昨夜、チェンナイよりバンガロールに戻って来た。そして明日からはデリー、そしてデラドゥーンの「結婚式な旅」へと続く。
バンガロールにいられるのは本日だけとあり、諸々の仕事を片付けている。本当はここに記録を残している暇などないのだが、ここに書くことで、頭の中を整理することもできる。
今年に入ってから、日本からの仕事が増える予感があったが、それが的中し、次々にリサーチや視察旅行の仕事が舞い込んでいる。
身一つだし、ゆとりの時間も欲しいので、詰め込むつもりはないのだが、しかしいずれも興味深い仕事が多い。
ここにきて、ようやくインドに対して本腰を入れ始めた日本企業、もしくはその関連会社が増えているような気がする。
と同時に、頻繁な視察、リサーチが必要なインドであることを実感する。
あまりにも猛スピードで、あらゆる事象が変化しているインド。変化のスパンは非常に短く、半年前、1年前の情報すら、古く感じることもある。
インドに関する書籍はさまざまに出ていて、もちろん、普遍的に永続的に参考になるものもあるにはあるが、大半が瞬く間に「化石化」しているように思う。
これまでさまざまなジャンルに亘るレポートをまとめてきたが、1年前に自分が作ったものですら、見直せば変化している部分が目に留まる。
特に、若者市場。もう、インドの若者たちの多く(中間層以上)は、すでにかつてのインド人ではない。少なくとも我が夫の世代(30代後半)周辺とは、著しい精神土壌の差があると実感する。
ライフスタイルだけではなく、対人関係、物事に対する考え方、その他諸々。
ここに来て、5年前からインドの変化を見られた自分を、「仕事をする上で」幸運に思う。
欲を言えば10年間のインドの生活環境における推移を見ていると、もっと奥深い見方ができると思うのだが、まあ、取り敢えず5年でも、話をするにはそこそこに、切りがいい。
もっとも初めてインドを訪れたのは2001年。結婚式のときのニューデリーである。あのときのニューデリー、つまり10年前と今とでは、その際の著しさが歴然だ。
あの一瞬だけでも、デリーを訪れていたのは、やはり幸運であった。
今回のチェンナイでは、かなり強い衝撃を受けた。新しいショッピングモールができ、消費の現場が増えているというハードの部分もさることながら、人々のメンタリティの部分の変化が、目に見えたからだ。
バンガロールでも、チェンナイでも、クライアントを案内している最中のショッピングモールで、「初めてエスカレータに乗るらしき人々が戸惑う様子」を目にした。
その一方で、あっという間に新しきを取り入れている若い世代。それも、見るからに中間層以下、である。富裕層だけでなく、中間層のパワーが、2年前よりもずっと、具体的に見られた。
数年前は「物見遊山」でショッピングモールを訪れていた「華やかな消費のシーンに不慣れな人々」が、今や、明らかに消費者となっている様子が見える。
チェンナイとはそもそも、デリーやムンバイ、バンガロールなどに比べると、非常に封建的な都市である。昔ながらの伝統的なライフスタイルが根付いているという印象だ。
2年前にもそれを実感していたが、しかし今回は目に見えて違った。「2月14日」に訪れたせいもあるだろう。
13日日曜日のショッピングモールは、ヴァレンタインのイベントで大騒ぎ。
フードコートもまた、お祭り騒ぎの賑わいで、特にKFCの周辺は黒山のひとだかり。
KFC。インドにしては、決して安くはないのだ。チキンバーガーにドリンクやポテトなどのセットを頼むと、400円近くする。
月収が数万円の人々にとって、それはかなり高額のランチである。それが、たいへんな人気である。
翌14日月曜日。インドを知るには、映画を見るのも一つのよい材料となるので、こてこてタミル語映画を見ていただくべく、最先端モールのシネマコンプレックスを訪れた。
やたらモダンな(!)機械の前で、慣れた手つきでチケット購入をする若者たち。チケット販売のブースもなにやら「ハイテクムード」で、「いったいどこで、どう買えばよいの?」と戸惑う。
一方、映画の前に流れる国歌を、起立して皆が歌う様子を楽しみにしていたのだが、流れなかった。
土地柄? それとも時代の流れ?
なにより驚くのは、月曜だというのに、やったらお客が多いことだ。しかも映画館の「若いカップル率の高さ」にも目を見張った。
映画そのものは、昔ながらの「昭和的」ムード。ヒロインは豊満(おでぶさん)な美形で、男たちはオッサンみたいにむさ苦しいのに、「学生?」な設定で、インドらしい違和感。
出て来る家庭の様子も「封建的な雰囲気」が漂っている。
しかし、その映画を見ている若者たちの様子がもう、なんだか違う。
そもそもは親が段取りをする見合いが主流だったインドの結婚事情も、劇的に変わりつつあるのだろうことが、想像される。
つい数年前には、「恋人と、結婚相手とは違う」とうそぶく若者が増え始めていたが、今は果たしてそうなのだろうか。親の反対を押し切って恋人と結婚する人は、増えているのではないだろうか。
タクシーの運転手に、
「今日は、月曜なのにモールはすごく込み合ってたけど、ローカルの祝日なの?」
と尋ねたところ、
「祝日ではないけれど、今日はLOVER'S DAYです」
と言うからまたしても、驚いた。
LOVER'S DAY。
ヴァレンタインデーと言わずに、LOVER'S DAY。ドライヴァーの口からそんな言葉が出るとは思わず、またしても驚く。ここ2、3年ほどのトレンドらしい。
5年前のバンガロールでも、ヴァレンタインズデーは「初々しい行事」だった。
2006年にバンガロールのバラ農家がオランダの花の企業と合弁だかなんだかをしたニュースがあったが、そのバンガロールのバラ農家起業家は、ヴァレンタインズデーに妻に贈るきれいなバラの花を買えなかったのが、自分でバラ農家を始めるきっかけだったとあった。
今回、わずか2泊3日のうちに眺めたチェンナイは、当然ながら、氷山のごくごくごく一角に過ぎず、旧態依然のライフスタイルも根強く残っているだろうことは察せられる。
しかし、「目に見えて移り変わっている」諸々を、上記に限らず目にできたことは、いい収穫だった。
まだまだ書きたいことは募れど、明日からの荷造りをせねばならぬ。結婚式旅行第一弾、ファンクションは3回。つまり最低、3枚のサリーとジュエリー類などを持参せねばならぬ。
それに加えて、飛行機での移動日の服、デリー滞在の服……。デリーは寒いから、冬物を発掘せねばならぬ。暑いところから涼しいところに戻って来て、今度は寒いところ。そして来週は暑いところ……。
もう、インドは広すぎる。
そんな次第で、書き殴った感ありだが、取り急ぎ!
インド発、元気なキレイを目指す日々(第二の坂田ブログ)(←Click)