そこで頭を痛めるのが、服装。一年間を通して、涼しいか、暑いかのバンガロール。衣替えの必要がなく、冬物衣類もほとんど不要。年中同じような服装で、メリハリがありません。
いつしか古い冬物などは処分してしまい、手元には少ししかありません。
少なくとも年に2回は、米国を中心に欧州などの「肌寒い海外」へ出るのですが、いつも着用しているのは、8年ほど前に米国で購入したレザージャケット。
冬物の防寒具は、ロング丈のコートと、ダウンジャケットも1着ずつ、一応は持っているのですが、旅には適応性の高いレザージャケットばかりを選んでいました。
その無難なレザージャケット。お世話になっておきながら失礼ですが、いい加減、飽きました。
なにしろ、過去の旅の写真を見るたびに、外で撮影されている自分は同じジャケットばかりを着ているのですから。
「これしかないのか!」という感じです。まあ、実際そうに違いないのですが。
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そんな次第で、今日はレザージャケットを求める旅に出ました。革製品を扱う店は、バンガロールにも少なくありません。
革製のバッグをオリジナルで作ってくれる店などもあり、駐在員のご夫人たちにも人気です。しかし、レザーのジャケットについては、これまで探そうと思ったことはありませんでした。
もちろん、売られていないわけではありません。見かけたことはありますが、品質やデザインのよいものには、遭遇したことがありませんでした。
さて、インターネットであれこれと検索したところ、ローカルの繁華街、コマーシャルストリートにレザーショップが集中しているようです。
それも1階(日本でいう2階)に店舗があるところが多いとの情報が得られました。普段、上を向いて歩いているわけではありませんから、目に留まらなかったのかもしれません。
なにしろ喧噪の道路。足下を見て歩かねば、自動車のタイヤに足を踏まれてしまいます。足下に注意を払いつつ、上を向いて歩きます。
2軒ほどの店に立ち寄りましたが、どうにも質がよくありません。デザイン、皮革の質、双方ともに、それなりにまともであれば、妥協するつもりだったのですが……。
目星をつけていた店が期待はずれだったので、諦めて帰ろうかしら……と思いつつも、何となく「上を見上げながら」歩いていたら……。
妙なレザーファッションに身を包んだ男女のマネキンが! おお! レザーショップです。極めて怪しい雰囲気ですが、取り敢えず入ってみましょう。
薄暗く、細い階段を上がって店内に入ると……。そこは店内、というよりは、倉庫内。とても「店」ではありません。しかしながら、気のいいお兄さんが対応してくれました。
店構えとは裏腹に、なかなかに良さげなジャケットが吊られています。聞けばここは、卸売店で、直営の作業場(工房)を持っており、この界隈のレザーショップにも卸しているのだとか。
彼らのビジネスの大半は欧米のブランドから受注した商品の製造。
ここに置いている物は、海外のブランドの受注を受けた際に、依頼された数よりも多めに作って、自分たちで販売しているのだとか。
それは間違いなく契約違反のような気もしますが、この際、聞かなかったことにします。
希望のジャケットのデザインを伝えたところ、お兄さんは収納棚から、巨大なビニル袋を次々に取り出して、探してくれます。
……と、なかなかにいいジャケットを発見しました。比較的柔らかで軽め、デザインも悪くありません。
着てみるとこれが、わたしにぴったりのサイズ。店内にはろくな鏡がないため、お兄さんに後ろ姿を確認するべく、写真を撮ってもらいました。
希望通り、後ろにスリットが入っていて、身体にフィットしたデザイン。
サイズが合わなければ、数日で身体に合うサイズのジャケットを作ってくれるとのことでしたが、その必要はありません。
ボタンの開閉もスムースにできますし、着心地もよく、これはいいジャケットを見つけました。積み重ねられていたせいか、シワが気になりますが、お兄さん曰く、
「これは本物の革ですから、高温でアイロンをかけてもノープロブレム。当て布をしてから、かけてくださいね」
とのこと。少々心配ではありますが、隅の方から試してみようと思います。というか、着ているうちに、伸びてしまいそうな気もしますが。
と、お兄さんが、スウェードのジャケットを勧めます。
「これはフランスのブランドですよ」
とタグを見せてくれます。見たところ、フランスではなくイタリアのようですが、この際、どちらでもいいという話です。
試しに着てみたところ、これがまたぴったり!
後ろのデザインも、ステッチの具合がなかなかにおしゃれです。インド的に派手なパシュミナを巻いてもよく似合いそう。これはもう、お買い上げ! です。
気になるお値段……ですが、レザージャケットにしては、書きたくないほどリーズナブルなので書きません。
敢えて言えば、わたしがこれまでお世話になった件のジャケット(ワシントンD.C.郊外のファクトリーアウトレットで購入)の半額、でありました。
バンガロール。まだまだ未知の世界がたっぷりです。
KARNATAKA LEATHER CRAFTS
#91, Commercial Street, 1st Fl.
★以下は、日本帰国中のスナップ。2着とも、大活躍でした。