動物とのふれあい豊かなインドの生活。インドに暮らしていると、ヒトと動物の距離感が、非常に短いことを痛感する。というか、渾然一体と共存していることを目の当たりにする。
貧しき人々の暮らしは特に。動物たちと触れ合いながら暮らしている。そんな日常に慣れてしまっていたが、今日は格別、「動物ランド」を実感する一日であった。
まず上の写真。今日の午後、遂に激写を実現した。我が家からインディラナガールというエリアへ向かう途中の線路脇の道。ここにスラムの集落がある。
そこを通過する際に、これまで何度か見かけていた「塀の上に立つ3頭のヤギ」。
「ああ〜っ!」と思ったときには、いつも通り過ぎた後で、写真を撮ることができなかった。しかし今日はご覧の通り、遠目から発見したため、ドライヴァーにスピードを落としてもらっての撮影だ。
1.なぜ、その不安定な塀に登る必要があるのか。
2.なぜ、いつも3頭なのか。
3.高さ1.5メートルほどもありそうな塀に、どうやって登ったのか。
後ろの車からのホーンがけたたましいが、最早、気にしてはおられぬ。もうちょっと距離を取って撮影したいところだが、それは贅沢というものだ。取り敢えず、撮る。
一頭目のヤギ。彼の表情には、「気分のよさ」が見受けられる。
同時に、背後のヤギに向かって「早く来いよ」の誘いの視線を投げかけている。
良い眺めを、仲間たちと共有したい。
そんなところなのだろうか。
それはそうと、どうやって登っているのだ?
……と、その答えは、あっさりとわかった。
一部、ぶちこわされた塀の部分が、階段状になっていて、そこから登っているのだった。上から見守る仲間の視線がまた、あたたかい。
それはそうと、この塀の上で方向転換するのも、なかなかにデインジャラスではなかろうか。ともあれ、いいものを見せてもらった。
さて、今日の本題は、ヤギではない。犬である。
インドは、野良犬パラダイス。
日中は、世界を人間に明け渡すが如く、自分たちはだらだらと寝そべって休息しているが、人間どもが寝静まった夜は、俄然、元気になる。
過去の写真を参考までに。以下は、昼間だらけている犬の図である。
というくらいに無防備な奴。隅で寝ろよ隅で。
ここは南ムンバイはコラバ・コーズウェイ。往来激しい歩道である。
邪魔。邪魔すぎる。「リスク」というものを考えんのか、と思う。
まったくもって自己防衛本能に欠ける犬だ。だいたい野良犬含め、野生動物は、即、走り出せるようなポジションで寝るんじゃないか?
と、犬に呆れている場合ではない。すぐそばでは、人間が……。
こういう光景を見るたびに、インドって、時空が歪んでいるなあと思うのだ。なんというか、もう、なんでもどうでもいいんじゃなかろうか。という気分にさせられるのだ。
いかんいかん。過去の動物系写真を検索して、和んでいる場合ではない。野良犬の話題である。
左下の写真は、夜の空港。ウォーウォーと吠えながら、駐車場を駆け回る犬。夜になるとパワー全開なのだ。右下の写真は、2006年、オシム監督率いる日本のJリーグが、バンガロールへ試合に来たときのもの。
試合の途中で停電するは、野良犬が侵入して駆け回るはで、そらもう、思い出深いゲームであった。
あ〜、また前置きが長くなった。
数日前から、深夜、犬の遠吠えが間近で聞こえるようになった。ずいぶん近い場所で吠えているなあ、うるさいなあと思いつつも、すぐに寝入っていた。
と、今朝、またしても遠吠えが聞こえる。しかも非常に間近に。それはたいそう、寂しげな悲しげな声である。夫と二人、爽やかにヨガをしていたのだが、集中できない。
「ひょっとして、隣の庭にいるんじゃない?」
と、偵察に行くことにした。隣家は4年前から空き家で、広大な庭は、あまりにも無惨に放置されたままである。
この物件を持つ開発会社の所有で、実は隣家だけはまだ売れていないのだ。一時期、開発会社のエグゼクティヴが住んでいたが、彼らが引っ越した後はそのまま。
