今朝一番の便で、デリーに来た。夫は空港から直接、打ち合わせに出かけ、わたしはホテルへ。4月。デリーはすっかり夏の様子で、乾いた熱い空気に包まれている。
ホテルのダイニングで軽いランチをすませ、今日は一日、部屋で過ごしている。夕べのテレビ番組を見てくれた日本の友人、知人らからのメールを読み、返事を送る。
もう久しく顔を合わせていない学生時代の友人、東京時代の仕事仲間、一度もお目にかかったことのないニューヨーク時代からの読者の方々、仕事でメールのやりとりだけの人々……。
みなさんそれぞれに、思うところを記してくださり、一つ一つに目を通すのがとても楽しい。番組に対し好感を持ったとの感想が多かったことを、本当にうれしく思う。
今回のテレビ出演を機に、こうして日本とつながり合う機会がもてたことを、幸運なことと実感した。
ところで夕べは、わたしたちもインターネットの「合法的なサーヴィス」を通して、テレビ番組をライヴで見ることができたのだった。
無論、わたしのMac Bookでは見られず、アルヴィンドのWindowsを借りての、低解像度の画像によるものであったが、その内容を十分に確認することができた。
実際に番組を見るまでは、いったいどのように編集されるのだろうかとの懸念が強かったが、こちらの意図を汲んでいただいたうえで、かなり丁寧に編集されていたという印象を受けた。
一部、誤訳や誤認識も見られたが、内容に大きな影響を与えてはいなかったし、バンガロールの生活の様子が、臨場感を伴って紹介されていたように思う。
さて、わたしの個人的な視点から言えば、
「お願い、そこ、もう一度撮り直して〜!」
というシーンが随所にあった。2回、3回と見直すほどに、「問題の箇所」が目についてしまって恐ろしい。
それは同時に、今まで自分が知り得なかった自分の「素の姿」である。自分の姿を客観的に見ることができたのも、本当にいい経験であった。
それと同時に、どうか皆さんが録画などをしておらず、もう二度と繰り返し見ることがないことを祈るばかりだ。
※わたしの容姿云々はさておき、今回バンガロール編を撮影してくださったカメラマン、及び照明・音声スタッフの仕事ぶりは、非常に丁寧で、仕上がりもとてもよかったと実感した。曇天で重苦しかった空も、いい感じで撮れていたし、細部の撮影も非常にバランスがよく、安定感のある印象を受けた。
● 教訓その1:前後左右から、見られていることを自覚せよ。
今まで、自分の後ろ姿についてを検討することなどほとんどなかった。たまに手鏡で「合わせ鏡」をして確認する程度。あとは服を試着する時に三面鏡があれば見るくらいか。
今回、後ろ姿を映されているシーンが多く、「しまった!」と思う場面が続出だった。
まずは、着ているシャツがジーンズにひっかかって、若干、たくしあがっていたこと数回。テレビに手を突っ込んで、裾を直したい衝動に駆られることしばしばであった。
加えて、(書きたくないが)背中の潤沢な肉付き。前から見るとお気に入りのインドTシャツ (Ritu Kumar)だが、後ろから見ると、ムチムチである。決してピチピチではなかった。そのことを、放送直後の電話で母から指摘される。
わたしは低画質の映像でしか見ていなかったので、あまり気にならなかったのだが、母、なかなか冷静な人である。(録画している方! 再生して確認しないように!!)
