陽光降り注ぐ心地よい一日。木漏れ日に微睡む猫らを見ていると、人間も眠たくなってくる。
季節の変化が緩やかなバンガロールでは、衣替えの必要もなく、記憶に区切りをつけにくく、過去の出来事が前後しやすい。ゆえにジャーナルや、こうしてネット上に記録を残すことは、記憶を辿るのに不可欠だ。
木曜からの国内旅を控え、すませておきたい作業が多々あるのだが、何かと気が散ってしまい、集中が続かない。今日はムンバイの同時多発テロのことを思い返して記録を遡ってみたり、30年前の台北取材を思い出し、地図を開いて記憶を辿ってみたり……。
寄り道ばかりして、迎える夕方。今日はデリーの義父ロメイシュが久しぶりに遊びに来る。インドの人々は、夕食前の団欒を重んじる。ゆえに、夕飯の準備は早めにすませておくことに。
ヴェジタリアンが多いインドにあって、しかしマルハン家周辺は、ノンヴェジタリアンばかり。牛肉も豚肉も食べるし、日本料理もノープロブレム。ゆえに、普段通りの食事で全く問題ないのがとても助かる。
旅のあとは、軽めの夕食がいいだろうと、丸鶏を捌いて白菜や大根、ネギと共に煮込み、味噌仕立ての鍋に。付け合わせはキノコとガーリックのバター醤油ソテー。そして日本米。以上。
品数少なく、シンプルだが、滋養があるし、それなりにおいしいのでノープロブレム。地味な滋味メニューを喜んで食べてくれる二人。すばらしい。
食後のデザート好きな父子のために、二人の好物、アップルクランブルを自己流でアレンジした「アップル・パイナップルクランブル」を作る。このデザートは、材料を「適当な目分量」で作ることができるので、本当に簡単だ。ちょっと油断して焦げたけど、香ばしさが増したということでノープロブレム。
リンゴとパイナップルを、バターと砂糖でソテーしたあと、耐熱容器に入れる。その上に、バターと小麦粉、砂糖を「勘」で適当に混ぜ合わせ、ポロポロとなったものを被せて、オーヴンで焼くだけ。
これに、毎度おなじみ新鮮アイスクリーム、NATURALのマライ(ミルク)味を添える。食後、お腹いっぱいと言っていた二人だが、おいしいおいしいとお代わりしている。確かにこれは、リンゴとパイナップルの風味がいい具合に調和して、非常においしいのだ。
食後、過去の思い出話に花が咲く。2003年、義理の家族とザイオン国立公園やラスベガスを旅したときのことを思い出しつつ、ホームページに載せていた旅の記録の写真をパパに示す。
「僕は、今もあまり変わらないね」とパパ。確かにあまり変わらない。アルヴィンドも。
マイケル・ジョーダンと共に撮影した貴重な一枚……と言いたいところだが、蝋人形の彼とツーショットの我。
「ミホは、ずいぶん若いね! 今より痩せてるんじゃない?」
「体重は変わってないのよ、髪型が違うだけ!」などと訴えてみるも虚し。そら16年も経てば、老けるというものよ。
アルヴィンドと出会って23年。インド家族との思い出も、遠く近く、深く浅く、重ねてきたものだと感じ入る夜。