本日午後の便で、ムンバイに到着した。1カ月ぶりだ。毎度おなじみ、夫の出張に便乗しての旅。
今回もまた、北ムンバイはバンドラにあるTAJ LANDS END。夫のオフィスが移転して以来、南インドの滞在が減ったが、このホテルは快適なので気に入っている。
毎回、クラブルームに部屋をアップグレードしてもらえ、コンプリメンタリーのハイティーやカクテルタイムを楽しめるのが魅力なのだ。
チェックインと同時に、飲み物のサーヴィス。お茶の選択肢の中に、ミルクたっぷりの「マサラ・チャイ」があるところが、インド的で気に入っている。
ルームサーヴィスで遅いランチを頼む。チャイニーズのヌードルが、恭しく運ばれてくるのもまた一興。
今日は外出をせず、ホテルのビューティーサロンでネイルケアなどをしてもらい、ゆっくりと過ごそうと思う。
……などと書いていると、ほんと、有閑マダム? なライフだな。
でも、本心を言えば、自分の仕事ですてきなホテルに滞在する方が、充足感がず〜っと高い。来年あたりから、もっと出張仕事を増やす方向で、動きたいものだ。
……と有閑マダムに突入する前に、昨日の記録を残しておこう。
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昨年の秋、日本帰国時に購入していたオリンパスの小型一眼。ズームレンズのオートフォーカス機能が早くも故障した。
マニュアルならば、あり得ない故障だが、デジタルだから仕方ない。インドにオリンパスのサーヴィスセンターがオープンしたのは、つい最近のこと。いいタイミングではある。
敢えて、国際保証サーヴィスのあるオリンパスのカメラを購入した甲斐があるというものだ。
ネットで調べたところ、バンガロールのサーヴィスセンターは数カ所。そのうち、自宅に最も近い店舗に電話をして事情を説明したところ、修理を受け付けているという。
早速、昨日赴いた。と、相も変わらず、インド的な展開が待ち受けているのであった。
「この機種のカメラは、うちでは修理できません。別のセンターに持って行ってください」
だから、あらかじめ電話をして、機種も伝えたんじゃないの! ノープロブレムていうたやろ!
と、心で、いや全身で悪態をついて、次なる店を目指す。それは市街南部、ラルバーグ植物園の近所であった。ああもう時間の無駄!
わかりにくい場所にあるおんぼろビルディングを見つけ出す。
階段を上った先に見つけたのが上の写真。人気のない、がらんとしたオフィス。でも、一応、オリンパスのサーヴィスセンターと書いてある。
部屋をのぞくと担当者がいる。いかにも「修理できます」な道具がそろったムードの部屋から出て来た彼。
カメラの調子を見るなり、
「これは、うちでは修理できません。ムンバイに送ります」
やっぱりな。
そんなこったろうと思ったよ。でもまあ、わたしが自分でムンバイのサーヴィスセンターに持ち込むよりは、きっと早いはず。
3、4日で修理が完了するらしい。ってことは、最低でも1週間はかかるな。
購入してまだ1年未満の保証期間内の故障だったのが、むしろラッキーだったかもしれない。
インドは砂埃が多いし、わたしは扱いがラフだしで、精密機械の故障は多い。コンピュータもそうだが、アフターケアの善し悪しも、商品購入の大きな決め手となる。
そんな次第で、本日の写真。普通のデジタルカメラで撮影しているのだが、ネット上に載せる限りでは、仕上がりの差はほとんどわからないだろう。
ただ、シャッタースピードなどが、普通のカメラと一眼レフとではまったく違う。撮影できる瞬間の数が、多分、かなり違う。
「撮るぞ!」という意気込みもまた、一眼レフの方が遥かに上回る。
早く戻ってきますように。
さて。またしても、菓子である。しかし、チャリティ・ティーパーティではない。よそ様のお宅へお呼ばれしていたので、
「デザートでもお持ちしましょうか? 人数をお知らせください」
とメールしたところ、
「美穂さんの作るデザートが大好きなので楽しみです」
とのお返事が届いた。
自分で作るかどうか、まだ決めていなかったのだが、こう言われて、作らずにいられようか、いや、いられまい。