更には髪。最後の散髪が5カ月前というのは、やはりまずかった。あれでも、朝からトリートメントをしたり、つや出しローションをつけたりしたのだが、曇天による高湿度のため、くせ毛が爆発。
どうにも手に負えない状態となり、時間の経過とともにボサボサになってしまったのだ。今、鏡に向かえばしっとりと落ち着いているこの黒髪。憎らしい。返す返すも感じの悪い天気だった。
ところで頭髪の爆発時は、通常なら束ねるところだが、あの日、束ねようとしたらアルヴィンドが「絶対にだめ! 顔がフルムーン(満月)になる!」と許してはくれなかったのだ。暑苦しいったりゃありゃしなかった。
まあ、その辺りをじっくりと見ている人はわたし以外には若干名であろうから、さほど気にしてはいないのだが、それでもテレビ出演にはスタイリストが必要だわ、と女優は思うのだった。
世間の皆様が、画質の悪い低性能なテレビしかお持ちでないことを、願うばかりである。
●教訓その2:日頃から、適度な緊張感を持って立ち居振る舞え。
なかなか難しい話であるが、それを実感した。3日間のうち、実際にカメラが回っていたのは5時間程度とのことであるが、自分としては四六時中撮られている気がして、途中からは緊張感がすっかりなくなっていた。
カメラが回っている間は、一瞬たりとも気を抜くな。
ということを、あの日の自分に言いたい。自分で勝手に「このシーンは使われないだろう」と判断し、軽く対応していたところが使われていたりして、驚く。
その一例が夕食のシーン。アルヴィンドはひどく緊張していた。いつもはニコニコとしているのに、「おいしい」と言っているときの、その顔がすでに仏頂面だ。全然おいしそうに見えないじゃないか。
しかも、「普段通りの会話をしてください」と言われているのに、
「エビは、今が旬なのかな?」
などと、普段は絶対聞かないような、つまらん質問をする。なんだよ、その質問は。と思うと同時に、この会話は絶対にカットされるだろうと見込んで、適当に、「多分ね」と、ニコリともせずに返事をしておいたら、そのシーンがしっかりと写っていた。
アルヴィンドはといえば、自分の仏頂面と阿呆な質問ぶりに大受けで、そのシーンを繰り返し見ては大笑いしている。あのシーンでそこまで笑えるのは、彼本人くらいであろう。訳わからん。
アルヴィンド絡みで言えば終盤のカーペットを選ぶシーン。実際には買わなかったのだが、一応、シャンデリアの下に敷く丸いカーペットはいずれ欲しいから、それを探すという設定で訪れていて、そのことも彼には説明していたのだった。
しかし、きちんと聞いていなかったのだろう。あれこれと見比べて挙げ句、
「で、このカーペット、どこに敷くの?」
と尋ねる彼。わたしが呆れて、
「シャンデリアの下でしょ?!」
と返しているシーンが、しっかりとおさめられていた。そのあと、アルヴィンドが、
“It will be nice!” (それはいい)
という返事をするのだが、それがまた、感情のこもっていない「棒読み」状態である。全然、"How nice!" な表情ではないのである。
「どうして僕のは、こんな変なシーンばっかり使われているんだよ〜!」
と言いながらも、とぼけた自分の様子に大受けして、またしても大笑いしている。勘弁して欲しい。
なお、このシーンをして、古くからの読者の方から「いつもの夫婦関係がよく表れていたのではないでしょうか?」との感想をいただく。なるほど。そうなのか。取り上げられて然るべきシーンだったのかと妙に感心する。
● 教訓その3:自分の中の「仰天」に気付け。
放送前、「仰天ライフ」というタイトルについての所感を記した。友人に「仰天くらいで仰天してちゃだめよ〜」と言われても、わたしの暮らしは仰天じゃないもの。きっと他の人の暮らしが仰天なんだわ。と思っていた。
が、放送を見直したときに、ある事実に気がついた。各出演者に冠されたタイトルである。
『世界に嫁いだ日本女性 密着! 仰天ライフ』
・ サイパンに嫁いだ日本女性:楽園のパワフル奥様
・ イギリスに嫁いだ日本女性:美しい田舎で悠々子育て
・ インドネシアに嫁いだ日本女性:秘境で満喫! リゾート生活
・ アメリカに嫁いだ日本女性:華麗なるセレブ美人妻
そしてわたしのタイトルは……
・ インドに嫁いだ日本女性:拝見! 仰天エスニックライフ
「仰天」とは、わたしのために与えられた言葉だったか。いやはや、かなり面白い。自分のことは、わかっているようで、実はわかっていないのね、ということを痛感させられた一件であった。
● 教訓4:自分の声を、聞け。
何が驚いたかって、自分の英語の発音である。あそこまで、こてこてに日本的だかインド的だかわからん発音をしているとは思わなかった。発音に加えて、文法も、なんていい加減!
「テレビに写っている時くらい、注意して話せよ!」
と自らに突っ込みをいれたかったシーンがいくつもある。
しかしそれは、テレビ云々の問題ではないのだ。普段からもっと正誤に気を配って丁寧に話すべきなのだ。あまりにも「なあなあ」に話していることを自覚して、こりゃいかんと深く反省した次第だ。
ところで風邪を引いて、やはりハスキーな声になってしまっていた。
「話すのが辛そうでした」
という気遣いのメールがある一方で、わたしを知る一部からは、
「むしろ落ち着いていて、大人っぽい感じだったのでは」
との意見もあった。
確かにハスキーな声は聞き取りにくかったが、しゃべりにくい分、無駄口が減っていたように思う。普段は高音で、比較的落ち着きのない話し振りなのが、若干緩和されていたようにも思われた。
無駄口は叩くな。
考えて話せ。
日本語にも、英語にも、共通していえることである。
とまあ、そんな次第で、放送が終わった今、すっかり肩の荷が下りた気分である。今回のテレビ出演を通して、いろいろと学ぶところも多く、本当にいい経験をさせてもらった。
番組の制作会社にわたしのことを紹介してくれたニューヨークの友人、Shizuka new yorkの静さんにも感謝である。
これからもまだ少しずつ、反響が届くことだろう。いろいろとあるだろうが、楽しみだ。
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