上の写真。よく見ていただくとお分かりの通り、まだ「服」になっていません。一枚布に、襟ぐりや袖のあたりが刺繍されていますが、裁断や縫製はこれからです。
インド女性の民族服といえばサリーですが、一般的に着用されている民族服の代表的なものに、「サルワール・カミーズ」があります。
通称「パンジャビ・ドレス」とも呼ばれるこの衣服。サルワール(パンツ)とカミーズ(トップ)、そしてスカートの3点がセットになったもの。
既製品もありますが、上の写真のように「マテリアル」で売られていることも多く、人々は行きつけのテイラーで仕立ててもらいます。
「テイラーメード」と聞けば、なにやら高級なイメージですが、さにあらず。あらゆる場面で「手作業」が息づいているインドでは、街角にもテイラーが点在し、貧富の差を問わず、自分にぴったりの衣類を作ってもらうことができます。
インドの女性たちは、たとえ低所得者層であれ、おしゃれに対して敏感です。わが家のメイドのプレシラも、覚えきれないほどに毎日異なるサルワール・カミーズを着て出勤します。
間違いなく、わたしよりも服を持っています。
テキスタイル、職人仕事、共に安価なインドでは、工場で量産されるTシャツなどよりも、テイラーメイドの衣類の方が安い場合が多いのです。
これは、ムンバイの鉄道駅の朝。カラフルなサルワール・カミーズに身を包んだ女性たちが、スカーフを翻しながら颯爽と歩いてゆきます。
スカーフは、後ろから前に垂らすのではなく、このように前から後ろに向けて肩にかけます。すると、風に逆らって歩いても、スカーフが落ちることなくきれいに見えるのです。
たまに左右の長さがずれたりするので、最初は気配りが必要ですが、慣れると楽です。しかし、ショッピングなどに夢中になったりしていると、↓こうなってしまうこともあり。たちまちだらしなく見えてしまいます。
下の写真は、我が母がインドを訪れた際、作ってもらったサルワール・カミーズ。しっかりとした生地だったこともあり、こういう巻き方をしていますが、基本的には「邪道」です。しかしこれはこれで、いい感じといえば、いい感じです。
サルワール・カミーズは、インドの気候に合った、実に快適な衣服でもあります。特に木綿やシルク製は風通しもよく、暑い日にも好適です。
この写真は、移住当初のもの。ローカルの市場で撮影したものですが、買い物のときなどは、すぐに洗濯できる木綿製が重宝します。スカーフは日よけにもなるし、埃を防ぐこともできるし、汗を拭うこともでき、つまりは「大判のハンカチ」がわりです。
これは、アナルカリと呼ばれるもので、韓国のチマチョゴリのように胸元に切り替えがあり、裾に向かってフレアになったシェイプです。裾がキュッと細いチュリダールと呼ばれるパンツと合わせます。
ちなみにパンツは、チュリダールのように膝下がぴったりしたものと、足首までゆったりしたものとがあります。
わたしが着ているのは、比較的「古典的」なデザインです。胸元のデザインが個性的なので、スカーフは右肩にかけて、隠さないように着ています。こういう着方も「あり」です。
アナルカリには、カミーズの丈が短いもの、袖無しのものなどもあります。豪奢なデコレーションが施された「パーティ向け」が多く、若い女性に人気です。
わたしは、インド服と言えば「サリー」を着用する機会が多く、普段着としてのサルワール・カミーズはあまり持っていません。しかし動きやすく、快適でもあるので、少しずつ気に入ったマテリアルを揃えて、仕立てようと思っています。
日本の蒸し暑い夏にも好適! のような気がしますが、いかがでしょう?