1986年。35年前、20歳の春休み。発作的に描いた2枚の曼陀羅。
大学の寮から帰省し、実家で過ごしていたある日。実家に掛かっていた曼荼羅の絵を見て、自分も描いてみたくなった。部屋にあった、高校時代の絵具や筆、画用紙を使い、アルバイトの合間を縫って、わずか数日で2枚描いた。
1枚目は、ほとんど模倣。ただ、自分の名前を「隠し絵」のようにして紛れ込ませた。先日の『アンベードカルとインド仏教、佐々井秀嶺上人』のセミナー動画で、その写真を紹介した(動画では19歳と言ったが調べたら20歳のときだった)。すると、ご覧になった方から、曼荼羅に感銘を受けたとのメッセージをいただいた。
動画で紹介した1枚は、実家に飾られている。もう一枚は、手元にあるはずだ。今朝、クローゼットを開いて久しぶりに発掘、しみじみと眺めた。描いた当初は、暑苦しい画になってしまった気がして、あまり気に入ってはいなかった。しかし35年ぶりにじっくり眺めると、かなり感慨深い。
当時のわたしは、その半年前に初めて海外旅行を体験、1カ月の米国滞在した直後で、感性が炸裂していた。それはこの年、大学祭実行委員長を引き受けて、準備、実施するまで続くのだが、まさに若い力が漲っていたころだ。
インターネット台頭以前。絵の素材は印刷媒体を参考にした。
子どものころから自然破壊や環境問題に敏感だったことは過去にも記したが、その思いは多分、常に根底にあったのだろう。
この絵を描く数カ月前の1月28日。スペースシャトルのチャレンジャーが発射73秒後に爆発。飛行士7名が死亡した。その経緯をレポートする『ニューズ・ウィーク』誌の特集にあった写真を見て、スペースシャトルを描いたことは覚えている。
月の満ち欠けは、歳月の流れを表している。その上には涅槃。
しかし右上は、ゴミの山。埋立地に林立する団地に押し寄せる津波……。
昭和40年代、わたしが育った福岡市東区名島、千早界隈。かつては海辺だった場所が埋め立てられ、「城浜団地」ができた。かつて山だった場所が造成されて「三の丸団地」ができた。
その変遷を、この目で見てきた。高度経済成長に伴う環境の歪みを、本能的に感じ取っていた。思えばあれは、野生の勘のようなものだった。
中学2年のころ。大反抗期で成績は急下降していながらも、作文の宿題はしっかりやり、それが福岡県知事賞を受賞、テレビに出演し、朗読した。その作文も、同様のテーマだ。
試験管はそのまま、「試験管ベイビー」を意味している。1978年、英国で初めて「体外人工受精」により、子供が誕生した。今ではごく一般的な治療と生誕の形になっているが、当時は物議を醸した。
ちなみにわたしは卒業論文で「安部公房」を取り上げたのだが、彼は1977年に発表された『密会』という作品の中で、すでに「試験管ベビー」という表現を使い、人工授精で生まれた女性を登場させている。
そもそも理系である安部公房の先見の明や世界を見る目には驚嘆すべき点が多々あるのだが、この予見には、今改めて、鳥肌が立つ。
ミツバチのモチーフは、多分、ミツバチがいなくなると、人間の存在が危うくなるという話をどこかで知り、使ったのだと思う。農薬などへの危機感も、わたしの中にあったのかもしれない。嫌な予感は当たり、今やミツバチは減少の一途を辿っている。
そしてリンゴ。当時は、アダムとイヴの禁断のリンゴ=原罪を表すために描いた。しかし、今の世界を席巻しているAppleのiPhoneを予見していた……とは、こじつけだ。
そして、ムンクの叫び。これは、絵の中の人物が叫んでいるのではない。
彼は「耳を塞いでいる」。以下は、ムンク本人が、この絵に言及した一文だ。
「私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。」
自然を貫く果てしない叫び。
35年前には、耳を澄まさなければ聞こえなかった叫びは、今、地球全体に轟轟と響き渡っている。
くどいようだが、先日も紹介したデイヴィッド・アッテンボローの『地球に暮らす生命 (NETFLIX)』。
地球環境を改善するために我々人間ができることが、最後の最後で提案されている。
一人でも多くの人に見て欲しいと思う。
Spring break in 1986. I returned home from the university dormitory. One day, when I saw a mandala painting hanging at my parents' house, I wanted to draw it myself. I painted 2 pieces of them.
The first piece was almost an imitation of the original painting. However, I drew my name as a "hidden picture".
Another one. I opened the closet this morning and searched. I took it out after a long time. At the time I drew it, I didn't like it because it didn't look sophisticated. However, when I see it for the first time in 35 years, I am quite moved.
January 28, a few months before I drew this picture. The Space Shuttle Challenger explodes 73 seconds after launch. Seven aviators have died. I drew this picture after seeing a photo in a special feature of Newsweek magazine reporting the accident.
The phases of the moon represent the passage of time. On top of that is Nirvana.
However, the upper right is a pile of garbage. A tsunami rushing to a housing complex that stands in reclaimed land.
Fukuoka city where I grew up in the 1960s. The former seaside area was reclaimed, the former mountain was shaved, and countless apartment buildings were built.
I have seen the transition with my own eyes. I instinctively felt the distortion of the environment due to the high economic growth. It was like a wild intuition.
The test tube as it is means "test tube baby".
In July 1978 Louise Brown was hailed as the world's first "test-tube baby", born through the fertility treatment IVF. It is now a very common form of treatment and birth, but at the time it was controversial.
I think I used the honeybee motif because I learned somewhere that the existence of human beings would be jeopardized if the honeybees disappeared.
Concerns and a sense of crisis about the use of pesticides may have been in me. My unpleasant premonition was right, and now the number of bees is steadily decreasing.
And an apple. It was drawn to show the forbidden apple = original sin of Adam and Eve. However, I foresaw Apple's iPhone, which is sweeping the world today ... That should not be.
The Scream.
Created by Edvard Munch. He later described his inspiration for the image:
I was walking along the road with two friends – the sun was setting – suddenly the sky turned blood red – I paused, feeling exhausted, and leaned on the fence – there was blood and tongues of fire above the blue-black fjord and the city – my friends walked on, and I stood there trembling with anxiety – and I sensed an infinite scream passing through nature.
The person in the picture is not screaming. He is blocking his ears. The following is a sentence that Munch himself mentioned about this painting.
An endless cry that penetrates nature.
Thirty-five years ago, the screams were still quiet. But now, it's roaring all over the globe.
Please watch this movie. David Attenborough's "A Life on Our Planet". (NETFLIX)
What we humans can do to improve the global environment is proposed at the very end. I want as many people as possible to watch this movie.
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