本日もまた、快晴なり。ここ数日の旅の記録を見返すに、実に起伏に富んだ光景を楽しんでいるなと、我がことながら感心する。同時に、この先こんなにじっくりと日本を旅することは、もうないだろうな、とも思う。
今回、夫が日本は来ることになり、何となく勢いで、決まってしまった九州旅。車がないのは実に不便ではあるが、面倒の副産物もあるのだなということを感じつつ、一日一日が、濃い。
旅を組み立てる過程を楽しめないことには、かなり面倒くさいというのも事実。なにしろ、電車やバスの接続など、ネットがあるので簡単に見つかりそうで、これがなかなか手間取るのだ。今回、この仕事をするのは専らわたしの役目であり、まるでコーディネーターのようでもある。
実は旅の途中、夫が日本から帰国直後に、ニューヨーク本社への出張が決まってしまい、その調整で夫は追われている。幸い、WiFiがつながる公共施設も多いので、同僚や秘書らとの連絡を取り合えているが、夫がそんな調子で、隙あれば自分の世界に没頭しているので、妻は旅の諸々を引き受けねばならぬ。
連絡が取れる、というのは、便利だが、非日常に日常をぐんぐん割り込ませてくれるので、諦めることや逃避ができない。今回は連絡が取れてよかったが、便利故に「真の旅」ができないな、とも思う。わたしとて、こうして毎日、日常から離れられずに、記録を更新したりして。
さて、本日の目的地は、天草。熊本からあまくさみすみ線で三角まで赴き、そこから船で来た天草の松島を目指す。
「あまくさみすみ線」には、休日などに「A列車で行こう」という観光電車が走っているのだが、本日はあいにくの平日。熊本駅のホームのはずれに停まっていた、1両編成のバスのような列車に乗り込む。
車窓からは、最初は右手に海が見えていた。やがて、トンネルを抜けると、緑豊かな光景に。到着間際には、左手に海が見えてくる。
停車駅も、のどかな光景の中にとけ込む、静かで小さなところばかり。
1時間足らずの、のんびりとした列車の旅を経て、三角駅に到着。
三角港のそばには、地元の山海の幸を売る物産館がある。わたしは宇土産の海苔を購入。ランチを軽くすませたいのだが、適当なものがなかったので、蒸しパンとみかん。今日のランチは、手抜きでノープロブレム。なにしろ、きっとすてきな夕食が待っているので。
すました顔をして写真におさまっているが、当然ながら、ボートはぐんぐんと走っており、すさまじい風が吹き付けている。
車掌のお兄さんが撮影してくれた。「タイタニック」をしたくてたまらない衝動に駆られたが、我慢我慢。
途中でイルカを数頭、見ることができた。天草にはイルカがたくさん暮らしているのだ。
出迎えてくれたのは、AYAKOさん! 実は彼女、バンガロールに久しく駐在されている(わたしより1年ほど短いくらい)ご夫妻のお嬢様。バンガロールにも長期で滞在されていたこともあり、ミューズ・リンクスのセミナーにも参加してくれたことがある。月下美人の鑑賞会にも来てくれた。
その彼女が数カ月前に、ここで働き始めたことをFacebookで知り、すてきなところだなあ、と思ってはいたが、まさか来ることになるとは思っていなかった。
結果的には、急な九州旅とルート設定の際に、天草観光が浮上し、さあらば、ということでここに滞在することを決めたのだった。結果的には、この宿が今回の旅のハイライトとなり、本当に来てよかったと思っている。
なにがすばらしいって、各部屋にある露天風呂。本当に最高である。部屋も広々としていて、ともかくゆっくりとくつろげる。2時過ぎに到着したのだが、もう、天草観光は一切とりやめて、このホテルで過ごすことに決めたのだった。
夫が乗り継ぎの香港空港で買って来ていたワインを取り出す。わたしはバンガロールから持参のナッツ類を用意する。なにかと、準備万端である。
彼方に見えているのは雲仙らしい。「雲仙」というその名にふさわしい姿だ。
パノラマ写真など撮ってみた。クリックして拡大してご覧いただければと思う。
わたしたちが滞在しているヴィラ。かつては展望台だったところに建てられていることから、抜群の眺望なのだ。
「天空の船」という名にふさわしく、船の形をしている本館。日没後、早めにレストランへと赴き、夕食を。地元の山海の幸をふんだんに使った「イタリアン」が楽しめるという。
連日、日本料理だったので、久々のイタリアンはすてきな小休止だ。
AYAKOさんが、イタリアのスパークリングワイン(ロゼ)を差し入れてくださった。うれしい。ありがとう!
料理をひとつひとつ撮影するのはいかがなものかとも思ったが、せっかくの思い出なので記録しておこうと思う。
天草産の穫れたて鮮魚のカルパッチョ。これは我々の好物であるカンパチだった。そして右はタコとジャガイモのトマト煮。
本日のポタージュは、多分ジャガイモ。滑らかで風味豊か。そして自家製手打ちのパスタ(フェトチーネ)とラグーソース。牛肉が使われていた。
熊本あか牛ロースのグリル。赤ワインソースがいいお味! そしてデザートはアイスクリームとパンナコッタ……。
という具合に、地元の食材がふんだんに使われた、本当においしいイタリアンであった。料理をクローズアップして撮影しているが、実際には一皿一皿が、上品に少しずつ盛りつけられているので、超満腹になることなく、料理を味わえたのもよかった。
本当に、ここに来て、よかった。
……実は今、すでに翌朝。これからチェックアウトして、長崎へ向かう。なんという短い時間だっただろう。あれこれとしんみり綴りたいところだが、船の時間が迫っているので、これにて失礼。
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