FM熊本の収録のため、今朝は早朝起床。まだ世界は暗く、窓を開いて空を見上げれば細い細い三日月。シャワーを浴び、お茶を飲み、身支度を整えているうちに空は白み、夜明けだ。朝晩の風は涼しく心地よく、ムンバイのセカンドサマー。
●あなたはもう、わたしの知っているあなたではなく。
外見はそのままに、内部はすっかり生まれ変わってしまった我がMacBookを引き取りに、今日もまた南ムンバイ中心部のTARDEO界隈へと赴く。
普段よく通過するKEMPS CORNERあたりに近いエリアだが、ほとんど立ち入ったことのなかった界隈である。ゾロアストリアン・コロニーとも呼ばれ、パルシーの人々が多い地区でもある。
道を覚えるためにも、車窓の光景を目で追う。途中で見覚えのある名前を掲げたレストランを発見。
昨日同様の、TIME OUT MUMBAIのガイドブックをめくれば、やはり気になっていた店である。
「ランチタイムは込むため、40分待ちは普通。予約は受け付けない」と書いてある。
せっかくだから、今日のランチはここにしようと決める。
Leopardの最新版、OSX 10.5.4がインストールされていて、すっかり別人のようである。
見慣れないアイコンもいろいろあって、さてさてこれらを使いこなせるようになるんだろうかと思いつつも、まずは懸案の日本語入力問題である。
OSX 以降は、どの国で買おうがコンピュータの中身そのものは同じで、日本語環境への以降も簡単にできるようになっているということを、今回の騒ぎを通してマックユーザーの方々に教わった。
とはいえ、自分の目で確かめるまでは、まだまだ安心できない。システム環境設定を開いて、言語環境を開き、そこで言語を日本語最優先に設定し、入力メニューから「かなパレット」やら「ことえり」やらを選ぶ。
そしてワードを開き、タイプしてみると……。日本語が入力できるではないか! ブラボー! ワンダフル!
こんなにも簡単に、日本語で入力ができるだなんて。マックユーザーなら知っておけよ、という話だが、知る機会がないままきていたのだ。やっぱり、アップルコンピュータはすばらしい。これで、バックアップさえこまめにとっておけば、故障も怖くないというものだ。
2年分のメールとアドレス、それから今月作業した諸々の情報は消えてしまったものの、「まあ、いいや」と思えるくらいの気分の良さだ。不具合のコンピュータに不安を抱きつつ作業していたことを思うと、こうしてハードディスクごと取り替えてもらった方が、よほどよかった。
災い転じて福となす。怪我の功名。
前向きな言葉が脳裏に浮かぶ。鼻歌まじりに、スキップさえしてしまいそうな心境である。
インドに暮らすわたしにとって、日本と自分を結ぶ窓口は、日本語環境のコンピュータである。これが使えなければ、まったく仕事にならない。こうして日々をサイトに綴ることもできない。
その重要度がわかっているからこそ、知らず知らずのうちに、コンピュータの不具合がストレスになっていたようで、壊れたハードディスクを念のため買い取って(交換なら保証期間内なので無料だが、古いハードディスクを受け取りたいなら支払わなければならない)、店を出るときの気分は晴れ晴れ。
時計を見れば、午後1時15分。ランチタイムにちょうどよいタイミングである。店が込み始めるタイミングでもあるが、ともあれ先ほど見つけた店、SWATI SNACKSへ赴く。
グジャラティ地方のスナック(軽食)や、チャートやパニプリ、ダヒ・バタタ・プリといったストリートフードを味わえる店とあったので、もっと薄汚れた感じの食堂をイメージしていたのだが、こぎれいである。
店の前はちょうど木陰になっており、無造作に出されたプラスチックの椅子に腰掛けたり、立ち話をしている人たちなどが順番を待っていた。
わたしも店のスタッフに名前を告げて、外で待つ。
メニューの大半は100ルピー、つまり300円以下ながら、客層は界隈に暮らす富裕層が主なようである。昨日の店とは打って変わり、色柄の華やかなサリーやサルワール・カミーズに身を包んだ女性たちの姿が目立つ。
30分ほど待って、ようやく席へ案内された。窓際の、二人がけのテーブルである。
メニューを見れば、あれこれと興味をそそる料理名が並んでいる。本当は、好物のダヒ・バタタ・プリ(←文字をクリック)を食べたいところだが、今日は新しい味を試してみるべきだろう。
給仕のおじさんの勧めに従い、スナック2種と、それからサトウキビ&ジンジャージュースを注文する。
まずテーブルに届いたのは、ジュースとバナナの葉に包まれた米粉のパンケーキ。
見た目からして「旅情」を誘う、新鮮さに満ちている。