デコレーションに似合うイチゴは季節外れで売っていないし、マンゴーももう、飽きた(!) というわけで、今回はキウイとパイナップル、そしてザクロという取り合わせだ。
甘いカスタードクリームに、甘酸っぱいフルーツの組み合わせ。味のメリハリが利いて、なかなかにいけるのよ。
さらには、勢い余ってタルトタタンも作ることにした。先日、作ったところ好評だったので、調子に乗ってまた作る。使用するリンゴは十数個。1.5キロ分。
なにをまた気合いを入れているのかといえば、パーティの趣旨は、バンガロール駐在5年を超えてようやく帰任されるF夫妻のお別れ会。
奥さんのA子さんには、我が母がインドに来た際、母と遊んでいただくなど、お世話になった。
彼女になにかお別れのプレゼントでも……と思ったが、いいものが思いつかなかったので、この際、味覚と胃袋に思い出を刻んでいただこうと、菓子作りに情熱を注ぐことにした次第。
正式なタルト・タタンとは、フライパンのような鍋でリンゴを煮詰め、その上に生地を載せてオーヴンで焼く。
インドのオーヴンは小さいのでそれができない。
従っては耐熱ガラスの容器に移し替えて、焼く。
おまけの小さいタルトは、マイハニー用。
ムンバイへ持って行くのだ。
これらはひっくり返して、タルト(ビスケット)を下にして供する。
本場パリではサワークリームを添えて出す。わたしは生クリームを泡立てて持参。
★
会場となったMさん宅。テーブルには、さまざまな和食が並んでいる。Fさん夫妻がバンコクから仕入れて来ていたというお刺身関係も山ほど。
日曜に引き続き、2日連続で刺身を食すなど、なんという贅沢。
日本人駐在員の、たいていのご家庭では、日本食材がたっぷり確保されている。店が開けるくらいに。
一方、我が家は、ほとんどないに等しい。従っては、こういう料理を目の前にすると、自分がインドにいることを忘れる。
いや、料理云々の前に、100%日本人駐在員ご家族のお集りの中、単独で身を置くことが非常に珍しいことゆえ(というか、生まれて初めてかも)、自分のモード調整に戸惑う。
力一杯、浮いてるな。
と自覚して、酒を飲む前から、にやけてしまう。
まあ、数分後には場の空気にもなじみ、ビールやスパークリングワインやドイツの白ワインや日本酒やら梅酒やらを次々に注がれて、今、思い出して書いているだけでも、すごいな。
そうして、すっかりできあがったところで、
一緒に写っている男性が、このたびご帰任のF氏。こちらのご一家は、「写真のネット流出ノープロブレム系」なので、記念に掲載する。
ところで、Mさんちには、カラオケもある。もう、ここを誰がインドだと思おうか。食事を終えるや否や、歌い始める殿方。
美穂さんも歌いなさいと言われて、しかし、酔った頭で自分が何を歌えるのか、ピンと来ない。
と、どなたかが、「学童唱歌もあるよ」とおっしゃるので、発作的に、
「荒城の月!」
と叫ぶ。
荒城の月かよ! 渋すぎだろ!! と自分に突っ込んでいると、画面に出て来たのは、
「古城の月」
そ、そんな歌があったとは……。しかし古城の月は知らぬ。結局、荒城の月を歌う羽目に。小学校6年生のときに、コーラスで歌った荒城の月。
朗々と歌い、観衆を魅了。(おばか)
そして歌いながら気づくのである。わたしが歌いたかったのは、荒城の月じゃない。月は月でも、「おぼろ月夜」だったということに。
が、2曲も学童唱歌を歌ってたんじゃ、由紀さおりとその姉になっちまう。
同世代を生かした選曲を、ということで。
わたしと類似体系(=でかい)のA子さんと、大地を振動させながら、歌うはピンクレディのUFO。またかよ、と自らに突っ込みつつも、こればっか。
Fさん夫妻には、中学、高校時代をインドで過ごしたご子息が二人。出会った当初は子供だったのに、気がつけば、二人とも見上げるほどに大きくなっていた。
二人は米国に留学され、すでに新たな人生をスタートさせている。
Fさんご夫妻。インドでのワンダフルすぎる経験を思い出せば、どこで何があっても、たくましく楽しく、暮らしていけることと存じます。
お元気で!!