない。
味見をしたときには、「なかなかかな」と思ったのだが……。
経緯を大幅に割愛する。
アルヴィンドの旧友。会話は非常に弾んだのだが、食欲は、弾んでいなかった。
あまりお腹が空いていないのかな。と思ったけれど、食後のアイスクリームをガフガフと旺盛に食べている様子をみて、胸が痛んだ。「完敗」だ。
どうも、味にパンチが欠けていた。健康的すぎて、退屈な仕上がりとなってしまった。彼には物足りない味だったに違いない。
インド家庭料理、まだまだ精進が必要だ。なおかつ、時間に余裕のあるときにこそ、煮込み料理でもてなすべきだとも思った。
それはそうと、彼はアルヴィンドと同じデリーの高校を卒業した後、やはりアルヴィンドと同様米国の大学に進み、同じ時期にニューヨークに就職し、同じ年にMBAに進み、同じ年に結婚し、同じ年に米国を離れるという似たようなサイクルで以て、現在香港の投資関連会社に勤めている。
近々、日本へ観光旅行へ出かけるとのことで、旅先の話題で盛り上がる。妻はヴェジタリアンらしい。京都で精進料理や豆腐料理を食べるよう勧めた。あと、三十三間堂を強く勧めておいた。あそこは、すばらしい。
結局、深夜0時すぎまで、ポートワインを飲みながら、語り合ったのだった。出張中だというのに、余裕な人である。
彼が帰りしあと、彼が座っていたソファーにホテルThe Taj West Endの鍵(カードキーではなく、旧式の鍵)が置き去られていた。さすが、アルヴィンドの旧友だけある。
つつがなく、部屋に入れただろうか。まあ、特に問題はなかったであろう。
なんだかよくわからぬ一日であった。