南デリーにあるインドで最もラグジュリアスなショッピングモール、DLFエンポリオ。
2009年にオープンしたこのモール。エントランスには高級車が乗り付け、富裕層の姿が見られます。海外の高級ブランドのブティックが一堂に介し、混沌としたインドの市井の風景とは別世界です。
わたし自身は、欧米の高級ブランドにはさほど興味はないため、軽くショーウィンドーを眺めるにとどめ、上階へ向かいます。
上階にはインドデザイナーズ・ブランドやジュエリーショップなど、インドならではの店舗が並んでいるのです。
今日はいくつかのブティックで、今まで目にしたことがないほどの見事な刺繍製品を見ることができました。
ひとつはSUREKHA JAINというブティック。ムスリム(イスラム教徒)の伝統的な技術をいかした刺繍が施されたジャケットやドレスが並びます。ブティックはここだけで、ウェブサイトもカタログもないとのこと。撮影も憚られることから、ご紹介できないのが残念です。
花や植物をモチーフに、カラフルな刺繍糸に加え、金糸銀糸もきらびやかに、ため息の出る美しさが目の前に広がります。どれも著しく高価ですが、その手作業を考えれば納得です。
次に訪れたのは、インド・デザイナーズでもっとも有名なブランドのひとつ、TARUN TAHIRIANI。彼のデザインする刺繍入りのパシュミナが、また見事でした。精緻の極み、ともいうべく刺繍がぎっしりと施されています。
一人の職人が4、5年かけて仕上げた一枚だといいます。そういう作品(もはや商品とは呼べない)を、手で触れ、しみじみと眺められるだけでも楽しいものです。もちろん店では、「買うつもりで吟味している」という雰囲気を保つことが大切です。
さて、最後に訪れたドバイ拠点の店、MIRIでは、見事な刺繍に興味を示し、カタログの所在を尋ねたわたしに、マネージャーが「写真を撮っていいですよ」と言ってくれたので、撮影させてもらいました。
インドでは、商品をコピーされるおそれがあることから、写真撮影は禁止されている場合が多いので、写真を撮ってもいいと言ってくれるのには驚きました。彼曰く、
「これは、誰にも真似できませんから」とのこと。おっしゃる通りだと納得します。
その薄さから「ペーパーワーク」と呼ばれるそれは、ぎっしり刺繍されているにも関わらず、軽く、しなやかです。
ご覧の通り、裏面(写真左側)の処理も丁寧で、本当に見事な一枚です。手に取って肌触りを確認したり、羽織ってみたりして、品質を確かめます。
ストールとしてではなく、額に入れて壁に飾ってもいいくらいです。日本円にして数十万円。アートだと思えば、決して高くはありません。
このほか、この店には「カーペット作りの手法を生かしたストール」などもあり、いずれも見事な作品ばかりでした。
無数にあるインド手工芸の美。ごくごく一部しかご紹介できないのが残念なほどです。