数日前の月下美人は、本当に、心に深く刻み込まれる美しさだった。一晩しか咲かない、その短すぎる命がまた、美しさ、有り難みを強調する。
さて、今週締め切りの原稿2本。前半に仕上げて後半はフリー、と行きたかったのだが、月曜早々、不毛な想念に囚われ、集中力低下。気分を変えて映画を観に行くことにした。
というか、気分を変えるも何も、最初からやる気がなかったのだが、そんな話はさておき、取り合えず、という感じで観に行ったのはSEX AND THE CITY 2。
月曜の午後、ということもあってシアターはがら空き。4、5組の若いカップルと、1組の家族連れだけがちらほらと。
HBOでこのドラマが放送されていたころ、自分がマンハッタンに住んでいたこともあり、また主人公の女性たちが同世代ということもあり、そこそこ楽しみつつ、これまでのシリーズも観てきた。
しかし、楽しんでいるからといって、共感するとか、と問われれば、否。好きか、といわれても、むしろ好きではないかもしれない。
そもそも女友だち4人が常に密着しているということ自体が、わたしの人生からはほど遠いシチュエーションである。
恋愛の、ライフの、一部始終を、友人らと相談し合うなど、とても考えられない。
そんな話はさておき、今回の映画は、前回にも増して、「なにがなんだか」。という感じ。コメディとして、ファッションや舞台をエンターテインメントとして楽しむ、という程度にとどめておきたい気分である。
個人的には、突っ込みどころ満載だが、そして突っ込まれることをを狙っているのだろうが、ともあれ。
サマンサのような若作りほど、恐ろしいものはない。むしろ「老けを強調する」ということを、しみじみと思ったのであった。
さて、昨晩は久しぶりに、BEC (Bangalore Expatriate Club)のイヴェントに参加した。世界各国から赴任してきたバンガロール在住駐在員の会である。アルヴィンドとわたしも、一応米国からの赴任者、ということで会員だ。
さて、今夜の企画は「インディア・フェスティヴァル」。ドレスコードはインド服だ。
週明け早々火曜日であることに加え、ワールドカップの最中。出席者は50名程度と少なめであったが、それでもインド音楽あり、ダンスありの、賑やかな宴となった。
ところで夕刻。UBシティで打ち合わせの夫と合流して帰宅すれば、すでに開場の時刻。時間にルーズなインドとはいえ、あまり遅くに参上するのもなんである。
急ぎ、身支度をする。夫は一張羅のシェルワニを着用。わたしは刺繍入りの白いサリーか、ピンクの絞りサリーか、赤いレンガ・チョリ (Lehnga-Choli)か、いずれの衣裳にするか決めていなかった。
夫に、
「白とピンクと赤、どれがいい?」
と尋ねたら、赤がいいというので、レンガ・チョリを着用することにした。レンガ・チョリとは、サリーとは異なる、ブラウスと長いスカート、そしてスカーフの3点セットのドレスである。
これは、多分「若い女性の着るドレス」だ。
結婚式の際、、超ド派手なレンガ・チョリを花嫁衣裳とする人も多い。
実のところ、年配の女性が着ているのを見たことがない。もっとも、インド人女性の多くは、結婚するとたちまち肥満し、力士並みの胴回りとなるため、着用できるスカートが制限されるという理由もあるだろう。
わたしはといえば、試着をするとたいていがぴったりサイズ。お直し不要。つまり、年齢は別として、レンガ・チョリをぎりぎりに着てもよい胴回りなのだと自分で判断している。
日本では絶対に着れないけれど。
いやインドでも、インド人の集うパーティではいい加減、控えた方がいいかもしれない。
さて、久々に着用したところ、夫がわたしの腹回りを見るなり、眉間にしわを寄せる。
「ミホ、アグリー(醜い)! お腹を隠しなさい!」
ア、アグリーとはこれいかに!
