昨日は久しぶりにバンガロール東部郊外のホワイトフィールドのソナリの家へ。新居の椅子などのカヴァーに、彼女が経営するSpring Rhythmのファブリックを使いたいと思い、訪れたのだった。
彼女と初めて出会ったのは10年以上前。バンガロール市内に店舗と工房があり、作業を見学させてもらったこともあった。一般的なハンドブリックに比して、色合いが落ち着いているせいか、日本人にも根強い人気がある。
ロックダウンの少し前に市街の店舗を閉じ、予約制で自宅をショールームに移行したという。この「リアルな空間」が、とてもいい。お店もすてきだったが、こちらの方が「生活に取り入れている様子」がよくわかる。
パンデミックを機に、仕事の仕方が完全に変わったという彼女。今までのようにあくせく動かず、リモートが可能なところは速やかに移行し、余裕ができた時間を有効活用する。本当に同感だ。
二人して、昨今のインドの若い世代の「仕事の早さ」と「創造性の豊かさ」「フレキシビリティ」についても話が及ぶ。彼女の31歳になる御子息も、AI関連の仕事をしているとのこと。そういう話になると、尽きず。
彼女とは面識はあったものの、実は、話をするのは初めてのこと。若い頃は日本のソフィア(上智)に2年ほど在籍経験があり、1980年代にはムンバイの日系企業で勤務していたこともあるという。
インテリアデザインなどさまざまな仕事を手掛けたあとに、このブランドを立ち上げた。自らデザインのコンセプトを考える。厚手から薄手まで、風合いのいい木綿に施されたプリントは、落ち着きがあって魅力的。
彼女はまた、IKEAとのコラボレーションで、同社の椅子やソファーにぴったりのカヴァーを作ってもいるという。すっぽりと被せるだけ、洗濯もしやすいのが魅力だ。
ソファーカヴァーだけでなく、カーテンやスクリーンも、使いたくなってきた。諸々、要検討である。
IKEAといえばスウェーデン。テーブルの上に置かれたガラスの花瓶に思わず見入る。30年前、スウェーデン南部のガラス王国(カラマルとベクショーに挟まれた一帯)をドライヴ取材した。そのときに訪れたガラス工房で、気に入って買ったワイングラスと同じ彩色の花瓶だったのだ。
たちまち、妖精が住んでいても不思議ではないと思える、やわらかに麗しい田園風景が思い浮かぶ。
彼女はスウェーデンにも住んでいた時期があったという。ガラスの話ひとつをとっても、思い出が尽きない。
新居のテーマは、我が人生のテーマともなっている「不易流行」。伝統と新しさを共存させながら、「真に」サステナブルに心地のよい空間を育もうと思っている。
一隅には、日本の伝統工芸品などを少しずつ買い集めて展示し、インドの友人らに見せる、小さなミュージアムのようにできればとも思っている。
パンデミックで諸々遅れてきたが、ゆっくり考える時間が与えられたというふうに、今は改めて、そう思う。