移住直後の1年目よりも、そして2年目よりも、3年目の今年は、「ヴァレンタインズデー」が賑やかに思えるバンガロール。インド他都市の状況はわからないが、大差ないかもしれない。
数日前よりハートやら天使やらが新聞紙面を大いに賑わし、"LOVE" 関連の特集記事も各紙で見られた。ホテル内のレストランをはじめとする高級レストランは、ヴァレンタイン・ディナーの広告を出している。ジュエリー関連の広告も目につく。
「女性が意中の男性にチョコレートを贈り、愛を告白する」という習慣は日本特有のもので、欧米では「愛し合う二人が愛を確かめ合う日」である。
つまりは、男性が女性に花やチョコレートやジュエリーを贈ることもあるし、女性が男性へ贈り物をすることもある。二人で食事に出かけるというのも一般的だ。インドのヴァンレンタインズデーもまた、その欧米のスタイルを引き継いでいるように見受けられる。
友人の話によれば、14日の夜、市街南部のコラマンガラ地区にあるフォーラムというショッピングモールに出かけたら、店内が真っ赤なハートのデコレーションに満ちあふれており、「有り得ないくらいの人出」だったらしい。主には若い男女がごったがえしていたらしい。
バラの花を買い求める人、プレゼントを探す人、カップルで夕食に出かける人……。間違いなく、新中流層と呼ばれる人々に、この欧米の新しい習慣は積極的に受け入れられていると思われる。
つい最近まで、結婚前に異性と付き合うことがタブーとされていたはずだったインド。そんな風潮は瞬く間に過去のものとなりそうな趨勢である。
■スーパーマーケットで社会科見学のこどもたち
ところで上の大きな写真は、我が家の近所にあるSPENCER'Sというスーパーマーケットだ。14日、OWCのCoffee Morningに参加した後、買い物に立ち寄ったのだが、いつもと様子が違う。店内にアンプが設置され、大音量の音楽が流れている。
あまりのうるささに、店内のスタッフに「音量を下げてくれ」と頼む。
と、しばらくして、大勢の子供たちがワラワラとやってきた。社会科見学らしい。大して広い店内でもないのに、DJらしき兄さんが、やはり大音量のマイクで子供たちに話しかける。
「みんな! スペンサーズが好きか〜?!」
「イエ〜ス!」
「みんな! チョコレートは好きか〜?!」
「イエ〜ス!」
「みんな! スペンサーズとスクールは、どっちが好きか〜?!」
「スク〜ル!」
阿呆な質問を立て続けにするDJと、まっとうな答えをする子供たちの声は、店内のみならず、店の外に設けられたスピーカーで通りにまで響き渡っている。なんともはや。
スペンサーズでは食品だけでなく、家具や家電、日用品なども販売されている。子供たちは3階建てのこのスーパーマーケットの最上階から見学をするようで、DJに率いられ、行儀よく階段を上っていった。
思えばわたしも子供のころ、福岡市から北九州市にある工場地帯まで社会科見学に出かけたものだ。お菓子の工場を見学するのは、ことのほか楽しいものだった。
インドの子供たちは、今、スーパーマーケットを見学し、さまざまな消費材を学んでいる。十年前は、はるか昔日のごとく。この子たちの目には、いや、ティーンエージャーの目にさえも、インドは「豊かな母国」として映っているのかもしれない。