本日締め切りの『激変するインド』の原稿は、テロの話題。テーマがテーマだけに、かなり神経を使う。
いつも思うのだが1200文字、つまり原稿用紙わずか3枚の中に、伝えたいことを凝縮するのは簡単ではない。
あらかじめ、インドに関する知識を持っている人が読者であれば、説明を省くこともできるが、新聞読者の大半は、インドの予備知識がなく、多分関心もない老若男女。
ブログでは書き放題で「推敲する」という作業をほとんどやらないが、文字数が限定された仕事の原稿を書くことは、当然そうはいかない。毎回、訓練のようでもある。
さて、原稿はできたものの、適当な写真を持ち合わせない。テロの話題に触れつつも、異教徒の共存について言及しているので、それを象徴する写真を紹介したい。
モスク(イスラム教寺院)とヒンドゥー教寺院が隣接しているところを1枚に収めるのがよさそうだ。多分、ローカル商店街のコマーシャルストリートが適しているだろうと思うが、1枚に収まるかどうか、記憶が不確かだ。
地図を広げてみる。改めて見ると、町中に、いかに寺院や教会やモスクが多いかということに気づく。街の至るところに、在る。
この国の人々が、いかに宗教に帰依し、宗教に根ざした日常を送っているのか、ということが、地図を眺めるだけで伝わって来る。
目的地はやはりコマーシャルストリートにした。昼ごろ家を出て、KFCでお気に入りのジンガーバーガーでも食べて、それから撮影に向かおうと準備をする。
と、その矢先、友人からメール。
先日のサリー講習参加者3名で、サリー店巡りをするとのこと。その前にローカルのミールス(定食)ランチを楽しむと書いてある。
ミールス。久しぶりに食べたい。
というわけで、速攻、電話をすれば、目的地は我が家とコマーシャルストリートの間あたり。急遽ランチに合流させてもらうこととなった。
で、前置きが長くなったが、上の大きな写真がその店だ。Ulsoor Lake沿いを走るとき、その山小屋風の外観が目立って気になっていたのだが、なんの店だか知らなかった。
聞けば、タミルナドゥ州のChettinadという土地の料理らしい。それがどこなのかもさっぱりわからんが。
山小屋風と思っていたが、近寄ってみると「サンタフェ風」にも見える。(本気か?)
サンタフェ風、即ちアドビ(アドベ)風、である。
ふふふ。
おわかりいただける方には、おわかりいただけよう。
すみません。
ちょっとやってみたかったんですよ!
ちゃんと服着てるだけ、許して。
(当たり前だ)
せっかくだから、本物のサンタフェの写真も参考までに載せておこう。2005年にアメリカ大陸横断ドライヴをしたときのものだ。
ね、上の写真と、なにげに、似てない?
なんかもうこのごろは、脳内の判断装置が破壊され気味かもしれん。
ところでこの建物。
サンタフェで宿泊したホテルだ。
小高い丘の上に立つTHE BISHOP'S LODGE。本当に、すばらしいホテルだった。
そういえば、サンタフェには日本風の温泉もあった。トレッキングルートもあったし、町中にはアートギャラリーもたくさんあって、いい場所だったなあ。
……と、話題を現実に戻そう。
メニュー。読めるがわからん。「カイ・カリ・クルマ」とか、「プーンドゥ・コズンブ」とか言われても、何の料理やらさっぱり。
もっとも定食のミールスを頼む予定だったので、早急に理解する必要はなかったのだが、ウエイターのおじさんにあれこれと尋ねる。
わたしはノンヴェジタリアンのミールスを頼んだ。ヴェジのミールス60ルピーに対して120ルピーと高級感あふれているが、240円くらいのものである。
料理は、想像以上においしかった。ローカルの店では、主にヴェジタリアンのミールスが主流だということもあり、稀少な印象だ。
高級ホテルのインド料理レストランにもミールスはあり、かような場所ではノンヴェジはもちろん、シーフードミールスなどもあるが、最近ではもう、値段は軽く10倍。おいしくて当然という話である。
この店、かなり気に入った。道路沿いのオープンエアということもあり、力一杯、埃っぽいが、まあ埃もスパイスのうち、などと思える人にはお勧めである。
今度はこの店自慢のシーフード料理に挑戦してみようと思う。
さて、コマーシャルストリートでは、かなり理想的な写真を撮ることができて満足。紙面には違うものを使うが、左上の写真が同じ被写体だ
ヒンドゥー寺院とモスクが見事に隣接している。右上のうなだれたロバ、いやウマ、いやラバ? は、見るからに寂しげで物憂げで、生きているのが辛そうだった。
撮影を終えたあと、歳月とともに裏寂れる一方のローカルなショッピングモール、SAFINA PLAZAへ。ここのサリーショップをリサーチしておきたく、数軒、巡る。
オリッサ産テキスタイル専門店。このごろは絣(かすり)にも詳しくなったので、ちょっと足を運んでみる。
「縦横絣(ダブルイカット)のサリーはある?」
なんて尋ねると、店主のおじさんは、うれしそうに棚から出してくれる。
すかさず裏返して、ダブルイカットならではの糸の処理をチェックしたりなんかするともう、
「ずいぶん、お詳しいんですね。どうしてですか?」
などと尋ねられる。店の人との会話を通して、新しく知ることも多く、サリーを見るということは、本当に奥深い。
「これが、オリッサの絣のシンボル、魚のモチーフですね」(右上写真)
などと言おうものならもう、オリッサのおじさんもご機嫌だ。ちなみにこのサリー。今まで見た絣の中でも、かなり繊細な仕上がりであった。
あくまでも「向学のため」に立ち寄った限りで、買うつもりはなかったので、「また来ます」と言って去った。
去ったが今こうして見るに、このサリー、かなりいい。特にブルーの部分の紋様がすばらしい仕上がりだ。
絣の技術、特に縦横絣(たてよこがすり)は、本当に難しいらしく(シルクフェアで説明を受けたがわからなかった)、日本とインドとインドネシアのとある島の3カ国でしか継承されていない技術だと言う。
ちなみに絣はインドが発祥の地で、日本にもたらされたとのことである。
ああもう、こうして書いているうちにも、このサリーがすばらしいものに見えて来るから困る。しかも、さほど高くないから困る。インドのテキスタイル。毎度、やられっぱなしだ。
明日、自分がまた、SAFINA PLAZAへ行ってしまいそうで、怖い。