バンガロール市街北部にある農業大学 "UAS" にて、5日間に亘る "Krishi Mela" 即ち「農業祭り」が開催されていた。
先週、束の間、訪れた。あまり時間がなかったので、短時間しか見られなかったのだが、6万人の農民たちが参加した、その大規模な展示会の様子には、実に圧倒された。
インドの食料自給率は100%を超えている。その一方で、飢えている人もいる。
同時に、農民らの自殺も深刻だ。先日もIndia Mediaの記録に残したが、この16年間で、農民25万人以上が自殺。1年に1万5000人以上が命を落としている。
中でも、インドの綿花農家の実態は深刻だ。
それは、米国産のGMコットン。即ち「遺伝子組み換えコットン」によって、その悲劇はもたらされた。
この話題は、わたしが6年前に移住した当初から、しばしば社会問題として取り上げられていたのだが、未だに自殺者が減っていないということは、問題は解決していないのだろう。
インドの綿花農家は、従来、伝統的な種で農業を営んでいた。
そこに、米国の企業が米国の土地に合わせて開発したBTコットンというハイブリッド種が入ってきた。
害虫駆除に効果があるとされ、インドでも急速に普及した。その種を使った農家の綿花畑には害虫がつかない。一方、伝統的な種を使っている隣の畑に大量の害虫が集まるから、隣も高価なBTコットンを使わざるを得ない。
BTコットンは、肥料や農薬などをまとめて購入せねばならず、それは高価なものである。にもかかわらず、インドの天候を考慮して作られた物ではないため、収穫にばらつきがある。
収穫が増えれば増えたで、今度は、綿の価格が暴落して、利益があがらない。身動きがとれなくなった農家の大黒柱が、将来に絶望して、BTコットンの農薬を煽って自殺する、というケースが続いているのだ。
米国の合理的な農業が、多様性極まりないインドの土壌には適していないという現実が、普及した後に気づかされたというわけだ。
だからこそ、この国は、州によっては「遺伝子組み換え」や「ハイブリッド」について非常に慎重だし、オーガニックの農作物を支援する大小の団体も活動しているという現状がある。
日本ほか、先進国の企業が、綿農家を支援するべく、オーガニックコットンに関わっているケースも少なからずあるようだ。
数年前、ここカルナタカ州では、遺伝子組み換えのナスを許可するかしないかで、もめた時期があった。結果はどうなったのだろう。
当時の新聞記事によると、バンガロール拠点のバイオテクノロジー企業、BioconのCEOであるキラン・ムズンダ・シャウは、遺伝子組み換え種子の利用を強く推進していた。
動植物の、種の多様性を重んじる。という考え方。
身体に安全なものを口にするということ。
インドの農業には、その生産にせよ、流通にせよ、管理にせよ、さまざまな課題やテーマがあるのだろうということは、日常生活を通してもうかがい知ることができる。
思うところはあれこれとあるのだが、今日のところは、時間も余りないので、撮影してきた写真を取り敢えずは、掲載しておく。
非常に広大なキャンパスの一隅の、広大な広場に、無数のブースが並んでいる。平日の夕方にも関わらず、大勢の人々が詰めかけている。
会場に到着するなり、その規模の大きさに圧倒される。一応、買い物袋を持参していたが、これは買い物をゆっくりとできる状況ではない。
今日、ここで過ごせるのは1時間ほど。もっと早めにくるんだったと、いきなり後悔。
南インドの健康食、ラギボール(ラギーボール)のことは、ここでも幾度か記したが、ラギというのはヒエの一種。
一つのブースで、何種類もの米が並ぶ様子を目にするだけでも、この国の、古くからの農作物の多様性を実感する。
無精製のものは、確かに調理に手間がかかるし、歯ごたえも強いが、だからこそ、身体にもよいのだ。
ピーナッツ一つを取っても、さまざまな種類がある。これはずいぶん大きな粒。
マッシュルーム。これは買って帰りたかった。自宅でキノコ類が作れたはず。右上は玉ねぎ。
玉ねぎは水分が少なく味が濃厚で甘いので、ゆっくりと加熱すると天然の調味料がわり。我が家では欠かせぬ食材の一つ。玉ねぎを飴色に炒めれば、煮付けなどもみりんなしで、旨味がでるのだ。
カルナタカ州やケララ州でも、カカオが栽培されているらしい。その生産量や用途など詳細を知りたかったのだが、ブースのお兄さんは「これは売り物ではない」と言うばかりで、要領を得なかった。
身体にいい薬草。身体にいい糖。身体にいい果汁。どれもこれも、昔ながらの製法で作られている。
養蚕もまた農業。インドに来て、シルクのサリーを買い求めるようになり、蚕がとても「身近で大切な存在」に思えるようになった。愛情を込めて見つめたりする。……。でも、やっぱり、気持ち悪い……。
あ〜、やっぱりこれ、買っておけばよかった。今年は雨が多くて、庭のあちこちで、変なキノコが自生していたくらいだから、このキノコも簡単に栽培できたはず。
庭の一画で、いっそ養蜂もしてみたい気分。というのも、我が家にせり出すインド菩提樹の、その背の高い樹の上の方に、蜂が巨大な巣を作っていて、たまに庭に蜂の死骸が落ちてきたりするのだ。
ハチミツがしたたってこないかしら。と思っているのだが、それは今のところ、収穫なし。
トラクターを見ていて思う。昭和のころは、ヤンボーマンボー天気予報! やら、燃える男の赤いトラクター、それはお前だぜ、な小林旭などを輩出した、ヤンマーディーゼルはどうしたのだろう。
あのころの日本の農業は、まだまだ熱かったのだろうか。燃える男の赤いトラクターを知らん世代の人のために、好適な動画を見つけたのではりつけておく。
あのころの日本は、なんだか、熱かったのね。ってか、トラクターと言えば、赤が定番なのはグローバルスタンダードなのか?
太陽光発電のための装置もあれこれと。なんだか頼り無さげだが、そもそもインドの電気供給が不安定ゆえ、これも十分に存在意義があると思われる。
子供たちに人気のブースは、魚の水槽。金魚、だけではなく、不思議な魚があれこれと泳いでいる水槽。
赤いトラクターよりも、むしろ心が動かされたのは動物のコーナー。農家で働く牛たちが売られているエリアでは、記念撮影をする人たちがあちこちで。