独立記念日。朝、TIMES OF INDIAを開けば、オッと目を見張るTHE TAJ MAHAL PALACEの写真。
数日前にも記した通り、テロの攻撃に遭って以来、徐々に営業を再開していたが、本日、全館の補修工事が完了し、再オープンしたのだ。
名称も従来のTHE TAJ MAHAL PALACE & TOWERから、THE TAJ MAHAL PALACE, MUMBAIに変わったとのこと。
新聞のページをめくればまた、一面に広告。左下の写真がそれだ。広告上部の写真は、右下写真、つまり旧館のクーポラ(ドーム)下の、吹き抜けの階段で撮影されたもの。
この写真。実は先週、ムンバイでホテルを訪れたとき、館内に飾られていた同じものを目にした。目にした瞬間に思ったこと。
(か、階段が、崩れる!)
(記念撮影で階段崩落、死傷者多数、なんてことになったら洒落にならんぞ!)
そんな思考回路を持つに至った自分がいや。それもこれも、インドのせいである。
形あるものは、壊れて当然。壊れれば、修理をすればよい。
しかし次の瞬間、思うのだ。
(大丈夫。この建築物は、非常にしっかりと作られているのだ。このクーポラの鉄筋だって、エッフェル塔に使われたそれと同じ素材が用いられているのだ……)
と。「前向きな情報でもって自分を鼓舞する」「ネガティヴな閃きを、ポジティヴな事実で凌駕する」といった習慣がついてしまった我がインド人生。
わたしはかなり「心配性」だ。だからこそ、日々それなりに心を砕いているのだ。だからインドで「不安げな建築物」を目にするたびに、一瞬、胸を突かれながらも、
(大丈夫大丈夫。この国の人たちは、あのタージマハルだって建築したのだから。あの、今でもちゃんと倒壊せずに立っているタージマハルを。ちょっと傾きはじめてるって言う噂もあるけど)
という具合に、不安を打ち消すのである。
この中に、ジェネラル・マネージャーのKarambir Kang氏の姿はあるだろうか、と探した。あの日、妻と二人の子どもを失いつつも、ホテル再建へ向けて尽力した人物だ。
一人一人を目で追ってみたが、見つからなかった。ひょっとすると、写真の上下にいて被写体に入りきれていないだけかもしれない。
彼に、みなと同じような笑顔が戻っただろうか。いや、とても戻りはしないだろう。たとえ笑っていたとしても、それは。
「血を流しながら、にっこり笑おう。」
かの岡本太郎の言葉だ。東京に暮らしていた頃、20代の後半だったか、『知ってるつもり』というテレビ番組で岡本太郎が取り上げられていた。
そのとき紹介された彼のこの言葉に、心を射抜かれた。時折、思い出す。
血を流しながら笑う。ビジュアルを想像するとかなり怖いが、しかし、この言葉の強いこと。人は多かれ少なかれ、血を流しながら、笑っている。それを思う時、戦いの虚しさを思うのだ。
願わくば、戦いが減り、武器が減り、少しでも多くの、血の匂いがしない、笑顔が広がることを。
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