今日の午後は、以前も何度か記した公園、Lal Baghへ出かける。日中は日差しが鋭く、暑さ寒さに弱い軟弱母にはふさわしくないと思っていたのだが、今日は幸い、やや雲が多く、風も比較的涼やかだ。
暑ければ引き返そう、ということで、ふらりと園内を歩き始める。すでに米国時代、大きな木々を見慣れていることもあり、わたしはこともなげに木々の傍らを通り過ぎてしまいがちだが、母にしてみれば、目にする木の一つ一つが、とても大きなものに思えるようで、この町の緑の豊かさに、改めて感嘆している。
公園の、3分の2ほどをぐるりと回ってのち、出口へ向かう。と、炭火焼きのトウモロコシが目に留まった。
もう、すでにご存知の方も多かろうが、わたしはインドの「堅いトウモロコシ」が大好きである。日本のトウモロコシも昔は、軟弱なスイートコーンばかりでなく、この堅いトウモロコシが存在していたのだ。父がまた、このトウモロコシの「愛食者」であった。亡父の血を受け継いだようである。
すでにわたしの「インディアンコーン好き」は、周囲に知れ渡っており、家政夫モハンも、マーケットでは店主が勧める「アメリカンコーン」には首を横に振り、安くて堅いインディアンコーンを選んでくれるのである。
ところで、以前、露店で「蒸したタイプ」のコーンは食べたことがあったが、炭火焼タイプは未体験であった。火が通っているから問題ない。免疫力向上のために、1本買うことにした。7ルピー。激安。塩、マサラ(スパイス)なしの、シンプルな一本を。
あたりには、誰も買って食べる人はなく。そこはかとなく、他人の視線を感じつつ、手を炭で汚しつつ、ガブリとかじれば堅くて噛みごたえ抜群の、なんて美味なるトウモロコシ! このトウモロコシが食べられるだけでも、インドに住んでいる価値があるというものである。大げさである。
帰りしな、園内のナーセリーで鉢植えを買おうと思う。すでに季節ではないのか、我が家の黄色のマリーゴールドが枯れてしまったので、それにかわる黄色い花を求めたかったが、あいにく見当たらず。
ただ、バラの季節なのか、小さな野バラの鉢植えがたくさんあった。白、ピンク、赤……の中から、薄いピンクがかった白を選ぶ。新しい一歩を踏み出す夫へのプレゼントの意味も込めて。
帰路、おしゃれなファッションブティックが数軒、並ぶあたりに立ち寄り、ウインドーショッピングをしたあと帰宅。
夜には、お向かいに新しく赴任してこられた日本人駐在員の方をお招きしてのディナー。日本にいらっしゃる奥様ともども、このブログを見てくださっているとのこと。昨日したためていた母の散文「ハト」について、感想を述べられる。
実は、このアパートメント、わたしたちの部屋には「そこそこ」のハトしか来ないのだが、別棟は猛烈なハト数にて、うるさいやら汚いやら、かなり深刻な状態らしい。
前任者の奥様にも、別棟に住んでいた日本人がハトに耐えかねて引っ越したと聞いていた。お向かいにもまた、ハトがかなり進出してきているらしい。
母を含め、我々は、のんきに情趣に浸っているけれど、実はハト害が深刻なのだという話。
さて、氏はパラック・パニール(ホウレンソウとあっさりチーズのカレー)がお好きとのこと。そのパラック・パニールをはじめ、モハンの作った料理を楽しんでいただいた。
最後に。今日はちょっぴりおセンチな母の散文を。
●母の散文 その4 「会いたい」
インドの公園にて。
焼きトウモロコシを求め、
おいしいと、嬉しそうに食べる
娘の後ろ姿に、
彼を想う。
天使が彼を迎えに来た日と、
同じ風が吹いて、
一瞬、彼を見た。
会いたい。