PARK AVENUEの中央分離帯。ヒヤシンスの甘酸っぱい香りが漂う
東京に8年、ニューヨークに5年半、ワシントンD.C.に3年半、カリフォルニアに数カ月、バンガロール&ムンバイに4年半。いろいろな街に身を置いてきたけれど、やはりこの街が一番、「普通」でいられる。
渡米前に連続して起こった、いくつかの不本意かつ不快な出来事も、最早どうでもいいと思える。少しでも思い煩っていた自分がばかばかしくさえなり、物理的な移動に感謝である。
来てしまえば、さほどの刺激も感じず、旅行者のような気分にもなれず、インドに暮らす自分が幻。まるで「胡蝶の夢」のような。
ニューヨークまでの機内で、ようやくAVATARを見た。3Dの画面は酔うので避けており、DVDで見るつもりでいたのでちょうどよかった。
あの映画の中で、二つの世界を行き来しながら、どちらの世界が本当かわからなくなる。まさに胡蝶の夢。
わたしの場合、ただ土地を移動しているだけなのだから、そんな深刻なものでもないのだが、しかしこの街に来るたびに、奇妙な気分だ。
今日のランチタイムはひとりで寿司を食べに行った。到着直後のランチに「ひとり寿司」は、ニューヨーク来訪時の、最早お決まりのコースである。
ここで寿司を食べるともう、なんとなく気分が落ち着いて、バンガロールであれこれと食べたいものを思いめぐらせていたのに、もう、どうでもいいような気になってくる。
というか、精神的には「楽しみたい」と思うのだが、身体がさほど、外食を欲さないのだ。インドに暮らしはじめて、間違いなく味覚が、嗜好が変化したが、年齢を重ねたこともあるのか、このごろはそれが顕著だ。
夫はといえば、仕事関係者と共にステーキレストランへと赴いたらしい。
「サラダとアスパラガスのグリル、ハッシュドブラウン、それからプライムリブをシェアしたよ。おいしかった〜!」
と幸せのようである。マンハッタンらしい、ランチである。思えば10数年前。母が初めてニューヨークに来たとき、ステーキハウスへ連れて行った。
スーツ姿の男性が好きな母。がっちりとした体格のビジネスマンたちが、次々にレストランへ入ってきて、分厚いステーキを平らげているさまをみて、感嘆の笑顔で、目を輝かせていたものだ。
ランチのあとは、ブライアント・パークを横切って、紀伊國屋へ向かう。芝生は現在「保護期間」で立ち入り禁止だが、周辺の公園では、ランチを食べる人々であふれかえっている。
先週のマンハッタンは寒かったらしく、ここ数日の暖かさを人々は楽しんでいるようでもある。着ているジャケットが邪魔になるほど、今日は暑い。
さて、紀伊國屋でしばらく、あれこれと本を眺めて過ごす。荷物にならない程度を数冊購入し、カフェへ。半年おきのニューヨークは、わたしにとって半年おきの日本のようでもある。
五番街を歩き、少し買い物をして、ホテルに戻る。明日はセントラルパーク南の、いつも滞在しているホテルに移る。移動は面倒だが、以前住んでいたあたり(コロンバスサークル界隈)にいる方が、気分も落ち着くのだ。
好天が続くことを祈りつつ。
★更なるNY滞在記録はこちら→インド発、元気なキレイを目指す日々