毎朝、新聞をめくるときに欠かさず目を配るのは小さな広告。ムンバイに住んでいたときは、目の前にワールドトレードセンターがありましたので、イヴェント情報を確認せずとも各種展示会に赴くことができました。
しかしバンガロールでは、情報を持っていなければ、どこでなにが起こっているのかわかりません。Time Out Bengaluruという情報誌も便利ですが、新聞の方が、気になるイヴェントが見つけやすいのです。
ちなみにTime Outは、ロンドン発の、エンターテインメント情報誌。ニューヨーク在住時代も愛読(というか活用)していました。インドにもあるんですよ。
さて、先週末、市内2カ所でテキスタイルの展示会が開催されるとの広告を切り取っていました。開催期間が過ぎてしまわないうちに……と、予定が開いていた今日、「布巡りの一日」を楽しむことにしました。
まずはINDIAN HANDLOOM CLUSTERSと呼ばれる組織の展示会へ。
先月の西日本新聞『激変するインド』のコラムで、インドの手工芸について紹介した際に記したのですが、この展示会もまた、政府関連機関がスポンサーとなっています。
インド各地、20カ所で生産されている「手織物」が展示即売されているとのこと。さほど規模の大きいイヴェントではありませんが、見たことのない地方のものが出展されているようなので、足を運びました。
■今月の西日本新聞:激変するインドは「手工芸品」の話題(←Click!)
あれこれとご紹介したいところですが、それではきりがないので、個人的に気に入ったブースをピックアップ。まずはここ、ムバラクプール (Mubarakpur)の絹織物。
艶(あで)やかで艶(つや)やかで、手触りの滑らかな絹。金糸とともに織りなされる布は、インドではよく見られるもの。
にもかかわらず、色合いや柄、デザインなど、心の琴線に触れるものと、そうでないものとがあり、まさにそれこそが「好み」なのだな、と思います。
インドに来る前は、「布の好み」など、よく考えたこともなかったのですが、ここに暮らし始めて以来、無数の布を日常的に目にする生活。徐々に審美眼が養われ、自分の好みが浮かび上がって来るようになりました。
最初のころは、あまりにも選択肢が多すぎて、自分がいったい、どんな色が好きで、どんな柄が欲しいのか、わけがわからなくなっていたものです。
店頭でインドの女性たちが、的確に自分の好みの布を選ぶ様子を見て、心中で「アメイジング!」と、いつも賛嘆していました。
おじさんが広げてみせてくれているのは、サリーではなく、サルワールカミーズ用の布。これでトップ(チュニック)とボトム(ズボン)が作れるようになっています。
しかし、テイラーで自分の好みにデザインしてもらうのも、もちろん可能。アレンジによって、布が異なる表情を見せてくれるはずです。
こちらはイカット (IKAT) と呼ばれるインドの絣(かすり)。絣と言えば、福岡出身のわたしは「久留米絣」を思い出します。
藍色の地に白い模様の絣は、「おばあさんの着物」だと、子どものころのわたしは感じていました。ですから絣模様を見ると、どうしても「年配の人に似合う柄」という印象を受けてしまいます。
しかし、こんな鮮やかな色合いを見ていると、年齢のイメージなど吹き飛ぶほど、自由な気分にさせられます。
こちらは、ビハール州のバガルプール (BHAGALPUR)のブース。色合いが渋く落ち着いていて、上品な印象です。タッサーシルク (Tussar Silk)と呼ばれる絹で、素朴な風合いです。
近くで見ると、絹糸が均一ではなく、ロウシルク(生絹)で織ったような風合いです。これもまた、上品な風合いを醸し出しています。
このあと、もう一つ別のエキシビションへ赴き、コマーシャルストリートでテキスタイルショップを彷徨したのですが、そのときの記録は……また別の機会にご紹介します。