まるで結婚式の会場のような写真だが、さにあらず。先週の水曜日、新物件の着工の儀式(プジャー)に訪れた際の様子である。
約1年前、バンガロール北部郊外、空港からほど近い場所に建設予定の物件を購入した。ゲーテッド・コミュニティとも呼ばれる、広大な敷地内に一軒家が立ち並ぶプロジェクトである。
去年の3月に物件巡りをした際、あらゆる面において一番気に入った、Total Environmentと呼ばれるデヴェロッパーによる、この新規プロジェクトを選んだ。
詳細は、そのときの記録に残しているので、下にリンクをはっておこうと思う。
インドで家を持つということの困難は、インド移住からちょうど1年後に現在の物件を購入し、内装工事などの一切を仕切り、頻発するトラブルに一つ一つ対応するという経験を通して、切に実感している。
その経験を踏まえたうえで、この物件はかなりよいと判断した。もっとも、今あるのは「大地」だけ。ここから、建築の様子を折に触れて目撃できるのは、非常に意義深い。
大まかなレイアウトはもちろん決まっているが、微調整は可能。間取りも自分の嗜好を反映できるのがいい。
現在の家は、内装工事のすべてをわたしと大工との間で行ったことから、たいへんな労力を擁したが、今回はもちろん、デヴェロッパーが入ってくれる。
作り付けの家具や浴室、キッチンなどの備品すべて、彼らが高品質のものを手配してくれるので、その点は助かる。
このデヴェロッパーの最大の魅力は、その名前から察せられるように、環境との調和を重視したエコロジカルな思想があるところだ。
緑がふんだんに配され、庭も広い。
建材の大半は、ソリッドウッド、すなわち天然木が用いられる。またフロアなども大理石や御影石などの天然の石を多用するなど、非常に心地がよいのだ。
過去の記録にも記したが、その様子は、フランク・ロイド・ライトのプレイリースタイルを思わせる。また、緑がふんだんに配された建物などは、スリランカの、ジェフリー・バワの建築を彷彿とさせるのだった。
ここが建設予定地。インターナショナルスクールや乗馬クラブが間近にあり、少し離れたところにはゴルフコースなどもできている。バンガロール国際空港までわずか15分ほどの距離だというところも、魅力だ。
わたしたちが購入した物件は、第一次のプロジェクトにつき、2016年9月には完成予定というが……。物件購入にあたり、このデヴェロッパーを勧めてくれた友人知人らによると、物件の建築に際しては信頼できるが(インドでは、信頼できない不動産業者、開発業者が非常に多い)、工期は遅れる、というのが異口同音のコメントであった。
しかるに、2017年以降を見越しておいたほうがよさそうだ。別に、急いではいないので、きちんと工事をしてくれた方がよい。
会場の一隅では、延々とプジャーが行われている。最後に、オーナーたちが呼ばれ、わたしたちも儀式に参加する。
普段は洋服姿のスタッフだが、このような儀式の日には、サリーやサルワールカミーズなど、伝統的な衣装を身に着ける人が多い。インドでは、いくら時代が変わっても、こうした宗教儀礼は重視される。しかも、占星術上の「良き日時」、即ち Auspicious day が選ばれるため、この日のプジャーも水曜の午前中という、働く人々にとっては不都合な日時が設定されていた。
プジャーが名目ではあるが、デヴェロッパーのスタッフや未来のご近所さんたちとの交流を図るのもまた、集いの意味合いを高めている。会場では、コーヒーやチャイ、スナックが準備されており、ランチの準備も進められていた。我々は仕事の都合上、1時間程度で退散したが、ゆっくりと過ごして帰る人もいるのだろう。
同じようなコンセプトの物件は、バンガロール郊外のホワイトフィールドや、プネなどにもある。それらの物件の建設を通して得たノウハウ、問題点などを、新規プロジェクトには前向きに反映させてくれるとのことだが、どうなることだろう。ともあれ、問題発生にはすっかり慣れているので、今の家同様、暮らし始めて数年は「家を育てて」いくことになるだろう。
内装工事が始まるころには、わたしもインテリアのプランに介入することになるので、少し忙しくなるだろう。それはそれで、楽しいことではある。
今の家は、市街の中心部にあることから利便性も高く、今となってはこのような広い庭付きの物件を見つけるのも難しいご時世なので、確保しておくつもりではある。が、いずれはこの新しい家が、暮らしの中心になるであろう。
プロジェクトの中でも最も広いスペースの物件を購入した。敷地面積、居住面積ともに、それぞれが約5,000スクエアフィートと、現在の家の1.5倍以上はある。
たった二人の家族にしては、十分すぎるほどのスペースだが、この家は二人だけの家に非ず。
家族や親戚、親しい友人らが常に出入りし、滞在できるような、今よりももっと「気の流れがよい」場所にしたいと思っている。
ミューズ関連のプロジェクトも、いろいろとダイナミックにできそうだ。地下には広いメディアルームがあるので、そこでセミナーなども実施できる。セミナールームとして貸し出してもいいくらいだ。
鉄の棒で土を3回掘り、鍬で土を3回すくい、バターミルクのようなものを、土に3回垂らす。
わたしも、やらせてもらった。これで、きっといい家を育てられることであろう。
2007年に現在の家作りの一部始終を記録した「プチ家作り」のレポートは、後に読み返すと、インドという国の、ある側面を知るための要素が凝縮されていたことを痛感する。
あのたいへんな作業を通して、インドという国への理解が少し深まったともいえる。
あくまでも氷山の一角。少しだけ、だけれど。
今回の家作りに際しては、わたしの役割は限られているし、そこまでの発見はないかもしれないが、それでも「創造すること」は楽しく意義深いものである。というわけで、 今後、折に触れて、家作りに際しての記録を残すことになるだろう。
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