月曜朝、ムンバイのオベロイホテル着。先週から、「眺めのいい部屋」にアップグレードされている。
まるで映画のスクリーンのように、部屋から眺めるアラビア海の様子。
マリンドライヴの、人や車の行き交う様子を見下ろしながら、さて今週はゆっくり過ごす予定だったのが、「諸事情」につき、いよいよアパートメント探しを始めることになった。
明日はいくつか回る予定だ。
アポイントメントまで時間があるので、ビューティーサロンへと赴く。
そしてヘナによる髪のトリートメントとフェイシャルを受ける。
インドの高級ホテルには、スパとビューティーサロンが別々に存在する場合が多い。
基本的にスパの方が高級感がある。アロマの香り漂うトリートメントルームで、マッサージやフェイシャルなどをゆったりと受けられる。
一方、ヘアカットやトリートメント、フェイシャル、マッサージ、ネイルケアといった多彩なサーヴィスを提供しているビューティーサロン。ホテルの宿泊者以外の、地元富裕層の人たちの利用率が高く、たいてい混雑している。値段はこちらの方がリーズナブルだ。
全身マッサージならば、優雅な雰囲気のスパがよいのだが、今回、オベロイに隣接するヒルトンホテルのビューティーサロンでヘナのトリートメントをしてもらうことにした。先月はスパでヘナをやってもらったのだが、どちらがいいかを比べるためにも。
結果からいえば、こちらの方が正解であった。というのが、ヘナのトリートメントのあとの洗髪(別料金)に、ヘッドマッサージがついているのである。
タージやオベロイ、シェラトン、ヒルトンといった、インドにある高級ホテルのビューティーサロンには、なぜか中年以降の男性、つまりおじさんが働いていることが多い。彼らはヘッドマッサージやペディキュア、フットマッサージ担当である場合が主なのだが、その彼らのスキルが、ときにすばらしいのだ。
今日、ヘナのマッサージのあとの、ひとりのおじさんが洗髪をしてくれた。シャワーの水は顔にバシバシとかかるし(途中でタオルを所望した)、湯加減は、熱かったり冷たくなったりと一貫性がないし、やれやれこまったおじさんだと思っていたのだが、洗髪後に髪をタオルで拭く、その手つきが違った。
髪の拭き始めから、おじさんの本領発揮、という感じで、ヘッドマッサージに移行していったのであるが、その手さばきというか手つきの巧みさ!
ヘッドマッサージのみならず、肩から腰、肩から腕、指先と、上半身を巧みにマッサージしてくれるのである。あまりのうまさに、笑いが込み上げて来るほどであった。
全身マッサージをしてもらうほどでもないが、軽く身体をほぐしたいときなどにかなり有効である。
午後、コラバ地区にあるアパートメントを見る。4階建ての古い建物だが、コロニアル情趣漂う好みの風情だ。ハイライズ(高層ビル)に住みたくないわたしとしては、理想的ともいえる。
コラバ商店街から目と鼻の先、The Taj Mahal Palaceも徒歩で行ける距離。非常に便利だ。もう、あれこれを探しまわるのは面倒だから、ここに決めてもいいくらいだ。
しかし、家賃が高すぎる。書けないほど高い。二重生活で、これはあまりにも無駄な出費に思える。しかしムンバイ。安くてよい物件など、ないに等しい。
ともかくは、明日もいくつか見て、情報を集めておこうと思う。
夜は前回よりお気に入りとなったホテル内のレストラン、Vetroへ。すでにシェフとも顔なじみ状態。テーブルまで来てくれて、あれこれと話をした。アルヴィンドが、
「ムンバイでの生活はどうです?」
と尋ねれば、あからさまに困惑の表情で苦笑する彼。辛いのね。
「わかります、わかります。おっしゃらなくても、いいですよ」
と、笑いながらわたしが言えば、
「あなたなら、おわかりですよね」
と、異邦人同士、異境での、戸惑いの心情を分かち合いたいがごとくに。素直なお方である。
ところで、サーヴィスで出されるパルミジャーノ(パルメザンチーズ)のおいしいこと。やはり、イタリアはパルマ直送のチーズだけある。
写真はワインテイスティングの様子。いずれもイタリアンワインだが、いずれもあまりおいしくなかったのは残念だった。
このごろは、また一段と、我々周囲の動きが活発化している。二人にとってステップアップの時期が訪れているようにも思う。というか、しょっちゅうこういう状態のような気がしないでもないが。
明日は4月1日。わたしにとっては、社会人20周年記念である。
20年!
20周年に因んで書きたいことがまたごまんとあるのだが、あまりにも多すぎて、まとまりそうにない。なので、物件を見に行った後、オベロイのショッピングアーケードへ行き、目を付けていたジュエリーショップで指輪を買った。
ショーウインドーから、ある指輪が「わたしを買って!」と訴えていたのだ。
どういう展開だ。
本日は我ながら、なんて買い物上手なんだろうと感心した。数あるジュエリーショップから、「よさげな店」を嗅ぎあてた、と自負している。
店の兄さんとあれこれと世間話をしているうちに、店の奥に通してくれて、いろいろな原石を見せてもらい、石の話を教えてもらい……。
このショッピングアーケードにある店は、それぞれの店が独自の工房を持っていてオリジナルデザインのジュエリーを置いている場合が多い。この店もそうだった。
そして、そのお兄さんそのものが、デザイナーでもあった。
彼の、商売のやる気のなさに興味を持ち、あれこれと尋ねたのだが、まるで「宝石おたく」ともいうべく、ユニークな人であった。
ちなみに購入したのは、18金のスタンドに、ルビー(ビルマ産)とオパール(オーストラリア産)があしらわれた指輪。かわいらしいデザインのものである。
20周年記念に買うには「かなりリーズナブル」である。こんな値段でこんなジュエリーを手に入れることができるのは、インド生活の醍醐味だとつくづく感動しつつ、店を去ったのであった。
頼めば、お揃いでイアリングやペンダントヘッドも作ってもらえる。やっぱり、インドは楽しい国である。
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