時差ぼけが落ち着いて来たかな……と思うころには、ニューヨーク滞在も半ば。今年は1週間と短めなので、殊更、時間の流れが早く感じる。週末は夫も打ち合わせがなく、朝はのんびりと目覚めた。まずは二人でセントラルパークへ。土曜の今日は、ニューヨーカーやツーリストでいつも以上に賑わう公園。アクロバティックなパフォーマンスを披露する若者たちもいれば、ヴァイオリン奏者もいる。サックスを奏でる人もいる。
サックスと言えば、この楽器の起源もベルギーだ。昨日に引き続いてベルギーの話題。個人的にベルギーが好きなので、ついつい言及してしまう。2度しか訪れたことがないものの、一度目は取材で全土をぐるりとドライヴし、二度目はアルヴィンドとともに、やはり主要都市をドライヴした。サックスを考案したアドルフ・サックスの故郷、ディナンを最初に訪れたのは、1990年のドライヴ取材のとき。かれこれ30年前だ。
断崖絶壁の上に立つ城塞を仰ぎ見るディナンは、小さいながらも情趣に溢れていた。ムーズ (Meuse)河畔に横たわるその街には、数時間、立ち寄っただけなのだが、深く印象に残っている。クック・ド・ディナンと呼ばれる、まるで歯が立たない、大きな堅焼きクッキーが名物。花や動物などを象(かたど)った、アーティスティックなクッキーは、15世紀からの伝統を持つお菓子だった。この街はディナンドリーと呼ばれる真鍮細工でも有名で、一目見るなり気に入って購入したコーヒーポットのセットは、今でも我が家にある。印象に残った街だったので、1999年にアルヴィンドと旅したときにも再訪した。河畔のレストランで、ビールを飲みつつ、ムール貝の白ワイン蒸しとフライド・ポテトを味わったことが忘れられない。
さて、ランチは、毎年おなじみのステーキハウス、PORTER HOUSEへ。マンハッタンにはいくつもの、ステーキの名店がある。ここよりもおいしいところがあるのはわかっているのだが、たいていの店が、重厚感あるクラシックな内装で、肉だけでなく、雰囲気も重い。PORTER HOUSEはしかし、天井が高く、眺めもよく、リラックスできる雰囲気が気に入っている。もちろん、地の利のよさもある。
そして毎年おなじ料理、熟成ビーフのCOMBOY RIB STEAKを注文。二人でシェアして満腹となる一皿だが、米国人はこれをひとりで平らげる人も少なくないから、驚かされる。もっとも、20代のわたしだったら、平らげていたとは思う。つけあわせは、いつものベイクド・ポテトのかわりにフライド・ポテトにしてみた。現在、夜の11時。ランチのあと、コーヒーを飲んだきりなのに、まだ完全に消化しきれていない気がする。燃費がよくなったものだ。
ランチのあとは、やはり毎年恒例、アッパーウエストサイドで夫の買い物に付き合う。バンガロールで買い物をすることはほとんどなく、年に一度のニューヨークが、彼にとっては衣類調達の旅でもある。そしてNORA以降は、ペットショップに立ち寄るのも恒例となった。猫用のトリート(おやつ)や玩具を買いたがるのである夫は。店頭で里親を待つ身寄りのない猫らを眺めるも、心は4猫へ……。
瞬く間に一日は過ぎ。
ところで昨日のウォールストリート・ジャーナルは、インドのモディ首相の再選を大々的に取り上げていた。このことについても、触れたいところであるが、今はその気力がないので、インドに戻ってまた、整理しようと思う。