食べ方がよくわからないが、周囲を見回しても同じものを食べている人がおらず、一枚ずつバナナの皮をめくって食べていたら、給仕のおじさんが、ぜんぶ葉をとってしまいなさいと、指示してくれる。
それにしても、この味。
またしても、おいしいんだかなんだかよくわからない。
ただ米粉のパンケーキを蒸しているのではなく、ネギやピリッとするスパイスも入っている。
薄いので、あっというまになくなってしまうのが玉に瑕だが、あっというまに食べてしまったというのは、多分おいしいのだろう。
さて、次のスナックは何であろうかと待っていたところ、若いカップルが相席を申し出てきた。フレンドリーな笑顔で、どう考えても1人用のシートに、しかし二人で座らせてほしいという。
わたしは構わないので席を勧める。
「ごめんなさいね。どうしてもここのスナックが食べたくなって、実は仕事を抜け出して来たんだけれど、30分も待たなきゃならなくて。そんなには待っていられなくて……」
店の話や料理の話を皮切りに、世間話が始まる。
彼らはカップルではなくebayに勤める仕事仲間なのだとか。女性の方は独身で、男性の方はまもなく赤ちゃんが誕生するとのこと。
インドでebayが誕生したのは2004年のことで、以来彼女はずっと勤務しているらしく、インド市場の傾向などを教えてくれた。かなり興味深い話が出て来て、食事が運ばれて来ても、話に集中し、あまり味覚に心を配らないまま、食べ終えてしまった。
ジャガイモなどが入った豆の煮込みカレーのようなものであった。ヨーグルトカレーをかけて食べた。気がついたら平らげていたので、おいしかったのだと思う。今度はせめて2人以上で来て、あれこれと異なるスナックを試してみたいと思わされた。
せっかくだから、試してみることにする。
今が旬のカスタードアップル(釈迦頭、バンレイシ)を使ったさっぱり風味のアイスクリームだ。
とてもおいしい。
満足だ。
ちなみにカスタードアップルの写真は、この日の記録(←文字をクリック)に掲載している。
コンピュータのトラブルで、思いがけずあちこちへと赴くことになったが、新しい発見や学習や出会いもあり、なかなかによい経験になった。
これから、使い勝手のよいマシンにするための、あれこれと設定やら整理やらをせねばならないが、ぼちぼち、注意深く、進めようと思う。
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コラムの執筆を依頼され、「インドチャネル」というサイトに3カ月3回に亘り、寄稿することになった。テーマは「衣食住」。一回目は「衣」について記した。
このブログを読み慣れている方々にしてみれば、すでによく出てくる話題でもあり、さらには、文章が短いと思われるかもしれないが、一応お知らせまでに。
■インドチャネル(←文字をクリック)
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シーフードの宅配で、毎度おなじみマナガツオやエビ、そしてイカを注文する。
選択肢は少ないが、調理法を変えれば異なる味わいが楽しめるというものだ。
そんなわけで、本日は「シーフード・パエリア」
と見せかけておきながら、実は「シーフード・ビリヤニ」。
ビリヤニとは、ムスリム起源のインド風炊き込みご飯である。そもそも、マトンで作られるものが主流。シーフードなどは、存在しないと思われる。あるかもしれぬが、食べたことはない。
従って、これもまた我が独創料理だ。参考までに、おおざっぱなレシピを。
・オイルとバターをたっぷりめに溶かしたフライパンに、粒こしょうやカルダモン、シナモンなど適当な固形スパイスを入れて香りを移す。
・タマネギをみじん切りを加えてしんなりするまで炒める。
・ショウガとニンニクのすりおろしを加える。
・塩、コリアンダーパウダー、キュミンパウダー、ターメリックパウダーを加えてなじませる。
・湯剥きしてジュースにしたトマトを加える。
・軽く洗ったバスマティ米(香りがよく、炊き込みご飯に好適)と水を適量加えて、かきまぜる。
・具を上に載せるて、炊く。
とまあ、このようなプロセスだ。分量は、適当に、勘で。最後、炊きあがった直後に、料理しながら飲んでいてぬるくなった白ワインを、さっと振りかけて蒸らしたところ、風味が一段とよくなった。
簡単ながら、見た目はゴージャスな感じである。これにサラダやスープでも添えれば、これで十分にごちそうである。マイハニー(夫)も大喜びであった。味のしみ込んだご飯がおいしく、敢えてほんのりつけた焦げ目のあたりも美味であった。