昨年のミューズ・チャリティバザールや、ビジネス勉強会などで会場をお借りしているアジア料理店の1Q1。PRマネージャーから、4月16日のナショナル・オーキッド・デーに因んで生け花のワークショップをしたいので、講師を紹介して欲しいと連絡があった。
毎年恒例の日本祭り、ジャパン・ハッバの展示でも知られているが、日本の「いけばな」を教えるインド人女性は少なくない。わたしの友人や親しいファミリーフレンドも、小原流を教えている。
首都デリーには、半世紀以上も前に、草月流の支部が設立されていると聞く。
今回はしかし、日本とバンガロールを行き来して双方で仕事をされている明代さんにお声をかけた。あいにく15日には帰国とのことだったので、オーキッド(ラン)とは、関係なく、昨日14日に開催されたのだった。
インドでは、売られている花の種類は少ないと言われるが、しかし、花を贈ったり、神に捧げたり、香料に使ったりと、お花は日常的に身近にある。埃っぽい街中を歩いている時、しかしすれ違いざま、サリー姿の女性の髪に飾られたジャスミンの花が芳しく漂うと、場の空気は刹那、爽やかになる。
ブーゲンビリア、マリーゴールド、ハイビスカス……今の季節はジャカランダ(火焔樹)が、青空を焦がすように咲いている。アレンジメントには不適だが、しかし花は日常の風景に溶け込んでいる。
日本のいけばなの流儀に則ってのワークショップは、その世界観の伝達や、仕上がりの雰囲気の嗜好など、初心者に伝えるのには難しいとも思えたので、日本的な「わびさび」の風情もさることながら、華やさ、カラフルさ、ある程度のヴォリュームがあったほうがいいのではないかということは、お伝えしておいた。
昨日は、わたしも明代さんを少しサポートをしつつ、実際にアレンジメントを体験した。「茎や葉の曲線など、自然の形状を生かす」「花や葉との間に空気(風)が通るようにする」「はじめに土台となる緑を整え、次に中心(軸)となる花を据えて、周囲に葉や花を挿していく」といったすべてが、きっと基本的なことなのだろうけれど、とても新鮮に思える。
目の前の、小さな花器の上で、自分の手によって、天と地、自然の調和のようなものを、形にできる。
インドでは、最近でこそ、立体的なモダンなフラワーアレンジメントも見られるが、しかし昔ながらのインドの花屋へ行くと、多くの場合、「二次元的シンメトリー(左右対称)」なアレンジメントが大半だ。その理由はわからないが、ともかく、壁に背中を向けて飾る、という感じ。ゆえに背面には心を配らない。
しかしながら、いけばなは、「アンシンメトリー(左右非対称)」に動きを託し、自然のありのままの形状を尊重しつつも、見るものの心を惹きつける独特の調和がある。上から、後ろから、横からと、あらゆる角度からも、それぞれの美しさがある……と、いけばなに詳しくもないのに、適当に語っている。
ともあれ、とても楽しい午後だった。
オアシスの効果的な使い方も学んだし、挿し方も的確に教わった。我が家の庭には、さまざまな葉っぱがある。それらを使い、少し花を買い足してくれば、手軽に「なんちゃっていけばな」が楽しめる気がしてきた。とりあえず、オアシスは常備しておこう。