Compassion. Peace. Hope.
新たなる年。
慈愛。平和。希望。
南天竺のデカン高原の片隅で、今年もまた新年を迎えた。
今年最初のトリートメントは、シロダラ。温かな生薬入りのオイルを、額にゆっくりと、たらたらと流し、頭皮全体に行き渡らせる。
脳のマッサージ、だ。
あまりの心地よさに眠ってしまいそうになるが、眠ってはいけない。オイルの流れを確認しながら、しかし気がつけば微睡んでいる。
じわじわと、精神が沈静化され、心身のあらゆるストレスが和らいでゆく。
このトリートメントは強い作用があるので、身体が慣れた、滞在の終盤に行われる。
アーユルヴェーダグラムの滞在も、明日で終わり。
摂氏28度。快晴のバンガロール。
降り注ぐ陽光に抱かれて、心地のよい一年のはじまりだ。
今年も、よろしくお願いします。
◎昨年のテーマは「実験の年にする」。その一環として、意識的に旅を増やし、結果、多くの収穫を得た。今年のテーマは「取捨選択」。自分を取り巻くあらゆることの、取捨選択。軽やかで居続けるために、大切なものは守り、しがらみや不本意は、思い切って、削ぎ落とす。
◎四半世紀前。28歳のときの年賀状に記したテーマは「東西南北の人になる一年」だった。モンゴルを旅して以来、遊牧民の生き様に抱いた憧憬の延長線上に沸き上がった言葉だった。思い返せば、常々「身軽さ」を尊んでいたが、この十年余りのインド「定住」生活で、失われつつあった。
◎快晴だった元旦。夜空の星が麗しい。夫がダウンロードしたスマートフォンのアプリケーション。カメラを夜空にかざすと、星がわかる。星座がわかる。我がテーマの星座「オリオン」にかざせば、三ツ星をベルトにした猟師オリオンの姿が浮かび上がる。なんということだろう。
◎道に迷わない。道に迷えない。
◎若者向けセミナーで「贈る言葉」のひとつに挙げている「裸一貫の自分を思え」。なにも、裸になる必要はないが、前提にアウシュビッツに収容された人たちの身の上をイメージしているため、この表現だ。皆と同じ囚人服を着せられたときに、自分をどう、表現できるか。どう生きながらえることができるか。自分を、どう残せるか。
◎大学時代にフランクルの『夜と霧』を読み、30代で映画『Life is Beautiful』観て、たどり着いた一つのテーマ。人に対して誤った見方をしそうなときに、思い返す。過去のテクノロジーをたちまち塗り替える「最先端」に出合ったときにも、引き返すように、思い返す。
◎自分なりに、「人間力」の鍛錬の仕方を、模索しよう。
◎「永遠なるものとはなにか、それは人間の記憶である」。「財宝がなんであろう。金銭がなんであるか。この世にあるものはすべて過ぎ行く。この世はすべて空(くう)だ」。チンギス・ハーンの息子、オゴタイ・ハーンの言葉を思い出しながら、遠い地平を見つめていこう。