わずか1泊のスクールハウスホテル。情趣ある建築物をじっくり見る余裕もなく、スモークサーモンとスクランブルエッグの朝食をすませたあとはチェックアウト。
夕べは思いがけず飲んだくれたにもかかわらず、今朝はそこそこに早起き。わたしは20日間、夫は約1カ月の旅の途中につき、荷造りに手間がかかる。我が家のマキシマムな男、即ちマキシマム男は、持参する荷物もマキシマム。わたしよりも衣類が多い。ゴールウェイには3泊だけなので、後日ダブリンで宿泊するホテルにスーツケース4つのうち、2つを預けておくべく、仕分ける必要があるのだ。
そこそこ速やかに準備をすませ、鉄道駅へ。車窓から、緑豊かに牧歌的な光景を眺めつつ、ゴールウェイまでは約3時間の旅。駅に到着すれば、あいにくの雨。アイルランドは雨が多く、天候不順は覚悟していたが、できれば晴れて欲しかったと思いつつ、小雨に濡れながらタクシーを待つ。
ゴールウェイでの宿は、市街から少し離れた郊外にあるグレンロー・アビー・ホテル(Glenlo Abbey Hotel)。18世紀のマナーハウス(荘園の領主が建設した邸宅)を改築したホテルで、優雅にも気品に満ちた佇まいだ。映画『日の名残り』のシーンが回想される。庭には、オリエントエクスプレスの車両があり、ダイニングルームになっている。今夜はここで夕食をとる予定だ。
雨がやんだので、ゴルフコースを縫うように横たわる遊歩道を散策する。ゴールウェイ湾からの風が肌寒くも心地よい。木々の合間を歩いていると、妖精に会えそうな気がするが会えないので、自分が妖精になったふりをして写真に撮られてみたのだが、どうだろう。いや、無理だろう。
オリエントエクスプレスの車両を改装して作られたレストランPullmanにてディナー。予約を入れたのは8時半だが、まだ世界は明るく、夕方の気配。
車両は狭く、圧迫感があるのではないかと思いきや、テーブルの具合も、椅子の座り心地も、とてもよい。動かぬ車窓からの景色もまた、それはそれで心地よく。
メニュー選びに迷っていたら、地元に暮らしているという隣席の老夫婦から、「サーモンがおいしいわよ」と勧められる。前菜は、上品なシーフード。カニ肉やタコ、ホタテなど。主菜はサーモン、そしてラム肉のグリルを注文。いずれもシェアしつつ味わう。何もかもが旨い。旨すぎる。独特のシチュエーションがまた、おいしさを助長する。
ワインはスペインの赤ワイン、テンプラニーリョ。重すぎず、軽すぎず、爽やかにしかし深みのある芳香。おいしい。
別れ際、老夫婦から「お二人は、新婚旅行?」と尋ねられて、軽く動揺するも、いい気になる。薄暗い車両の中では、我々はどうやら初々しいカップルに見えるようである(照)。調子に乗るなよ、自分(喝)。
夫は明日の朝、5時起きでテレフォンカンファレンスがあるというのに、二人してワイン1本を空ける。現在午後11時過ぎ。夫はすでに寝ているが、わたしは消化を待ちつつ、こうして記録を残している。こう見えて、わたしも夫も、言うほどアルコールには強くない。1本がマキシマムだ。
テンプラニーリョ、といえば、ラム肉に添えられていた「肉厚な昆布(わかめ?)の天ぷら」が、抜群においしかった。日本では一般的なのだろうか。わたしは初めて味わった。ウエイターのお兄さん曰く、この界隈は海藻も豊富だとか。
アイルランドの食についても、いろいろと記しておきたいところであるが、わたしもそろそろシャワーを浴びて、寝る時刻。
明日はレンタカーを借りて、久しぶりのドライヴだ。わたしは、ニューヨーク州@米国と、カルナタカ州@インドの運転免許証を持っている。日本の免許証は20年前に失効した。アイルランドでは、米国のライセンスがあれば、国際免許証がなくても運転できる。ちなみに夫も米国在住時には運転していたが、基本、下手である。
かく言うわたしも、最後に運転したのは2015年にニューヨークからフィラデルフィアまで行ったとき。ついこの間の4年前! わたしは日本ではペーパードライヴァーだったので、米国在住時の左ハンドルでの運転に慣れている。アイルランドは日本やインドと同じ右ハンドル。4年ぶりの運転に加え、ハンドルも反対側とあって、少々緊張するが、それも最初の30分程度のことだろう。幸い交通量も少ないし、丁寧に安全運転で出かけようと思う。