インドで初めてサリーを買うという友人に付き合って、昨日の午後は「サリー・ハンティング」へ。
サリー。その奥深く、広く、無限と思えるほどに選択肢のあるサリー。
その中からお気に入りの一枚を選ぶということは、本当に簡単なことではなく、まさに「一期一会」です。ということは、これまでも記してきました。
機械で作られた工業製品としてのサリー、化繊のものなども豊富にあります。
しかし、せっかく買うのであれば、シルクや良質の木綿などを素材とし、手織り、手刺繍など「職人技」が生きたものを選びたいもの。
日本人の中には、滅多に着る機会がないから……という人も少なくないようですが、パーティ用の洋装を買うことを考えれば、決して高い買い物ではありません。
5メートルもの1枚布に広がる、あたかも芸術品のごときサリーを、数万円で入手できるというのは、むしろ安いくらいだと思われます。
帰国後も無駄にしたくない……というのであれば、後に布を再利用しやすい色柄を選ぶのもいいでしょう。
なにしろ5メートルもあるのですから、クッションカヴァーやテーブルクロスにしたり、スカートやブラウスに作り直したり、子どものドレスを作ったり……と、いかようにでもアレンジできます。
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さて、そもそもテキスタイルに関心があり、日本の着物に詳しい友人は、サリーは初めてとはいえ、「持っていてうれしくなるような布」が欲しいとのこと。
特にわたしが持っている「絞りのサリー」が気に入ったらしいのですが……それは非常に難しい相談です。
というのも、バンガロールでも絞りのサリーを売る店はあるのですが、品揃えはいまひとつ。
わたしがこれまで購入した絞りの大半はムンバイの専門店、それから行商の職人一家からの直売だからです。
同じ技法を使ったサリーでも、色の組み合わせ方、絞りの精密度、デザインの洗練度によって印象が大きく変わります。
一歩間違えると、日本の子どもの浴衣の帯、兵児帯(へこおび)のように見えてしまうのです。というか、そのものになってしまいます。
まずは絞りの店ではなく、こぢんまりとしたデザイナーズブティックを訪れました。
この店は、バンガロール拠点のデザイナーが経営しているらしく、伝統的な技術を現代的なデザインに融合させたサリーが揃っているとのこと。
実は前日にウェヴサイトでサーチした結果、見つけ出した店で、わたしも訪れるのは初めてです。
彼女とはランチの待ち合わせをしていたのですが、その前に様子を見に立ち寄ったところ、たちまち気に入りました。
彼女に似合いそうなサリーも見つけました。いきなり自分で試着し、鏡に向かって「自己撮影」してみたりして、すでに気分が盛り上がっています。
ランチをすませ、コーヒーを飲み、すっかりくつろいで……いる場合ではありません。さあ、サリー・ハンティングの開始です!
想像していたよりもずっと、丁寧なワークでしかも上品、数が少ないながらも「すてき!」と思えるサリーがいくつもありました。
工夫のあるブラウスを着ることで、サリーが見違えるように映えることもあります。印象も、古典的、モダンと、ブラウスのデザイン一つでアレンジが利くのが魅力。
棚の一番上にひっそりと、しかし存在感たっぷりに光り輝いていた一枚。これ、素敵じゃない?!!
幸い、友人はこの店のサリーがとても気に入ったようで、数軒を巡る予定だったものの、取り敢えずここで「お気に入りの一枚」を見つけることができました。
無数のサリーを見て来た「サリー歴5年」のプチ先輩からみても、そのサリーはとても素敵な色合いで、日本の着物的な繊細さもあり、クオリティに比して値段もお手頃。
なにより彼女にとてもよく似合っていました。
彼女があれこれと試す間、わたしもついつい、あれこれと着てしまいました。シャツを脱ぎ去り、最早タンクトップ姿で挑みます。これがまた、楽しいものなのです。
ジーンズの上からなので、腰回りがもこもことしていますが、これは非常にシルエットがきれいなサリー。欧米でのパーティなどでも自然に着こなせそうです。
オレンジとゴールドのコンビネーションが鮮やかに、光のあたる角度によって光沢が変わるサリー。刺繍のワークも非常に丁寧で、これまた素敵なサリーでした。
何枚ものサリーを身にまとい、あれこれと品定めし合うことの楽しさ。店の人も気長に付き合ってくれます。
それにしても、一軒目で「これ!」というサリーに出合えた彼女、かなりラッキーだったと思います。
このあと、近所にあるジャイプール発の絞りのサリー専門店へ。
この店の商品は、色合いがかなりヴィヴィッドすぎると同時に、光り物がゴテゴテとついているものが多数で、日本人のテイストには合わない印象です。
とはいえ、取り敢えず彼女に、絞りは難しいということを「納得」してもらうべく、足を運びました。
やはり、「これは違うね」ということで、次の店へ。
今度は市街へ出て、大型のサリー専門店へ。一応、いろんなヴァラエティを見てもらっていた方が、今後のためにもなると思ったのです。
このときには、すでに疲労困憊の二人。サリーを選ぶのには、かなりのエネルギーや集中力を要します。
しかしながら、店の人に(敢えて頼んで)甘くてミルキーなチャイを出してもらったところ……俄然元気に。
またしても、試着です。
結局ここでは、幸か不幸か、値段とクオリティとのバランスを考えた場合、先ほど彼女が買い求めたものに勝るものは、すぐには見つかりませんでした。
とはいえ、「手刺繍のものを」「高品質の上品なものを」と店の人に主張したら、奥の間へ連れて行ってくれて、こんな精緻な手仕事のサリーを見せてくれました。
あ~。サリー。本当に、本当に、尽きなくて魅力的!!
結局、この店では、チャイだけをいただいて帰る事態となりましたが、いい勉強をさせてもらいました。たまに利用している店なので、許していただきましょう。