1947年のインド・パキスタン分離独立以来、社会主義的政策をとってきたインドが経済の自由化を図り、市場を開放したのは1991年。そこからじわじわと「英国統治時代から継承された文化とは別ルートでの」欧米文化やライフスタイルが流入。
2000年代に入ってからは、ITやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)をキーワードにインド市場が世界に注目され始め、わたしがインドに移住した2005年あたりから、インド経済は急成長をはじめた。
わたしはインド移住当初から、異なるクライアントの、さまざまな分野においての市場調査に関わってきた。その中で学んだことは、ただただ、インドの多様性と広さと深さ。知れば知るほど、知らないことが多すぎて、ため息をついたり、途方に暮れたりすることの繰り返し。
ここ数年、調査の仕事は激減したが、それでもトレンドを見る目は以前と同様、開いているつもりだ。
この国を「遊ぶ」のであれば、自由に気ままでノープロブレムだが、誰かに何かを発信する、あるいはビジネスをするとなると、話は別。「今、自分が見えている現象」だけで、物事の優劣あるいは必要性を判断することができない。数千年の大いなる歴史を抱えながら、日本や他の先進国とは異なる形で、独自の変遷、変貌を遂げている側面が多々あるからだ。
必ずしも利便性を尊ばない。人員削減は歓迎されないなど、例を挙げれば枚挙にいとまがない。ゆえに、せめて自分が攻めたい分野に関しての歴史や文化的背景、そして現在にいたる「変遷」を知っておくに越したことはない。
自分としては、結構、高感度なアンテナを張って、この16年間をインドで生きてきたと思う。しかし、どんなに久しくこの国に住んでなお、この国を語るときには、注意深く、謙虚であらねばと心している。「インドは**だ」と語ることは、「欧州は**だ」と語るよりも何倍も、異質の要素をひとまとめにしているということを、肝に命じつつ。
特に昨今の、インドの若者たちのパワーはすさまじく、離れて傍観せねば目が回りそうなときもある。今のインドとは、そういう状況なのだということだけでも、折に触れて、発信しておきたく。
ネット上の情報、ましてや日本語で読めるものだけでインド情報を収集しても、むしろ誤解や齟齬が生まれるということも、注意すべき点だろう。
前置きが長くなったが、たとえばファッションなどのライフスタイルひとつをとっても同じこと。言葉では伝えられないので、今日はわたしが定期購読している雑誌から”VOGUE INDIA”を紹介する。インドの女性誌の代名詞といえば、1959年創刊の”FEMINA”だった。
そんなインドにあって、2006年に創刊した”MARIE CLARE INDIA”や、翌2007年に創刊の”VOGUE INDIA”は、ファッション業界においても大きなターニングポイントだった。インドのCONDE NASTが発行する雑誌(女性誌/男性誌/旅行誌/建築&インテリア誌)を定期購読してパラパラ眺めるだけでも、たいへんな刺激になるし、情報収集の端緒となる。
1ページ1ページが、実に密で、面白い。
今時、印刷媒体は前時代的だと思われるかもしれないが、ともあれ。あくまでもわたしの情報収集先の一つを、シェアする次第だ。ここで紹介している写真。ファッションに関心のある人ならば、食い入って眺めてくれることだろう。