典型的中年インド人な「メタボ体型」のあなたに言われたくないわい! と思うものの、気持ちはわかる。
わかっている。わかっていますとも。遠目ではっきり見えないのをいいことに、厚かましく写真を載せたりしているが、そりゃあもう、近寄れば、年相応にあれこれ、アグリーだ。
腕は「イルカ」なんだから、いっそウエストも「イルカ並み」にピチピチすべすべだったらいいのだが、まあ、そううまい話はない。
しかし、どうせ会場は薄暗いし、インドじゃ腹出しは一般的だし、いいじゃないのたまには、と、着替えるつもりもない。今夜は、サマンサ状態だ。
慌てて出てきたため、ストールの巻き方を間違ってしまった。正しい巻き方は、こちらの「キレイブログ」に載せている通りだ。わずか2年半前だが、今よりかなり若く見えるのは気のせいか。気のせいということにしよう。
さて、そんな話はさておき、今日の目玉はインドの伝統的なダンスの披露であった。
感情を、表情と仕草で表現するその方法、踊りが伝える森羅万象、そのあれこれを、ダンススクールの師匠であるヴィジャヤンティが解説してくれる。
実はそもそも、この解説の時間というのは設けられていなかった。「場つなぎ」として師匠が即席で披露してくれたのだ。
というのも、踊りに使用される曲が入ったCDが、コンピュータに「飲み込まれた」状態で、コンピュータが故障、取り出せなくなってしまったのだ。
8時半からダンス開始のはずだったが、いつまでたっても始まらない。飲んだり食べたりを先に始めていたので不都合はなかったが、ダンスが見られないのは残念だし、せっかく出番を待っているダンサーたちも気の毒だ。
飲み込んだコンピュータがMacBookだというので、なんらか助けられるかもしれないと手伝いに行ったら、コンピュータは一度解体された模様で、電源すら入らず、むしろ「状態が悪化」していた。
これはもう、駄目なのでは……と、主催者も諦めかけていたところ、機転をきかせたメンバーが師匠に提案。
最終的に師匠は、各地(各国)の生徒を当たり、連絡のついた生徒から、音楽のデータをメールで送ってもらったのだった。
その発信元は、なんとイスラエル。地球の狭いことといったら。
そんなこんなでダンスが始まったのは10時半。
「明日は仕事だから、10時半には帰るよ」
と言っていた夫だが、ここで帰るわけにはいかない。新しいワインをついでもらい、ダンスを鑑賞する。
このダンスは、アンドラ・プラデシュ州発祥のクチプディ(kuchipudi)と呼ばれるもの。表情、動き、音楽、いずれをとっても興味深い。
インドの伝統的なダンスを習いたいと思いつつ、瞬く間に数年が過ぎた。
いつムンバイ二都市生活再開かわからぬ身の上。
これまで通り「習い事」は極力避けてきた。
しかしこの際、取り敢えず、やりたいことはやりはじめるべきだろうかとも思う。
さて、ダンスのあとは、著名画家の作品のチャリティオークションがあり、その後は、「ベスト・インディアン・ドレッサー」の発表。
なんと、このわたくしが選ばれたではありませんか!
派手な服を選んでおいてよかった。
賞品にスパのトリートメントのクーポンをいただいた。しかしながらそのトリートメントが、「リンクル・アイロン・フェイシャル」、つまり「顔のシワ伸ばし」というところが、痛い現実だ。
もう少し夢を見させてくれよ、という話である。
夫はといえば、妻が選ばれてご機嫌だ。アグリーな腹のことは、この際、忘れた様子。
その後のラッフル(くじ)で、自分も同じスパのマッサージ券が当選して、よりいっそうのご機嫌だ。
帰宅するや否や、重量感ある衣裳を脱ぎ捨て、シャワーを浴びて、即就寝したのだった。
ちなみにレンガーチョーリー。本当に重いのだ。
3キロ近くある。
重い上に、表面の細工が粗くて、肌に当たると痛い。
痛い上に、ブラウスがピッチリしていないと着崩れ感があるので、苦しい。
重い、痛い、苦しいの三重苦を乗り越えて、「顔のシワ伸ばし」券、ゲット。
悪くない。
いい夜だった。
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