売れない理由は広すぎる庭。我が家の2倍、つまり6000スクエアフィートほどもあるのだ。物件を購入するには、もちろん庭も購入するわけで、居住部分(屋内)の半額とはいえ、高すぎる。
放置された庭は、まるで博物館の「ジオラマ」でも見ているかのよう。そのときどきで、異なる植物が群生し、ときに香りのよい花が咲き、ときに得体の知れぬ植物がはびこり……。
で、今の状況はといえば……。柵を開いて撮影するに、こんな感じ。
鬱蒼とした、まるで打ち捨てられた山荘のようである。ちなみにオレンジ屋根は、かつて「バーコーナー」として使われていた東屋だ。こじゃれたムードの庭だったのに……。
この、荒れ果て感。魑魅魍魎に跋扈されたら困る。
そんなわけで、定期的に開かれているオーナーの自治会の打ち合わせにおいては、何度も議題に挙げて来た。開発会社に交渉しよう、さもなくば自治会の資金で整備をしよう……との話をしているのだが、先に進まない。
ちなみに自治会では、
「もう、柵を突き破って、マルハンさんのところで使ったらどうです? 誰も何も言いませんよ」
などという話になるからインド的すぎていやになる。
我が家の庭の手入れが行き届いているのを彼らは知っていて、ついでに整備してくれ、使っていいから。という話である。
いらん。いらんから。
わたしはいらんが、いっそ、住人たちの公園にしてしまうという手はあるかもしれん。そんなことを考えていた矢先の、遠吠えである。
話が長くなったが、この鬱蒼の庭を探索したところ、首輪をつけた黒い犬が、寂しくうずくまっていた。気の毒なので、水とビスケットを与えようと思うが、近寄ってくれない。
首輪をしているので、かつては飼い犬だったのだろう。ひょっとすると野良犬軍団にやられて、おびえきっているのかもしれない。
立ち上がって歩ける様子だが、身体を震わせている。多分、ここ数日、食事もしていないはずだ。空腹に違いない。が、わたしにはどうすることもできぬ。このまま放置するわけにもいかぬ。
というわけで、以前訪れたことのある動物保護団体、CUPAに電話をした。事情を説明したところ、数時間後に、レスキューを派遣してくれたのだった。
その間、犬はビスケットを平らげていて、少し元気になっていたようだ。
輪っかのついた棒で、原始的に捕獲されたときには、聞くに堪えない、辛そうな叫び声をあげていた。
「大丈夫、あなたは殺処分されるわけじゃないのだから!」と、声をかけるも、犬にわかるわけもなく。
しかし、捉えられたあとは、普通に「犬の散歩」的なビジュアルになり、一安心。
スタッフによると、この犬は怪我がないので、施設に運び込むことはできない。どこかで放すとのこと。日本では考えられぬことかもしれないが、しかし、殺されるよりはましである。
以前も記したが、インドに犬の殺処分はない。野良犬が多すぎて、時に子供が噛まれたりするなどの事件はあるものの、基本、共存である。
だからこそ、狂犬病の注射を施すなどを行っているCUPAのような施設の活動は貴重である。
救急車には、奇しくも黒い犬がもう一匹、収監されていた。彼と二人、どこか住みやすい土地に、放たれて欲しい。
寄付金の項もある。
当然と言ってはなんだが、しかるべき金額を、寄付する。
このような寄付金によって成り立っている団体である。
なるたけ多くの人たちの支援を、と思う。
ちなみに、レストランのSUNNY'Sは、この団体に支援している。
食事の代金から自動的に寄付金が差し引かれていたときには、少々抵抗を覚えたが。
ともあれ、インドには、支援されるべき団体が本当に多い。そういえば、今年に入って一度もチャリティ・ティーパーティを開催していない。
いろいろと思うところあり留まっていたが、そろそろ再開したいものだ。
なお、CUPAを訪れたときの記録は下記に残しているので、ぜひぜひ、ご覧いただければと思う。
■動物保護施設CUPAを訪問 (←Click!)